こちらもせっかくなので、更新します。

気ままになので、あまり頻繁ではないですが、見てくださってる方もいらっしゃるようですし♪


メッセージボードに書きましたが、メインサイトの二次創作を一部載せるといった感じになるかと思います。


気に入っていただけたら、是非メインにいらしてくださいね。


こちらにもリンク貼っておきます。


「君とずっと…」


それでは少し作業に移ります。






春うらら
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今度、ギャラでも入ったら、春物の服を買いに行こう。

なんて、デートの約束をした。

寛貴くんから服を買いに行こうって誘ってもらえるのが嬉しくて、誘われた夜は興奮して中々眠れなかった。

そして、寛貴くんから、明日土曜日に買い物に行こうと正式に誘われた。
もうすでに春物を手に入れていた私は、るんるんと弾んだ気持ちでそれを広げた。

小花柄のシフォンワンピに、まだおろしていないピンクのオープントゥパンプス。
アクセサリーは所々に桜のモチーフがついたロングネックレスに、桜の花びらの形のストーンがついたピンキーリング。
鞄はアンティークな色合いの小さなリュックタイプのもの。

張り切って奮発しちゃったけど、やっぱり春になると、可愛い服とか小物とか多くて、つい買ってしまうのは、私だけじゃないはず。
そして、何より、彼のためだったら尚更おしゃれしたい気持ちは勝る。

「楽しみだなぁ」

ワクワクして眠れないな、と緩む頬を抑える。
この所、ゆっくりとデートも出来ていないし、浮かれてしまうのは仕方ないと思う。
鼻歌交じりに、来ていくワンピースを合わせて、部屋でくるりと回ってみる。
寛貴くん、気付いてくれるかな。
新しいワンピースに気付いてくれたらいいな、何て妄想を始めたら、夜が明けるのも一瞬だ。





***





楽しみすぎて、余り眠れなかった。けど、眠いということはなく、頭は冴えている。
普段テスト勉強の時でも、これくらい頭が冴えていたら、いい点取れそうなのにな、と思ったのはお約束だ。
はやる気持ちで家を飛び出すと、暖かい春の陽気と新しい春の装いで、気持ちも軽やかに弾む。

「ちょっと早いかな…」

待ち合わせの駅前に着くと、いつも待ち合わせている場所に、寛貴くんの姿はなかった。
私の方が先に来るなんて珍しいな、と思いながら、そこで待っていると、携帯が震えた。

「えっと…柱の陰を覗いてみて……?」

メールの通りに、近くの柱を覗いてみると、人通りから死角になる所に、寛貴くんが変装用の黒縁眼鏡をして立っていた。

「おはよ」
「おはよっ」

思わず駆け寄ると、ふわりと何故か抱き締められた。

「え?寛貴くん?」

普段ならしない行動に、ドギマギさせられていると、身体を離した寛貴くんが、ニッと笑った。

「可愛くて、つい…。似合ってるよ、それ」
「う、あ、ありがとう……っ」

ストレートに褒められて、頬が熱くなる。褒められたいとは思ってたけど、想像以上のことが起こって、頭の中は若干パニックだ。

「ぷッ…くくくッ」
「──あ!寛貴くんっ」

身体を折って笑い出す彼に、からかわれたことを今更ながら気付く。
悔しくて睨みつけると、寛貴くんはごめんごめんと謝ってきて、私の手を引いて、通りに出た。
自然に繋がれた手に、それだけで嬉しくなる私は、単純だなと思う。
でも、人目を気にして手を繋ぐことがあまりなくなった最近は、こうして普通なことをできるのが堪らなく嬉しかったりするのだ。

