真実のノート -72ページ目

2話『初めての送信』

彩香「えっとぅ 大君だよね?わたしぃ 今、忙しいから…又明日ね!じゃあ」
送信を…押してから、私は改めて、後悔をしました。
だって・・ ずっと、待っていた彼からの、メールなのに…

もっと、話したいのに… こんな…強きなメール
・・・何で? こんな事を書いたのか?自分で、自分が、信じられません。


「…!」


・・・・その時

私の頭の中の『彩香』が、
呟きました。


「男は、貴方1人じゃない!って所を、アピールしたのよ! 大丈夫…明日は、必ず、彼から、メールが、届くわ!」



(男と女の駆け引きでしょうか?)

私は、何処でそんな事を 覚えたのでしょう?


・・・・・また


・・・頭の中で、『彩香』の声がします。


「大丈夫…私の 言う通りにして!」


「はぁ~」


私は、1つ、ため息をつきました。



(そうね…『彩香』貴方なら、間違い無いかもね!)

2話『初めての送信』

何故か?

それ以降の、返信は無く

次の、日曜日も、彼からのメールは、届きませんでした。


「あちゃ~ 彩香ちゃん 振られちゃったぁ~?」


日曜日の夕方、私は そんな事を思いながら、洗濯物を、取り込んでいました。

(カァ~ カァ~ )


何処からともなく、カラスの、鳴き声…


6畳2間の、古く、狭い…
アパートに、詫びく 夕日が、暮れてゆきます。


私は、少し 首を傾げ…

「トホホだよ~」


と、呟きました。







11月03日 (月曜日)

午前 9時05分


連休の最終日…

朝から、子供達と、プロレスごっこをしていると…


<ピピピ…>


という…メール音が、台所の、ダイニングテーブルの上から響きました。


卍固めをほどき… 子供達の、「ママ~!やめちゃ、やだぁ~」の言葉に、背を向け… 携帯を開くと…


大「暇やなぁ~ 彩香ちゃん 何しとるん?」


「!!」


彼からの、メールです!

とっくに、振られたと思い
ちょっとだけ…忘れかけていた、矢先の彼からのメール…

嬉しいのと同時に、私は
『彩香』への、切り替え
モードを、急ぎました。

2話『初めての送信』

「ごめんね…あのさ 例のサイトの事で…あの ポイントが無いから、直アドでって言われたんだけれど…
良く 意味が、分からなくて」

・・何だか…しどろもどろに…質問する私…


みゆきは、(クスクス)と、少し笑いながら…


みゆき「あのね 男は、皆女性と、話しをするには、ポイントって言って…まぁ~用は お金を使って話をする訳よ…
直アドってのは、あんたの直接のメールアドレスの事よ
彼が、気に入ったんなら 教えても…いいんじゃない?」


私「あっ そうなんだ!」

みゆき「そうよ…頑張って」


そこまで言うと、彼女は、
「ヤバイ!旦那が、2階に上がって来る!!」

と、言う 焦り声と共に、電話を、切りました。


(ふぅ~ みゆきも、大変だ)



そんな事を、思いながら 私は、受話器を、置くと 再び…携帯を開き 自分の、アドレスを、「これが、直アドです」と言う 書き込みと共に、送信しました。

<ピピピ…>


すると、今度は、サイトを通さなくても、直接 私の携帯に、メールが届きました。


大「宜しく!俺 大って言います。大阪府 吹田市に住んでます。年は、26才 普通の、会社員してます。」


「…」


私は、戸惑いながらも…
おそる おそる 彼に、送信の言葉を、書きました。

「こちらこそ、宜しく! 彩香と、言います。えっとぉ~ 長野県 長野市に住んでます。年は、25才でぇ~出版会社に、勤めてます。大くんより、1コ 下だね!」


送信を押す指が、かすかに震えました。

思いきって、押すと、私の最初の、嘘が…

電波に乗り… 彼の元へと流れてゆきます。