『昨夜のカレー、明日のパン』木皿泉
『昨夜のカレー、明日のパン』木皿 泉「<ムムム>は、庭先で両足を踏ん張って空を見上げていた。両手の指で拳銃の形をつくると、それを高く突き上げ「バーン」と小さく叫んだ。」『昨夜のカレー、明日のパン』は、ここから始まります。<ムムム>というのは、いったい何?何のために空を見上げてたの?そして、この不思議な光景を目撃していたのは誰?こうした書き出しに、ちょっぴり戸惑いつつも、読み進めていくうちに、何の無理もなく、すうっと吸い寄せられました。物語は7年前に夫の一樹を亡くしたテツコと一樹の父、ギフ(本名は連太郎だが、テツコが義父をギフと呼ぶようになった。)のほのぼのとした日常と二人に関わる人々との心のふれ合いが描かれています。大切な人との突然の別れ、、その哀しみ は分担することはできなくても、傍でそっと寄り添うことはできるはず。。ここには日常の何気ない会話の中にちりばめられた言葉の力がありました。いかに人生がささやかな物事によって支えられているかを実感します。知らず、知らずのうちに、二人に肩を寄せ、その触れ合いに立ち会えることが本書を読む一番の喜びでした。あったかい作品です。^^番外:私は、TVドラマ『すいか』(向田邦子賞を受賞)以来、木皿泉のファンですが、エッセイ『木皿食堂』も良かったですよ。^^