「どこに行くの?」
「ああ。贔屓にしてる店があるんだ。ちょっと歩くけど大丈夫か?」

チラリと私の足元に投げられた視線を理解して、私はへらりと馬鹿みたいに笑いながら、頷く。
新しい靴だって気付いてくれた。
テンションだって上がる。

「何?ニヤニヤして」
「ううん。何でもない」

おかしな奴だな、と表情を崩す寛貴くんに、私も笑い返す。
ああ、幸せだなと実感する。そして、寛貴くんを好きだなぁって心から思う。
そっと隣を歩く寛貴くんを見上げる。
横から見る彼もやっぱりかっこよくて、そんな人が私の彼だなんて、ほんと信じられないくらい。
再びだらしなく緩む頬を抑えて、私は今日一日を楽しもうと改めて思ったのだった。





***





「ありがとうございましたー」

店員に見送られて、私達は店を出た。
寛貴くんの春物の服を買い込んで、大満足していた。

「ちょっと休憩しよう」
「あ、うん」

店を出て、寛貴くんの提案に乗る。
いつも利用してるカフェに向かおうと、再び手を繋いで、通りを歩く。ふと、何だか視線を感じた。

「ねぇ、寛貴……っ」

ドン…ッと押されるように、私と寛貴くんの間に、女の子の集団が横入りしてきた。
繋いでいた手が離れ、寛貴くんと離されてしまう。

「須賀寛貴さんですよね!?」
「私達ファンなんです!」

ファンの人だった。
寛貴くんが女の子に囲まれて、サインや写真を強請られている。
そうして、その騒ぎを聞きつけたのか、続々と人が集まってきて、ますます寛貴くんとの距離があいてしまう。
寛貴くんて、こんなに人気あるんだ、と改めて思う。学校ではこんな風になることはないので、目の前の光景が新鮮だ。
呆然と立ち尽くしていると、人混みを掻き分けるようにして、寛貴くんが抜け出そうとしている。

「○○!いつもの所で!」

ハッとして、大きく頷いた。
さっき行こうとしていたカフェへ、弾かれたように走り出した。
息が切れて苦しくて、新しい靴が靴擦れを起こして、足が痛んだけど、それでも走った。
カフェへ着いた時には汗だくで、それを拭うために鞄からハンカチを取り出す。でも拭く前に、そっと額の汗を拭われた。

