休日を利用して、以前から観たいと思っていた映画「カラーパープル」をDVDで鑑賞しました。
原作は読んでいて話のあらすじは知っていたのですが、とても心に残る映画でした。
ここで「闘う女性」であるがゆえに生きて地獄の苦しみを味わうことになる女性ソフィアを熱演したオプラ・ウィンフリーは、現代アメリカの黒人女性を代表するビッグネームに成長します。
およそ100年前のアメリカ南部で、黒人が、そして女性であればこそ現代では考えられないいような苦難の人生を生きたそのことがドラマティックに描かれた映画。1985年作製ですが今にもまったく古びたところのない端正な作りのムービー。
スティーブン・スピルバーグが描いた世界は、ハリウッド映画のお約束のなかで、人種や生い立ちの壁を全く感じさせないほど、とはいえないものの、弱者にも向けられる視線の暖かさはやはりこの監督の特別の魅力をあますところなく伝えていると思います。
暖かさ。それも「いい気なものだわ」と思わせる上からの一方的な慈悲の目ではなく、その対象と同じ高さに膝をついてそっと寄り添うような暖かさ。
彼の作品「アメリカン・テイル」の勇敢で心優しきファイベルはスピルバーグが自分のおじいさんの人生をなぞって描いたものと聞きましたが、さすがはファイベルの血を受け継ぐ孫、ですね。
ところでこのカラー・パープルでは主人公セリーの生き別れの子どもたちが、アフリカで育っていたというエピソードがあります。アメリカでの「私のおばあちゃんがまだこどもだったころのお話。」がメインストーリーゆえに、アフリカでのお話はサブストーリーとして出てくるだけです。
そして現代のアフリカ。ソマリアの遊牧民に生まれてモデルとなり、007のボンドガールにまで抜擢された女優のワリス・ディリ―という人がいます。彼女は子どもの時に部族の習慣に従って女性割礼を施されたという痛ましい経験を明らかにしています。
人が人として扱われるためには、どれだけの人が心持ちを変えていかねばならないのか。
気が遠くなるような思いに、答えは「風に吹かれている」といいたくもなるのですが、それでも道にまき散らされている大小の石を取り除けて、私たちは少しずつでも道を開いていかなければならないのでしょう。
柄にもないことですが、暑い夏休みの中でも背筋が伸びるような思いがしました。