【暑さ対策展】2015年6月17日~6月19日 北の丸公園 科学技術館
本格的に暑さも近づく中、東京九段下の北の丸公園にある科学技術館で「暑さ対策展」が開催された。
近年のヒートアイランド現象(都市部を中心に街中の温度が異常に高まる現象)の中、作業現場や灼熱の厨房、外で取り付け工事をする人etc・・・熱中症という怖い症状に知らぬ間に陥る事がある。
自身は大丈夫でも、高齢者や体調の悪い人、身体の弱い人、大切な仲間が熱中症になれば、業務や店舗も停止しなければならないので、お客様の信用を失う事もある。
最悪の場合は死に到るし、暑ければ能率が落ち、普段しない不安全行動をしてしまい重大災害に繋がりかねないこともあるので、注意が必要だ。
この展示会は季節的に凄く意義があると感じ、少しでも灼熱の中で働く人々へ暑さに対する気持ちと理解を拡められたらと、出版社の経験を活かして、この展示会を視察してきた。
最寄り駅の九段下から2番出口を上がると、旧江戸城の堀端に出る。
左折し、
日本武道館の見える門をくぐって、会場の科学技術館までの道を進む。
科学技術館に到着。
展示会場に入って最初に耳にした言葉が「クール・スポット」という言葉だった。
語譚から、なんとなくは意味合いは解ったが、解ったつもりで解った気になっている事もあるので、一応きちんと訊いてみる。
文化シャッターグループのBXテンパル株式会社の方が教えて下さった「クール・スポット」とは都市や炎天下のフィールドに、日除け用の休憩スポットを作り、暑さで具合が悪くなりそうな人が休憩出来るスペースを設置する施策との事で、おりしも2020年の東京オリンピックに向け、都市再生の一環として又ビジネスチャンスや、新たな技術開発の場として、この展示会ではまだ世に出ていない試作品も含め、いくつかの技術やクールスポットのモデルケースが時代に先駆けて様々な業種の関係者に公開されていた。
最初に見たのは、テント型のカフェをイメージした「クールスポット」で、開閉式の動くテントに、プロジェクターのスクリーンを吊るし、様々な情報を得るスタイルにする事でツライ暑さのイメージと差別化を行っているテント
スクリーンでは、事故の情報や、電車・バスの交通情報、『夏の野外フェス』や舞台で行われている公演等を見る事が可能などの、今後の実用的な可能性について意見を出し合ってお話しが出来た。
(↑他企業とのコラボレーションでワイン瓶の破片を使った冷却性・給水・保水性の高いブロック材を使った床も設置してあり、驚いていると「ワイン瓶に限らず、現代はこの展示会に出展している様々な企業もこういう技術を多く開発していますので、是非見て行って下さい!!」と教えて下さった。)
又、そのテントを利用して医療救助用のクールスポット・「クールエイド」も展示されていた、夏の野外フェスなどで、急に具合が悪くなった人の為に、従来のテントに比べ、側面にあえて空間を造り密閉した空間にしない事で空気を対流させる構造になっているので、滞留した熱気でテント内の温度が上昇し続ける事もなく、医療従事者が救命に専念し易くなるという意味もあり、更に折りたたむと人間の腰ぐらいの高さのコンパクトサイズになる為、救命救急の現場やDr.ヘリ、緊急車両に積み込む事も出来るとのこと。
(たしかに中は涼しかった。) このぐらいの腰の高さに折り畳めるとの事。
↑タニタの8000円の熱中症測定器は、室内・室外の測定が自動的に切り替わるのが特徴。価格が安価なので幼稚園の先生や高齢者施設で、管理しなければいけない人が手軽に手に入れる事が可能で実際に使用されている。
又、今は市場価格をキチンと安定させる為に直販を行っているとのこと。
タニタのブースでは「WBGT」というアメリカ生まれの熱中症の危険数値を試算する具体的な説明も聞いてきた、具体的には上記の様な計算式が様々な職種の現場で活用されており、より詳しい所はこれに更に細かい指数も考慮して計算しているとのこと。
↑環境クラウドサービス株式会社の熱中症測定器は業務用なので高価だが、ネットのクラウドサーバを人工衛星等の代わりにして、リアルタイムでその地域の温度の移り代わりを広範囲に測定したり、電子回線で繋いでおいて、ある一定の温度を越えると、作業現場のサイレンが鳴り響く仕組み等、企業や政府で使える熱中症測定器もあった。