「──ッ、寛貴くん!」
「シー……ちょっとこっち」

カフェと隣のビルの間の狭い路地に身体を滑り込ませる。
息を潜ませると、バタバタとこっちじゃないのっ?と叫びながら走り去る集団が。

「はぁ……ようやく」
「凄かったね…」

一息つくと、お互いに顔を見あわせて笑う。

「お茶しよっか」
「ああ、でも場所は変えていいか?」
「え?うん、いいよ」
「じゃあ行こう」

クイッと手を引っ張られ、足を踏み出した私を小さな痛みが襲う。
立ち止まった私を、寛貴くんが振り返る。そして、勢いよくしゃがみ込むと、私の足に手を置いた。

「ひ、寛貴くん?」
「靴擦れか…」

ポケットから絆創膏を取り出すと、手早く靴擦れの箇所に貼ってくれる。お礼を言おうとした瞬間、寛貴くんが更に身体を折り、私の足の甲に唇を寄せた。

「え…?ちょ、寛貴くんっ…!あ…っ…」

そのままペロリと舐められると、ぞわりとした感覚が、私の背を駆け上った。

「……そんな声、出すなよ」
「だって……っ」
「…ったく。…早く行こう」

私に靴を履かせると、私の腕を取って、寛貴くんは自分の腕に絡めた。
手を繋ぐよりも近付く距離に、ドキドキと心臓が音を鳴らす。

「痛くないように、掴まって」
「あ、うん。…でも。 …」

さっきのことを思って戸惑う。
また、ファンの子に囲まれたら。

「この方が、離されないですみそうだろ」
「……っ、うんっ」

へにゃりと顔が歪む。
離れたくない気持ちは一緒だって分かって、それを伝えてくれる寛貴くんが大好き過ぎて。

ああもう、すごく幸せ。

ぎゅっと寛貴くんの腕にしがみつくと、彼の瞳が優しく見つめてくる。
その眼差しを擽ったく感じながら、私は寛貴くんの腕に頬を寄せた。







*あとがき*

たまには脈絡のない話を(笑)
ダイアリーから久々に妄想してみました⭐
はぁー、やっぱり寛貴くん大好きだー!
彼を幸せにしたい。
したい。



まいまい





薄紅色の約束
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両親の離婚が成立した。
もう既に別居状態になっていたから、今更寂しいなんてことはなかった。
離婚理由なんて、私は知らない。聞いても教えてくれるかどうか分からなかったし、私も別に知りたくなかった。
私の家族は、そんなに仲が悪いことはなかったと思う。
楽しい思い出はたくさんあった。
けど、離婚した。

私はお父さんと一緒に、お父さんの実家の近くに引っ越すことになった。
もちろん、今通っている高校は途中で転校しなくてはいけない。仲の良い友達とも離れ離れ。──だけど。

私は何故か、ワクワクしていたんだ。
胸がドキドキして、何かを待っている感覚。
きっと、そこにあると信じてた──





***





「よし、粗方片付いたな」
「うん。ちょっと休憩しようよ」
「そうだな。…んー、アイス買って来い」
「えー!お父さんが行ってよ」
「俺は動けない。高いの買ってもいいから」
「もうっ、分かったよ!」

引っ越しが終わって、生活に困らない程度に片付けたら、お父さんにパシリにされた。
コンビニはこの家にくる途中に見つけたから、そんなに遠くはなかった。面倒だと思いつつも、お金を貰って、家を出た。

ふわっと吹き抜ける風が春の匂いを連れてくる。
日差しもだいぶ暖かくなって、陽気な気分にしてくれる。
足取りも軽くなって、スキップをするように、コンビニまで歩いていると、左手に大きな公園が見えた。ふとそこに目を遣ると、住宅地には似つかわしくない程の大樹が、デンとその存在を誇示していた。

──何て立派な木だろう。

そばに寄ると、その大きさがより分かる。両手を回せない太い幹に、縦横無尽に伸びたたくさんの枝。
よく見てみると、その木は桜の木で、たくさんの蕾が膨らんでいた。

「…咲いたら綺麗なんだろうな…」
「綺麗だぞ」

思わず呟いた言葉に、不意に返事が返って来て、私は声の主を探した。
くるりと幹を回ってみると、私がいた所と対称の位置に、男の子が一人、幹を背凭れにして座っていた。

黒かと見紛うような深い藍色の髪が、そよぐ風に靡いて、凄く綺麗だった。

「…あ、あの?」

何となく気まずい雰囲気に圧され、私は怖気づきながら、話しかけてみる。
男の子は私の声に反応すると、その顔を私の方に向け、ふんわりと綻ぶように笑った。

髪に負けず劣らず、男の子の顔は整っていて、その瞳は髪と同じ藍色で、その瞳と目があった瞬間、私は何故か懐かしい感覚を覚えた。

「────ようやく、会えた……」

込み上げるように吐き出された言葉は、私の鼓動を早くする。
私を知っているかのような、男の子の言葉に、気味の悪さを感じないのが不思議だ。

「…………誰、」

一言だけ紡ぐことが出来た言葉。
目の前の男の子は、一瞬悲しそうに眉を寄せ、ふるふると首を横に振った。仕方ないな、というふうに。

「俺は、斎藤──」


急に目の前の景色が消えた。──いや、変わった。
満開の桜の木の下に、私はいる。
背中には温もりが感じられて、私はその温かみを愛おしいと感じていた。

「……必ず、会おう」

低く耳元で囁く声。
それに迷いなく頷く、私。

「いつまでも、待っている。約束は未来永劫、不滅だ」
「はい…」

抱き締められる感覚に泣きそうになる。必死に背後を振り返ろうとするが、私を抱き締める彼を、私は見ることは出来なかった。

涙が流れる────


「しっかりしろ!」
「────あ」

目の前に慌てた男の子がいた。
私はどうやら抱きかかえられているみたいだ。
私はそっと彼の胸に顔を寄せた。力強い腕や頬に当たる逞しい胸板は、懐かしい感覚で、安心できる。

