真実のノート -33ページ目

第10話「雨と涙…そして…夢!」

その後…


私達は 静江さんの 渋々の了解を得て…


関根さんの 口利きも 有り
病院で 雑用係の バイトを
始める事になった。



やって見ると…結構 大変な 仕事だけど…


毎日…間近で 見る 看護師さん達の 仕事の方が もっと 大変で…


衝撃を 受けた。

だけど… 愚痴1つ こぼさず…笑顔で 患者さん達と向き合う 看護師さん達を見て

私も 美紀も いつしか… 彼女達を 尊敬する様に
なっていった…






テレビでは

父が 警察に 証拠を 持ち込み 表沙汰になった
政治家達 41人の 闇献金のニュースが 日々 流れ…
新聞には…


警察庁が 大物政治家… 神林議員の密告 故に…
重い 腰を 上げた!!


と 書かれてあった。


父は これから…


どうするのだろう!?


でも 私は そんな 父を

心から…誇りに 思う。


父が 東京から… 戻ったら

母と 2人


「お帰りなさい!」


と 笑顔で 迎えよう…


そう 私は 心に 決めていた。





忙しい毎日の中…


日々は 一刻 一刻と 時を
止まる事なく


刻んでゆく…




亜弥の病状は 日を 追う事に 悪くなっていった…


もう… 話しかけても…


反応さえ してくれない


亜弥…



私と美紀は そんな 亜弥の側で いつも 亜弥の手を 握りながら…微笑む 静江さんを、バイトの最中 暇を見付けては… 訪れ…



見守った。






奴との、メールは 相変わらず、続いていて



泣きたくなる時などは

何故か!?


私は 奴にメールを 打った

奴は そんな 私の胸の内を

メールだけで… 分かってくれているのか!?


時には… 何気ない 話しでも 朝迄 付き合って くれる


いつの間にか…


奴は 私にとって かけがえの無い… メル友に なっていた。



携帯を 握り締め…

ベッドの上で いつの間にか 朝を迎える…


最近は そんな日が 多くなった…


朝… 寝ぼけ眼で 携帯を 開くと!?


奴から…


「遅刻すんなよ!! 今日も全力で 頑張れ!!」


そんな メールが 入っていた。


「ちっ 生意気!!」


私は ディスプレイを 指で 軽く (ピンッ)と 弾き 時間を確認すると!?


マジで 遅刻寸前!!


慌てて 支度を 急ぐ


「行ってらっしゃい!!」



母と 梅に 送り出されて…


玄関の扉を 開けると…


(キーン)と 冷えた 風が 頬にあたる!!



季節は もう すっかり 秋半ば…



もうすぐ… 冬を 迎えようと していた。

9話『自分の為に…』

胸ぐらを 掴んだまま、関根さんを、睨み付ける 私


その時!?


関根さんも、(キッ!!)っと 私を 睨み返した!!


「貴方、今迄 病院が 何もして来なかったと思うの!?貴方は 何も、分かって無い!! 心臓病で 止んでいる人々が 年間 何人 助かるのか!? 知ってるの!?」
関根さんは 私に そう 怒鳴り返す!!


「!?」



怒鳴った 関根さんの 瞳から…



涙が 一筋 零れ 落ちた。


関根さんの 胸ぐらを 掴んだ手から…


一気に 力が 抜ける…


その手を 静江さんは 静かに 両手で 包み 自分の方へと 引き寄せた。


「ドナーが 例え…見付かったと しても… 亜弥ちゃんには…手術に 耐えられるだけの…体力は もう…残っては、いないわ…」

関根さんは…乱れた 白衣も そのままに…


涙を 拭い 呟いた…



「病院は 最善を 尽くしてくれました… 」


そう言って…静江さんは…私の手を、(ギュッ)っと 握った。


(静江さん…)


私には 静江さんの 様に 納得する事など 今は 到底出来無かった。


「何…言ってんのよ…」

1人言の様に 呟く 美紀…

「2人共… 何 言っちゃってんの!?」


やがて、床に ずるずる 崩れ 落ちた。



「だよなぁ~ 信じらんねーよなぁ~!?」


私も そう 言うと…

床に ヘナヘナと 座り込んだ…

私の 片手を 更に 強く 握りしめる 静江さん…


握られた手から… 彼女の震えが 私に 伝わってくる…



(貴方の悲しみに 比べたら私の今の この感情なんて比べものに ならない事は分かっています…)


(だけど… 言わせて 下さい… 静江さん…)
私は心でそう呟きながら…彼女を見上げた…
「あんな… あんなさ…
天使みたいな娘… 死んでいい訳無い!!」


「佐奈さん…」


私を 真っ直ぐに 見下ろす静江さんの瞳から 涙が 零れ落ちた。


静江さんを 真っ直ぐに 見上げた、私の涙は 頬を 伝い…床に 零れ落ちる…


「死ぬ訳無い!! 死ぬ わ…」



後は もう…



言葉に



ならなかった…



「わぁぁぁ!!」



遠くで… 美紀の 泣き声が 聞こえた…




その後…


どうしたのか?



良く…覚えて無い…



ただ…


亜弥の 可愛い 笑顔が


頭の中で



何度も くるくる 回っていた…


私は



その 亜弥の 可愛い 笑顔に



(嘘だよな!?)



(お前が 死ぬ訳 無いよな?)



