真実のノート -67ページ目

5話『初めての告白』

午後からの仕事を終え

レジ袋を片手に、帰宅を
急いでいると…

あの…小さな、喫茶店がありました。

赤茶けた レンガ作りに


少し、錆びた 緑色の屋根

ドアを開けると…


<カランコロン♪>

と、大きな鈴の音がします

中の壁は…やはり、レンガ作りで


小さな カウンターには、3席の
深緑色の、レトロ調の椅子が
並べてあり…


2段 階段を下ると


4席程の、テーブル席


小さな、2つの小窓の 窓辺には

可愛い、コスモスの花が 揺れていました。




<カランコロン♪>


鈴を鳴らすと、コーヒーカップを磨いていた、白髪のマスターは振り向いて…

「おや いらっしゃい!」
と、微笑んでくれました。

ここに 来るのは、2回目なのに…

普段 お客が居ないせいで
しょうか?

まるで… 昔からの、知り合いの様に、微笑んでくれます。


私は、マスターに、コーヒーを注文し…

一番奥の 窓際の席に 座りました。



そして、バックから 携帯を
取り出し… さっき

大に、送った、送信を見返します。


「貴方が…好き…」


・・・そして


その後に 届いた…

大からの、受信メール

「俺も お前が 好きや…」



(ハァーッ)




深い、ため息が こぼれます。


これは、当たり前の事だけれど…

可愛い『彩香』に 送られた 彼からの、言葉…


「!!」


ふと…気がつくと、マスターが
テーブルに コーヒーを

<カチャッ>

と、置きながら、「この前の歌♪聞きましたか?」

と 尋ねて来ました。


私は 携帯を <パタン>と 閉じ…



マスターに言いました。




「はい…とても 涙が出ました。」



・・・・・・と

5話『初めての告白』

朝食の支度をしていると、
大から、メールが…


大「ほな 会社行ってくるわ!」


彩香「行ってらっしゃい 気をつけてね」



何だか、日常会話の様で
朝から、笑みがこぼれます。


まなと、りんを、学校に、送り出し、私は 昨日
ダウンロードした

『♪この空の下にいて…』
を、聞きました。


♪ 蜃気楼の様な 人だから

幻影の様に消えてゆく…♪


(そう…これは夢!?なんだ)


『彩香』は…私の夢の住人!?


・・・そして



・・・・きっと 大も!?













私は、午前中 仕事を休み
警察署へと、足を運びました。



「まぁ~ 今回は、被害と言う 被害は、無かったですし、本人も 十分 反省している様なので…
彼には、二度と、貴方には近づかないと、念書を書かせました。」


と、警察署の方に言われ
彼が、書いたという

【念書】を、見せられました。



何だか、難しい書面の 言葉の最後に…



【今後、(私の名前)の

半径3m以内には、近づかな
い事 】


と、書いてあり、その下に
彼の、住所 名前 が、書かれてあり、 その横に 印鑑が、しっかりと 押されて、有りました。

(ようやく…これで、安心です。)


私は、ほっと 胸を撫で降ろすと、警察署の方に
深々と頭を下げ…


赤レンガ作りの、警察署を後にしました。




少し…風が強い…


警察署から、真っ直ぐに

広がる、銀杏の並木道を

白い、コートの襟をたて

ゆっくりと歩いていると


<ピピピ…>



大から、メールが…



大「彩香…大丈夫か?
今、仕事中やけんど…
気になるわぁ~」



「大…」


私は、携帯を片手に、並木道の脇に、幾つか並ぶ…
3番目のベンチに 腰を降ろし…


彩香「大丈夫よ 大が、居てくれるから、平気って 言ったでしょう?」

と、書き…送信しました。


すると!? すぐに大から…

大「俺…彩香の事が、心配なんや…」


と、返信。



私は、大からの返信を受け

(彩香なら…どうするのだろう?)


と、考えました。



・・・・きっと



・・・『彩香』なら…


・・・こう… 聞く…




彩香「ねぇ~ どうして そんなに、心配してくれるの?」


送信を押した瞬間から…

胸の鼓動が…


かすかに、早く 波打つのが、分かりました。



大からの返信は、いくら 待っても有りません。




・・・『彩香』は…



更に…大胆になって行きます。




彩香「ねぇ~ 私の事…
100%中 何% 好き? 」


送信すると同時に…


突然、突風が、吹き上がり

黄金色の銀杏の葉が…


一斉に、舞い踊ります。

肩に舞い降りた、銀杏の葉

を… そっと…指で


くるくると、回しながら

私は、彼からの返信を


・・・待ちました。




<ピピピ…>


そして、大からの返信。


大「99%…好きや お前は?」



さっきより…


早くなる、胸の鼓動は!?


『彩香』なのでしょうか?



・・・・・それとも!?




爪の先まで、震える指先


その…震える指で…



私と『彩香』は…



送信ボタンを、押しました。






ただ・・・・・一言







『貴方が…好き…』



・・・・・・と。

第5話『初めての告白』

11月07日(金曜日)


<ピピピ…>


メールの受信音で、目をさますと…


大から、メールが…


大「ストーカーて?彩香 大丈夫なんか?」


(心配してくれてる?)


彩香「うん…昨日 捕まって、今日 警察署に行くの…何だか、怖いわ」


大「なぁ~ 彩香…」


彩香「なぁに?」


(どうしたのでしょう?
何だか、深刻そうな…)

暫く 途絶えた 返信…


そして!?


<ピピピ…>

受信音が…鳴りました。

大「今、俺と彩香の距離 測って見た。 600キロ位やな車で…8時間や!今から、 仕事休んで、そっち 行こか?」



「だ…い…!!」


余りの…大からの、衝撃的な言葉に…

私は、思わず、目頭が 熱くなりました。


(本当に、心配してくれてる…)

心から、そう思える、大からの、言葉でした。


私は、一瞬 天井を見上げ…

こぼれ落ちそうな 涙を
瞳の奥に戻し… 大に…


「有り難う…大丈夫だよ!大が居てくれるものね…」

と、送信。


すると、すぐに大から…


大「そかぁ~? んでも… 心配やなぁ~ 不安な事あったら、何でも 俺に言うんやで…」

と…返信が…


私は、胸に沸き上がる

『愛しい』と言う 言葉を
押さえ…

「うん 有り難う…」


と、送信。



大「よっしゃ~ ってか
風呂…入ってくるわ!」



彩香「うん」



「だい…」


私は、携帯を静かに閉じ…

布団から出ると…


まだ、薄暗い 部屋の中で
携帯を、天井高く、かざしました。



(私は、『彩香』彼の前では、もっと もっと 可愛い女になろう♪)