「……一さん…」

自然と出た名前に、私も驚くが、彼も驚いたようだった。
肩を掴まれ、顔を覗き込まれる。それが余りにも近くて、私は顔を赤らめた。

「思い出したのか?」
「え?……何を、ですか?」
「約束だ。この桜の木の下で約束をした」
「────っ」

先程の夢のようなものが思い浮かんだ。
この人が彼?

「前世に、お前と約束をした。必ず会うと。いつまでも待っている、と」
「……わ、わたしっ……」

頭では身に覚えがなかったが、心が覚えていた。
心が、彼を望んで、涙がまた溢れた。

「会いたかった……っ」

待ち望んでいたのだ、この瞬間を。
彼と巡り合う瞬間を。

「もう、離れない」
「はい…」

彼は私を一度抱き締め、それから解放すると、改めて手を差し出してきた。

「俺は、斎藤明一という、あんたは?」
「私は────」

差し出された手を握る。
その手は少し冷たくて、心地よかった。



永遠の約束。
ほんのり色付いた、優しい記憶。






fin.





*あとがき*

ちょこっと、春らしくね(笑)
まぁもうー、どうしような出来ですよ(笑)

在り来たりな題材でどっかで誰かが既に書いてるような、そんな気もしますが、書いてやったぜ☆な感じです(>人<;)

一応転生ということで名前変えてみました。だってね、史実にいる人だし、同じ名前は辛いなと思って←
変なとこに拘るB型(笑)

見つけたあなたは儲け物←


2012.4.4 まいまい



***





 午後8時。
 いつまで待っても出てこないから、先に夕飯を頂いた。
 本当に、今日は長丁場みたいだ。

「……原因は…何だろう」

 ソファーに身を沈めて、真剣に考える。
 もしかして、昨日会う約束を反古にしたから、怒ってるのかな…。
 私は、いつから機嫌が悪いのか、思い出してみることにした。

 昨日急に仕事が入って、約束が無理になったと連絡を入れた時は。
 仕方ないよ、頑張って、といつもと変わらない返事だったはず。
 次に連絡したのは、休日出勤したメンバーでご飯を食べた後で。

「あっ!」

 私はソファーから立ち上がった。寝室の前に向かうと、ドアを叩いた。

「秋夜くん、ごめん!昨日…!」

 私の言葉を遮るように、寝室のドアが開いた。
 冷たい目をした秋夜くんがいた。

「秋夜くん…」
「あんたはさ、俺を何だと思ってるわけ?」
「ごめん…」

 そうだ。昨日、仕事が終わったら電話してって言われて、でも実際電話したのは、仕事が終わってからだいぶ後で。オマケに、それ自体を忘れてた、なんて。
 秋夜くんに嫌われても仕方ない…。

「何でそんな顔するの」
「…だって、私のこと嫌いになったよね」
「…はぁ」

 秋夜くんの顔を見れなくて、顔を俯けると、秋夜くんの溜息が聞こえて、それから何故か抱き締められた。

「…嫌いになるわけないじゃん」
「……え?」
「嫌いになるんだったら、もっと前になってる」
「……それって」
「あんたが俺を蔑ろにするのは今に始まったことじゃないし」
「……ごめんなさい」

 反論も出来ません。
 頬に当たる秋夜くんの温もりに、心の底から安心する。

「俺もちょっとやり過ぎたから」
「……うん」
「ちょっと本当に反省してるの?」
「してるよ!」
「ふーん……じゃあ俺の言うこと、何でも聞けるよね?」
「えっ?そ、それは…」
「いいよね?」
「…………はい」