そう 何度も…




問いかけた。

9話『自分の為に…』

やがて、静江さんが 病室のドアを開け…

私達の姿を 見ると

「毎日、来てくれるのね…有り難う…」


そう言って、微笑んだ。


私と美紀は、お互いに 見詰め合うと (コクリ)と 頷ずいて


静江さんに

「話しが 有ります…」

と 呼び掛け…


1階の ロビーに 静江さんを連れ出した。

不思議そうな、顔をしながら…私達の後に 続く 静江さん… 私と美紀は そんな彼女に…振り返る




そして


「夜の仕事、辞めて貰えませんか!?」


最初に そう言ったのは 美紀だった。


「えっ!?」


静江さんは いきなりの美紀の言葉に びっくりした表情を 見せ…

「どうして…そんな事…」

戸惑いながら…私を 見た。


「お願いします…せめて 夜だけは、ずっと…亜弥の側に 居てあげて欲しいんです。」

私は そう言って、戸惑う静江さんに、頭を下げた。
続いて…美紀も 頭を下げる…


「…………」


暫く 流れる 沈黙の時間…






やがて…


静江さんが…静かに 口を、開いた…



「私だって…好きで、働いてる訳じゃないわ… 深夜の お弁当工場は 時給も いいし… 辞める訳には いかないわ…」

そう言うと… 静江さんは
眉を 潜めながら…口角を 上げる…


私は 奥歯を(ギリッ)と 噛みしめながら…

頭を 下げたまま、美紀と 目線を 合わせた。

軽く、頷く、美紀…


私は 頭を 上げた。


そして


「私達が その分 働きます深夜は 学生だから、無理だけど… 2人で 働けば 静江さん 1人の 夜の稼ぎ位には なるでしょ?
ってか…して見せます!! だから、亜弥の側に 居てあげて下さい!!」






私は そう言って、再び 静江さんに、頭を 下げた。


浅はかな 考えだって事は十分 分かってる!


だけど…


今の 私達には 亜弥に 少しでも ママとの時間を 増やしてあげたい!


そう 思ったら…


こんな 考えしか 思いつかなかったのだ!

しかし

「何て事を!?」


そう言うと… 静江さんは首を 大きく 横に振った。
そして


「有り難う…気持ちだけ 頂くわ… 貴方達は 学生よそんな事は させられないし… 親御さんだって ご心配なさるわ… 私は 貴方達が 毎日 亜弥の お見舞いに来て下さる…それだけで嬉しいのよ… 」


そう言って… (ニコリ)と 笑い…


「そろそろ 行かなくちゃ…」

そう言うと…
私達に 背を向けた。


「ちょっと!! 待って!!」

私は 慌てて 静江さんの 手首を 掴んだ!!


「!?」


静江さんの 痩せ細った 余りの、手首の 細さに 愕然となる!!


その時!!


静江さんは 掴んだ 私の手を、振り払った!
そして

「これは 家の問題で あって 他人の 貴方達が 口出しする事じゃないわ!!」

そう厳しい口調で言った!!

そして 再び 背を向け


歩き出す



(他人!?)

静江さんの言葉に
握り締めた 拳が 微かに 震えだす



「他人じゃねーよ!!」


私はそう叫び! 再び 去って行く 静江さんを 追い掛け 彼女の肩を 掴み 振り向かせた!

美紀も 私の後に 続く


そして


「2人の問題じゃないんだ頼むから 分かって!!」


そう言って…泣き崩れた

(亜弥は 他人じゃない!!)

「お願いだから、言う事 聞いて!! 静江さん!!」



溢れ出す涙


私も そう叫びながら 床にずるずると 膝を 落とした


「……………」



無言の 静江さん




その時!?



「いい バイト 有るよ!!」

背後から 声が 聞こえた!


振り向くと!?


私達の話しを 聞いていたのか!?


関根さんが 私達に 歩み寄って来た…
そして

「この 病院で バイトしなよ!! 雑用 何でも係って 言うのどう!? 大変だけど…やる気が 有るなら 院長に 話し通して あげる!!」

私達を 真っ直ぐ 見詰め
彼女は 言った。



「関根さん!!貴方まで… 何て言う事を!?」


びっくりした様に 叫ぶ
静江さん!!



関根さんは


「ほら… 立ちなさい 2人共…」


そう言って 私達の 腕を掴み 立たせ…


「ったく あんた達は 考える事が 大胆だわ~」


そう言いながら…

私と美紀の Gパンの ほこりを (パンパンッ!!)と 交互に叩いた。


そして


静江さんに 目線を
滑らせると



「私からも お願いしますこの娘達の 気持ち 分かってあげて 下さい… 」


そう言って 頭を 下げた。


「そんな… そんな事 させられません!!」


静江さんは 首を 横に 振った。


「亜弥ちゃんに…」


そう言いながら…頭を あげる 関根さん


「亜弥ちゃんに…もう 時間が 無いのは…知ってるでしょう… 」


関根さんは 静江さんに そう…問いかけた。



「!?」


私と 美紀は 一斉に 彼女関根さんを見た !!


(今……何て…言った!?)



胸に 衝撃が 走る!!



「時間? 時間って 何だよ?」


美紀が 小声で 呟く様に 関根さんに 聞いた。


「亜弥ちゃんは 生まれつき、弱い心臓を持って 生まれてきてしまったの… もう、限界が きてるのよ…」


関根さんは 静かに はっきりとした口調で 私達に言った。



「何だよ…それ…!?」



(亜弥が!? 嘘だろ?)


私は 関根さんの 胸ぐらを掴み!!



「ふざけんな!! 心臓移植は!? 心臓移植 すれば 助かるじゃねーか!?」


そう 叫んだ!!