真実のノート -55ページ目

最終話『真実のノート』

(家に帰れる!!)


(あの娘達の元へ、帰れるんだ!!!!)


そう思っただけで、胸に熱いものが、込み上げて来ます!!


私は 直ぐ、病室から出ると、ロビーの公衆電話に向かいました。


一刻も早く、母と娘達に この 嬉しい知らせを伝えたい!!

そんな思いで、私は 実家の番号を(プッシュ)しコールを 入れました。

(プルルル…)

暫く、続く呼び出し音…
(あれ!?)

こんな 肝心な時に 母も娘達も 出掛けているのでしょうか!?

いくら、待っても鳴りやまない(プルルル…)に 痺れを切らし!

(ガチャッ!!)

(んっもう!!!!)

私は ちょっとだけ ふてくされ、受話器を、置きました。

そして…再び 病室に戻ろうと 振り返ると!?


「わぁ~!!!!」


いつの間に、飾られたのでしょう!?

ロビーのど真ん中に
巨大なクリスマスツリーが 誕生していました。

色鮮やかな 電飾が キラキラ と 輝き… 綿の雪 サンタやリボン いろんな 可愛いアイテム達が、 所狭しと 華やかに 飾り付けられています。


余りの綺麗さに、見とれていると!?

奥の方から、子供達が

嬉しそうに、(キャッキャッ)と、
パジャマ姿で、駆けて来ます


その後を 看護師が 車椅子に乗った子供を押しながらこちらに歩いて来ました。
「こらぁ~走らない!!」

看護師の注意の声が 日曜日の シーンと静まりかえったロビーに、響き渡ります…

それでも、子供達の はしゃぎ振りは 止まる事なく (ピョンピョン)と 跳び跳ねながら、今後は、ツリーを囲みぐるぐると 回り始めました。

(可愛いい!!)

思わず、笑みが 零れます。

車椅子が 私の前に差し掛かると…

それに乗った、可愛い
女の子が、私をキラキラと
輝く瞳で見上げ、言いました。

「今日は イブだから、サンタさんが、来るよ!!」

と…

それを 聞いた看護師さんは、(ニコリ)と 笑い…

「サンタさんは、子供にしか、見えないんだよ!」

と 言い…私に(ウィンク)をしました。

(クスッ)

私も そんな2人に笑いかけ

「大人にも、見えたらいいのにね!」

そう言って、(ウィンク)をして見せました。

最終話『真実のノート』

まず、医師から告げられた事は…

検査の結果 私の胃の中の腫瘍は 予想通り 悪性で あったと 言う事でした。
「うぅっ…」

母が 突然、泣き出したので 私は

(母には…これ以上耐えられないだろう…)

そう判断し 側に立つ看護師さんに、母を待合室に連れて行ってくれる様に
お願いをしました。


「ちょっと待って下さい」
医師が 何故か それを
止めます…

「もう1つ 報告が有ります検査の結果 その腫瘍は まだ 転移の可能性が低く…切除可能であると、判断しました。早急では有りますが、手術の決断を お願いします。」

「えっ!?」(本当に?)

「本当ですか?先生!?」

私が 聞くよりも 早く 母が、医師にそう聞いていました。

「はい…ただ開腹してからの…判断も 必要となりますが…とにかく 全て取り覗ける様に…全力を尽くします。」

医師の力強い言葉に 私も母も 目頭を押さえ…

「宜しくお願いいたします!!」

と 頭を深々と 下げました

(あの娘達の元に…帰れるかも知れない…)

そう思っただけで…

私には 何も怖いものなど有りません…



そして… 無事 手術日も 決まり…



手術前夜…

まな…りん…宏樹…

友達のみゆきまでもが

お見舞いに来てくれました

「頑張れよぉ~!!」

そう言って、肩を(ポンッ)と
叩くみゆきに 私は

「任せて!!」

そう言って 笑顔で頷きました。

帰り際…

「離れたくない~!!」

と 泣きだした、まなとりんの口に 私は「はい!」と言って、飴玉をほおり込み
「すぐ 帰るよ!待っててね!」と言い 頬を(スリスリ)しました。


(私の宝物…まなとりん
貴方達の成長を この目で見れるのなら…ママは 何だって、喜んで、耐えられるんだよ!)






・・・そして

夜が明け・・・


手術日当日…


母に 見送られ…

私は、手術室に入りました。


その後の事は 当然ですが
何も…覚えていません…



目が覚めると同時に

腹部に 鈍い痛みを感じましたが…

直ぐに、私の様子を見に来てくれた医師に

「手術は 無事成功しましたよ…悪い所は 全て切除出来ました…」

そう言われ…嬉しさの余り痛みを忘れました…

そして…その後に 襲って来た 激しい痛みにも
(耐えられる) 不思議と そんな元気が 出ました。



それから、2日程経つと

腹部の痛みは 大分楽になり…

私は 元の 病室へと 戻されました。


ベッドから、ふと、窓の外を、見ると…

また…あの 銀杏の並木道が 「お帰り…」と 私を 迎えてくれます。


私は ひっそりと たたずむ3番目のベンチに

想っては いけない人を
想っていました…


大は…今頃…どうして居るでしょうか!?

彩香の…最後のメールに傷付き…

彼女に、癒しを求めて居るでしょうか!?

もう…いい加減 忘れ無くては、いけません…


「くよくよするなよぉ~」
私は 右手で拳を作り…

頭を軽く…(コツンッ)と 叩きました…



それから…20程経った、日曜日…

医師から、待ちに、待った
退院の許可が おりました。

最終話『真実のノート』

次の日…

わざわざ、午前中だけ

仕事を休んで来てくれた
宏樹の車に乗り…

私は、病院へ向かいました。

受け付けを済ませ…

3階の病室に案内されると
そこは、6人部屋でした。
私は 1番左側…窓際の

ベッドに、荷物を降ろすと
心配そうに…オロオロして
中々、帰ろとしない宏樹に
「もう、大丈夫だよ…
早く、仕事戻んなさいよ!」
そう言って、デコピンをして見せた。


その様子を見て

「アハハ…!!」

同室の患者さんが、一斉に笑い出します。

宏樹は デコピンされた

おでこを、手でさすりながら

「まっ また来るからな!!」

と 言い残し…恥ずかしそうに…去って行きました。

(彼も 仕事で大変なはず 成るべく、迷惑は かけたく有りません…)


その後… 私は 1人1人に
みかんを配り…

「宜しくお願いします」

と、挨拶を済ませると…
自分のベッドに戻り、窓の
外に 広がる 銀杏の並木道
を見詰めました。


もう すっかり 葉が落ちて
枝だけになってしまった
木の横に あの 3番目の

ベンチが 淋しそうに たたずんで居ます…

「だ…」

思わず、漏れそうになった
名前を 慌てて (ゴクリ)と
飲み込み…

窓にくるりと 背を向けると… 私は ベッドに潜り込みました。




やがて…検査が 始まり

次の日の午後 私と母は

医師に 悪い結果と良い話
両方を 聞かされる事に

なりました。