 頷くしかなかった。
 私の返事を聞くや否や、秋夜くんは私を軽々と抱き上げた。そのまま向かったのは、バスルーム。
 私に逃げないように釘を刺すと、バスルームへ消える。

「…ほんとに入るの…?」
「当たり前でしょ。別に初めてじゃないんだから、恥ずかしがる必要ないよ」
「いや、だって!」

 お風呂単体…っていうのは初めてだよ…とも言えず、秋夜くんは服を脱ぎ出す。
 …何かちょっと目のやり場に困る。
 いつまで経っても動かない私に、秋夜くんが意地悪く笑う。

「何、脱がせてほしいの?」
「ち、違います!」
「仕方ないな…」

 秋夜くんが近付いてきて、トップスの裾から手を入れてくる。
 触れるか触れないかのギリギリを這う手に、私の息が少しずつ上がっていく。

「もう降参?」
「しゅ…っやくん…っ」

 涙目になってるだろう私の目尻をペロリと秋夜くんの下が舐め上げる。それだけでゾクリとした感覚が背筋を上る。

「もっと、俺を教えてあげるよ」

ニヤリと弧を描くように上がった口許を私は絶対忘れられない。





***





「一、連絡はマメにする。必ず、絶対に」
「はい、次」
「一、仕事が終わったら、まっすぐ帰る…?」
「はい」
「一、土日は必ず泊まりにくるこ、
と…?」
「…ちょっと、さっきから何で疑問形?納得してないわけ?」
「そりゃそうだよ!こんなの横暴!」

 何故か私は床に正座させられて、秋夜くんが書いた約束事を音読させられている。
 しかも内容がえげつない。

「…反省してないわけ?」
「反省はしてるけど……」
「けど、なに?」

 束縛しすぎだ…とは言えず、モゴモゴしていると、秋夜くんが私の傍らに膝をついた。
 そっと頬に手を添えられる。優しく撫でられて、私は秋夜くんを見つめた。

「じゃあさ、いっそのこと桜庭になる?」
「――は?」
「…………その返事、傷付くんだけど」
「あ、ごめん」

 いきなり言われて混乱してる。
 "桜庭になる"って、つまりそういうこと、だよね…。

「……今度さ、大きな仕事が入ってくるんだ」
「ほんとに!?よかったね!!」

 秋夜くんの夢が少しずつ叶ってく。凄く嬉しい。
 嬉しさが溢れて、私の頬も緩む。

「だから、さ。…そろそろ名実共に、俺のものになろうよ」
「…………」
「だから、何で黙るのさ」
「いや、急すぎて頭が付いていかない…」
「頭が付いてかなくていいから、答えてよ。『はい』なの?『イエス』なの?」
「ええっ、てか、両方一緒じゃない」
「なに?断るの?」
「………断らないけど」
「じゃあ返事」
「……はい、よろしくお願いします」

 半ば無理矢理、私は返事をした。それに笑う秋夜くんが、本当に嬉しそうで、やっぱり私は彼に弱いな、と苦笑するのだった。
勿論、私も嬉しいに決まってるけど。多分彼にはお見通しだと思うから、私からは言わないでおく。







fin.





→あとがき!


