真実のノート -8ページ目

最終話『真実のノート』

その時だった

いきなり バタンッ!!と 屋上のドアが 開いたんだ

ビックリして振り返った俺の目に 飛び込んで来たのは 肩で息を切らす佐奈の姿だった。

そして、俺に気づかず 佐奈は 金網に手をかけ 乗り越えた。
(まさか!?)

慌てて 立ち上がる俺

(飛び降りるつもりか!?)

一気に 心臓の鼓動が 早くなる

こちらからは、佐奈の後ろ姿しか 見えないが ゆっくりと前に足が進んでいる

ヤバい!! 何とかしろ俺!!
何のために この学校に来たと 思ってんだ!!

自分に激を飛ばすと 俺は
咄嗟の 思いつきで 「ああー!!ちくしょう!!」
大きな声をはりあげ 腹を押さえ 転げ回った。
驚いて、振り返る佐奈

それが、佐奈…お前と、初めて 目が 合った瞬間だったな

最終章『真実のノート』

髪を金髪に染めて 耳 鼻 瞼に迄ピアスを開けたのは佐奈のいる高校を見学に行った時 男子生徒がしていたスタイルの真似だった。
担任教師の後に続き クラスに入った俺は 自己紹介も そっちのけに ただ1人と同じクラスになる事だけを祈り 全体を見渡した。 その時、俺の視界が
窓際 一番後ろから 2番目の席に その娘(佐奈)の姿を捕らえた。「やった!!ついてる」
思わず 嬉しさが 込み上げ俺はガッツポーズを決めた

それから 俺は 佐奈の後ろの席の奴に 頼み込み 席を交換して貰うと、 佐奈の後ろに座った
佐奈の後ろ姿をじっと見詰める
中学生の時は 金髪だった髪が 今度は 色を抜きすぎたのか 白銀になっていた
たまに、見せる横顔は やはり どこか 寂しげで だけど 窓から差し込む光に透けた 佐奈の頬は 透き通って見えて 美しかった。
同じクラスになったは いいが 一度も話しかけられず それから 俺は 約4ヶ月間 あいつの後ろ姿を見ながら 過ごす事になる

だが その4ヶ月の間に 俺は 佐奈の色んな事を知った。

まず あいつは いつも 風船ガムを噛んでる事

購買の焼きそばパンが 好きな事

毛先をいじるのが 癖で
しょっちゅう、気にして触っている

後は 外見は 不良の癖に クマのキャラクターが 好きで 小物が 全て 可愛いクマのデザインで 統一されている

ただ 最初に見た時の通り
瞳には 輝きが無かった

やはり うつろで 何に対しても 感心が無く ただ いつも ぼーっと 遠くを見ている

周りのうるさい 女共とは何処か 違っていた。


そして 案の定 友達も居なくて 1人ぼっちだ

さて これから どうやって 近づこう
いつもより 早く来すぎた学校の屋上で 寝そべりながら 俺は 深いため息を吐き出していた。

最終話『真実のノート』

段々と 近づいてくる 金髪の少女 その制服から 中学生だと解った。 「不良だ!」俺は その少女をおっかなビックリに 木の影から見詰めていた。近づくにつれて 少女の顔が はっきりと見えてくる
少女は うつろな表情をしていた。
光を失った瞳
「なんだ あの目 死んだ魚見たいな目をしてやがる」
気が付くと 口から そんな言葉が 漏れていた。


そして その時だった

少女は 目の前の門を開け
中に 入って行ったんだ

(まさか あれが 叔父さんの子供?)

俺の胸に 衝撃が 走った
だって その少女は まるで
死人のような顔をしていたから…


俺達のせいなのか?

俺と母が あの娘から 叔父さんを奪ってしまったからなのか?

いいや 違う ただの見間違いだ!

あんなの ただの 不良じゃねーか!

自問自答を繰り返しながらも 俺は 暇を見つけては あの娘の姿を 見に行くようになっていた。

なぜなら、少しでもいい
あの娘が、口角を 上げてくれれば 俺と母は 救われると思ったから…

だけどその娘は いつも 1人ぼっちで

たまに 近くの公園のベンチに座り 食べかけのパンを カバンから 取り出してかじりついては 空を見上げていた。


それから 一年が経ち

俺は 見事 県下1 優秀な高校に 進学を果たした。
合格祝いのごちそうを前に
喜ぶ 叔父さんと母

愛に 満たされながら 微笑む母 そんな母に目を細める叔父さん…

何もかもが 順調で 幸せだった。

けれど その夜 また 俺は
叔父さんと母の口論を 聞いてしまったんだ。

「佐奈は 県下1 バカな高校に 進学させたよ 全く 誠と同じ年だと言うのに えらい 違いだ!」

「そんな…勝利さん 佐奈さんに おめでとうを言ってあげて 下さい」

「何が めでたい物か あの娘は 口も聞かず 全く 何を考えているやら 解らない お手上げだよ!」

「佐奈さんは 寂しいんですわ 貴方の愛情が 欲しいんです 」


(寂しい…)

母の言葉に ふと あの娘の顔が 浮かびあがった。

その顔は それから 月日を重ねても 頭から 離れる事は 無く

俺は 自分でも バカだと思ったが 母に 叔父さんには内緒で 佐奈と同じ高校に転入させてくれと 頼んでいた。
「何故、お前が知ってるの!?」佐奈の存在を 知っていた 俺に 驚く母

そんな母に 俺は 知っている限りの佐奈の現状を話した。そして、見守ってやりたい! 救いたい!そう言ったんだ。罪の意識からか 最後には母も黙り込み
「お前のやりたい様に やりなさい」そう言って
転入の手続きをとってくれた。