彼女は3月上旬の平日のとある日に海に戻る日と決めた。
前日、、彼女がお店に現れた。
メールでもこと足りるはずだがそこは16年ぶりのサーフィン。
心配なことがたくさんあるのだろう・・・
ボードとリーシュ以外はすでに捨ててしまったようでウェットスーツとブーツはレンタルということになった。
当店のスクールは湘南までの交通費、サーフボードやウェットスーツなどのレンタル含めた料金が6600円なのでレンタルしようが持参しようが料金自体は変わらない。
彼女のサーフボードも6ft半ばの短めなファンボードなため簡単にテイクオフができるお店のスクール用のセミロングを持ち出したいところだったのだが
今回は彼女がこれから海に戻れるのかの確認が趣旨。
彼女の”あのボード”でどう感じるかが大事だ。
明日のコンディションも強めの風が吹く予報から奇跡的に変わり無風の予報。
波も膝前後と彼女が復帰するのには最適なコンディションとなっていた。
湘南の地形が悪くこのうねりだと波が崩れない恐れがあるため当初の待ち合わせ時間より1時間遅くして干潮前後に合わせてのレッスンに変更した。
そしてその日がやってきた。
朝彼女をピックアップするため近くのコンビニまで迎えにいく。
約束時間より少し早く私の車を見つけると彼女は少し早歩きで近づいて丁寧におじぎをした。
車に荷物をのせて彼女も乗り込み湘南へ
車の中では今日できるかどうかの不安な気持ちを吐露する反面、16年前のサーフィンライフを楽しそうに話してくれた。
海につくと私のお気に入りのポイントをいくつかチェックする。
ほとんどの場所は軽いオフショアで波が消されフラットなコンディション。
波がかろうじて崩れている場所はロングボーダーで埋め尽くされ彼女を教えられそうな場所はない。
まずい・・教える場所がない。
ただ私は前の週に地形をチェックしていてほとんどの人が発見していないある場所を見つけていた。
彼女を教えるとしたら波が小さい日。
湘南全域で地形が悪い今の時期はみなに知られてないピークが人を教えるうえで絶対条件だ。
なんとか波がブレイクしててほしい・・・
防砂林を抜けてそこをチェックすると誰もいない海で理想の波がたんたんと崩れている。
さっそく駐車場に車を止めて少し急ぎ気味で用意をする。
コンディションの変化は好ましくない。
さらにサーファーがピークを見つければすぐに人が集まるだろう。
そうなればそこでは人を教えることができない。
駐車場を出るとサーフボードをもってビーチに。
砂浜を5分ほど歩くとさっきチェックした無人のピークについた。
”よかった見渡す限り誰もいない”
波は膝からもも。風は弱いオフショア。
教えるには理想的なコンディションだ。
彼女は16年間スポーツを全くしていなかったらしい。
疲れない程度に軽めに準備体操をするとおそるおそる自分のボードをかかえた。
彼女の胸の高鳴りがこちらまで聞こえてくるようだ。
そして16年ぶりに彼女は彼女のサーフボードと一緒に海水に浮かんだのだった。
続く