不機嫌な君も好き
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 一言。
 この人は機嫌が悪い。
 それも尋常じゃないくらい。

「……何で…かな?」

 思い当たることはあるようでない。
 というか、彼の怒りのスイッチがどこでオンになるのか、皆目見当が付かない。
 それは付き合って7年経っても、理解に苦しんでいる。

「……秋夜くーん」

 甘い声を出してみても、無視。
 ヘッドフォンをして、音楽を聞いているのは分かってはいるが、今までの経験上、声は聞こえていることは実証済みだ。

「……もう」

 こんな調子なら来なければよかったな、と溜息をつく。

 土曜日に休日出勤した代わりに、月曜日が代休になった。それで、日曜日の今日、お泊りセットを持って、秋夜くんのマンションを訪ねたのだけれど。

 まず、呼び鈴を鳴らしても出てくれない。仕方なしに合鍵で入って、もちろん出迎えてくれるわけもなく、ソファーで音楽鑑賞。

 最初は眠ってるのかな、と思ったけど、時折ギターを弾くように指が動くのを見て、それは打ち消された。
 普段なら絶対に気付くはずなのに、全くこちらを見ることもなく、私の呼びかけに応えることもない。

 機嫌の悪さは最高潮みたいだ。

「はぁ…」

 荷物を部屋の隅に置くと、私は夕飯の下ごしらえをしようと、キッチンに入る。
 冷蔵庫の食材で、適当に献立を考える。
 久しぶりにハンバーグでも作ろうかな、と玉ねぎやら挽肉やらを取り出し、準備を始める。

 チラリと彼を見遣ると、相変わらず目を閉じて音楽を聞いている。
 横にある大きな窓を、傾いた太陽がオレンジ色に染めていた。
 その色が秋夜くんを暖かく包み込んでるように照らしていて、少しだけ見惚れてしまった。

 何年経っても、秋夜くんはあの頃と変わらず格好良い。
 ちょっと硬めの黒い髪とか、猫のような警戒心の強い瞳とか、気まぐれな所とか。
 そんなところが私も変わらず好きだったりする。
 何だかんだ言って、私は秋夜くんに出会った時から弱いんだ。

「……くぅ、滲みた…っ」

 油断して玉ねぎが目に滲みた。服の袖で目を擦って、それでも止まらなくて、タオルを借りようと、洗面所で駆け込む。

「あ…ダメだ」

 目を洗わないといけないくらいに滲みていて、私はパシャパシャと目を洗うことにした。
 バッチリ化粧してこなくてよかった、何て思いながら、タオルで目元の水分を拭っていると、背後から視線を感じた。

「わっ…秋夜くん?どうしたの?」
「……泣いてるの?」
「え?ああ、これは玉ねぎが滲みちゃって……」
「あ、そう」

 あっさりと頷いて、秋夜くんはスタスタとリビングに戻って行く。
 機嫌直ったのかな、とその後を付いていくが、彼はまたソファーに座って、ヘッドフォンをした。

 どうやら、まだ、みたい。

「……何なのよ、もう」

 溜息をついてもつききれないくらい、私はどんよりする気持ちを振り切るように首を振って、夕飯作りを再開した。





***





 午後6時。
 そろそろご飯時だと、秋夜くんに声を掛けにいく。
 あの後、下ごしらえが終わったと同時に、秋夜くんは寝室に閉じこもってしまった。
 今日は本当に、最高にダメな日みたいだ。

「秋夜くーん、そろそろご飯食べよー」

 返事はなし。
 寝てるのかな、とドアノブを回すと、鍵が掛かってるみたいで、ビクともしなかった。
 鍵を掛けるなんて、今までなかったから、それだけ私自身を拒絶されてると感じて、私は足取り重たくリビングへ戻った。
 ソファーへ座ると、『猫』が擦り寄ってきてくれた。落ち込んでいると、こうして近寄ってきてくれるのは、ずっと変わらない。

「『猫』もお腹空いたね、ご飯にしようか」

 鳴き声を上げる『猫』に微笑んで、戸棚からキャットフードを取り出し、お皿に盛り付ける。

「はい、どうぞ」

 勢いよく食べ出す『猫』を見ながら、私はまた溜息を吐いた。
 寝室からは動く気配はない。

「君のご主人様はどうしたら機嫌直してくれるかなぁ?」

 蹲って、『猫』にそう話しかけると、食べるのを一旦やめた『猫 』がまた一声鳴いた。