これこれ。
初・又吉さん!
花火だか火花だかも未読なのにw
なんか好きかもです。
また読むかもしれない作家さんにカウントした。
又吉さんの自伝とも取れるような箇所も、がっつり見受けられはする内容。
特に起承転結がないっちゃないのに
そして「あの人どうなった」な人物も何人も居るのに
そこらへん宙ぶらりんなまま結構唐突に終わるのに
不思議と「ええ~?」みたいな感想はひとつもなく
かといって「もっかい読みたいなぁ」までは行きませんでしたが
キレイにまとまってるわけでもないのに、なんでこんなスッキリ読後感なのか
その1点が不思議でたまりませんw
読み始めて最初に得た印象が、最後までそのまま続く感じです。
太宰と中島らもと大槻ケンヂを煮詰めて作った
でも飲みやすい薄めの水割りのようです。
在り方やプライドやカッコいいカッコ悪いなんかを追究した
非常に粘着質なくだりがいくつもありますw
でも、それがどこか可愛い。
こんなことにこだわったり、こんなことでしんどくなったり、嫌いなヤツが自分の中にある程度住み着いてしまったりするのは
非常に燃費が悪くて本人も嫌なんだけど、それでもやめられなくて
それをやめたら自分じゃないような気がして
偉そうにしたいわけでも成功したいわけでもないはずなのに
それでもそんな顕示欲もどっかに絶対あって
滑稽でダサくて一生懸命な、そういう在り方って
なんだ人間じゃん、みたいなw
色々こじれてる主人公は、自分の感覚を分かってくれそうな他者が周りにあんまり居なくて
でも学生時代の友人に、1人、なんとなくウマのあうヤツが居て
かといってそいつと友情爆発してるでもなく、特に連絡も取らないままずっと過ぎるんだけど
約束もせずとあるバーで再会したときの
相手を尊重しながら、でも忌憚なく話せる、気持ちのいい距離感でのやり取りが
見てるこっちもすごく楽しくて。
それまでに胸クソ悪い出来事とか、粘着系と自己顕示欲系のどうしようもないメッセージのやり取りとか
他者との色々を経てきての、そんな2人の会話は
いつまでも聞いていたくなるくらい、互いへの愛情が伝わってきて微笑ましかった。
心を許しあってる男子同士の、極めてリアルな会話に思えた。
「あの頃の俺たちは井の中の蛙やろ。そっから必死に顔あげて空を見ててん。宇宙近かったやろ。行けそうやったやん。井戸と宇宙はほぼおなじやった。海で泳ぐ小魚どもからバカにされてな。大きい魚に怯えて逃げ回ってるヤツらが俺たちのこと世間知らずの蛙やって偉そうにほざいて。俺たちは宇宙の話をしてたのに。その秘密を共有してたのが永山やった」
なんかもう、最高の告白じゃないですかww
「地獄やな」
影島が地獄という一言を使ったことで、少しだけ楽になった。
「地獄って言うてくれるんや」
「地獄やん」
「いや、そんなんよくあるとか、気にすんなとか、好きなように描いたらええねんとか言われることが多かったから」
地獄って言ってあげれる、言ってもらえる、そして楽になれる関係、最高かよ(;´Д`)(;´Д`)
「自分が勝たれへん相手に対して、でも永山の方がすごいよなって。永山の方がキレあるし、性格悪いし、繊細やなって」
「嫉妬の対象にしてる誰かと永山を勝手に頭のなかで戦わすねん」
「惨敗やろ」
「いや、必ず永山が勝つねん。ほんなら、基本的に俺と永山は互角やから、永山が勝てる誰かには俺も勝てるってことになんねん」
「一回、自分クリント・イーストウッドにタイマンで勝ってたで」
色々間を省略しましたが、伝わりますかこの可愛らしさ(;´Д`)
かといって別に、男の友情に終始してる話では全然ないので、誤解なきよう。
むしろそれ以外の、主人公が楽に生きれない場面の方が多いです。
だからここが際立つんだろうな。
あとさ、お父さんとの会話も好き。
なんかすごい自然なの。
父が指定してた日よりも早く実家に帰った主人公なのだが
庭に面した窓から中をのぞいて、部屋で座ってた父親を見つけ、窓を叩く。気付いた父は、玄関から出てきて、開口一番こう言う。
「きょうか?」
なんかここが異様に好きなんだわww リアルで!!
俺やったら主人公に絶対「ただいま」とか言わせてまう(;´Д`)
父に「なんやお前、早いやないけ」とか、いらん感じで言わせてまう(;´Д`)
「きょうか?」
って、普通こうなるよね!って思うけど
こんな潔いくだり、なかなか書けるもんじゃないって感じた。
そういうのが、俺が気付いてないだけで
随所にきっとまだまだ隠れてる。
だから、延々と粘着系のめんどくさいことを書かれてても
なんか予定調和のにおいがしなくて、嘘くささがなくて
リアルなこととして、こっちが受け取れるし、こんな内容なのに読んでてしんどくないんだろうな。
なんかさ・・・こんなこと言うのすごく失礼でおこがましいのかもしれんけど
読んだ後、「俺、なんか完璧なもの書こうとして頑張りすぎてないか?」って思えてしまったのだ。
いや、全然書いてないんだけどね!!!
途中で止まってる話ばっかなんだけどね!!!(;´Д`)(;´Д`)
でも、その「止めてる理由」が
「自分の中で300点くらいの点数つけれるヤツじゃないと、世に出そうとしたり勝負しようとしちゃいけない」
みたいに、勝手に自分で自分を縛ってる気がしてきて。
ハードル勝手に上げすぎてるというか。
もっとハンパな感じでもいんじゃないか?
変な気合い入れて全然書けないより
気楽にハンパなもの、どんどん書いた方がマシなんじゃないか?
点数つけるの俺じゃないし。
ていうのが、もっとなんかこう、いい感じで自分の中にムクっ!とよぎって
これって結構自分にとってデカくないか?て思えた。
いいもの書きたい。そりゃそうだよ。
俺も書いてて楽しくて読んでて楽しくて
句読点も改行もこだわって、表現も一言一句100%しっくり来るどんぴしゃなヤツばかりを当てはめて
起承転結がそれなりにあって、笑って泣けて読み応えあって
あーこれ読んで良かった! 時間が無駄にならないで良かった!
って思ってもらえるようなヤツを書きたいよ。
俺の300点に、できれば100点をつけてほしいよ。
でも現実は、300点に30点くらいしかつかなかったり
かと思えば、自分の中の30点に過ぎないものが、300点くらいつけてもらえたり
全然意のままにならんのだよ。
意のままにならんのだから
そこまで気合い入れて、結局書かないのはもったいないじゃないか。
鼻歌歌いながら、鼻クソほじりながら書いたって、別にいいじゃないか。
なんてとこまで思えて、今表明できたのは
なんでか知らんけど、この作品を読んだからなのだ。
プライドと自己顕示欲まみれで、卑小な自分を嫌いだったりあきらめながら付き合ったりしてる人たちに、いっぱい触れられたからだ。
また又吉さんの本読んでみたい。
(またまたよしって言いづらいw)