水分補給飲料は、「味の素」(AJINOMOTO)が開発した「日本学校保健会推薦」の歴史ある熱中症対策飲料「アクアソリタ」が展示されており、知り合いの建設会社さんから、毎年6月に概ね全国各地で行われる安全大会でサンプルとして配られたりする熱中症対策飲料水をご紹介頂いたりするが、それらはナトリウム味というかあまり美味しくなくて沢山飲めないが、ここで紹介する「アクアソリタ」は、林檎(リンゴ)味で美味しくて(一応調理師で、飲食関係の出版社にも居たので口に入れた瞬間、あ、これは美味しいと職業モードにスイッチ・オンし直ぐに解った。後日建設会社の方々2人に試飲して頂いたら「あ、これは美味しい」とそれぞれ言って頂けた)、実際医師が自身の3歳の子供に様々なスポーツドリンクを味見させた時、この林檎味の製品が「1番美味しい」と言い選んだという。「3歳児が嘘をつくわけがない」と言われていたが、私もそう思うし、食のプロとしてもこれは自然に近い味のような気がした。
「やはり、美味しくなければ飲まない、例えば作業現場でも自主判断で水分補給させるだけでなく定期的に補給する体制や予算をきちんと確保しなければ」という話になった。
因みにこの製品の糖度は市販のスポーツドリンクの7分の1しかなく、喉ごしが凄まじく良く飲み易いのも「人間の体液に近い硬度だから」とのことで、ドラッグストア等で購入出来るそうだ。
他に塩飴ならぬコーラ味や檸檬(レモン)味等の味付けをした塩タブレットなども開発されていて、やはりこれも「美味しくないと食べない!!」という発想に基づいて開発されたとのこと。
又、「水は飲み過ぎると、体内の塩分まで外に押し出してしまう」と言われ、「田舎の塩おにぎり、梅干し、お茶という昔ながらのバランスが良い」と言われていたことにも納得いく。
因みに日常生活での水分補給は、起床後・入浴前後・就寝前が良いらしい。
(寝ていても、500mlの水分が放出され朝は軽い脱水状態になっているそうだ。)
↑「ネッククーラー」(冷却首巻き)の「マジクール」という製品を10年間研究・開発している大作商事株式会社は、後続品も多い中、世界に先駆けて一早くこの製品を開発したパイオニア的企業で「私達の会社は何か世の中の役に立つ事をしたいという事が企業のモットーです」と元気に語ってくだされて、厚生労働省お墨付きの安全性(コットン100%の皮膚を傷めない安全性)で、保冷性も特殊ポリマーによって1度冷やすと20時間冷たさが保つとのこと。
又、ここの企業では、世の中の役に立ちたいという思いで開発した様々な製品ラインナップがあり、暑さ対策関連の他の製品も見せて頂いた、有名な所では首に垂らす小型扇風機はオフィスの机でも使えるように斜めに自分に向けて送風する事も出来たり、
他にも熱中症対策の展示会なので持ってこられなかったそうだがカタログに載っていた電池不使用の30秒振るだけで20分点灯する懐中電灯や市販のポリ袋を真空パックに手軽に出来る道具を東急ハンズやロフトで販売しているとの事。
消費者の様々なニーズに応えようと企業努力をされている姿勢に、ここの企業が何故?消費者に愛され永続的に老舗になり得ているか?が少し肌で解った気がした。社員さんもここで働いている事、自身の会社の事をされている時が楽しそうで輝いていた事が印象的な企業だった。
接触冷汗素材ラディクールを紹介しているグンゼでは快適な下着の開発を永続的に続けており、更に今回消費者の為に様々なライフスタイルの提案の1つとして、ミニ冷蔵庫にパジャマを入れてお風呂上りに冷たいビールではなくて、冷たいパジャマというのも選択肢として面白い事をさり気無く紹介していた。
消費者のライフスタイルを考えるのは企業として正しい経営姿勢の1つだと思った。
更に熱中症対策コーナー等もあり、様々な熱中症対策グッズが実演展示されていた。
(注:この展示会では会場内での販売はしていない。)
↓ボンベからの冷却噴射によって一瞬にしてタオルに氷を作る技術
布に氷を作って、熱中症の現場に水や空冷設備が無い場所で体温が上がって調節出来なくなった患者様を冷却する事が出来る製品や、メントール効果があるサラサラスプレー等、様々な製品が展示されており、
↑バスクリン等の入浴剤も肌が弱いし買った事が無かったが、今回試してみたら、これがあまりに気持ち良くて、普通の湯にも入りたいから、毎日使っている訳ではないが、意外にもライフスタイルに変化を起す事も出来た。
デザイン製作会社も出展しており、企業の夏季ノベルティ(←おまけ)として、熱中症対策製品を作製していたり、
(周囲の温度が手軽に測れるカード)(7月は熱中症対策強化月間のウチワ)
↑塩飴のパッケージデザイン↓
☆個包装の袋にも『声をかけ合おう』と実際の現場で必要な気遣いが表記されていて、商業・消費デザインでも、志や思いやり等の優しさ、何か大切なモノを表現する事が出来るのだなと(人々を幸せに出来るし、こういうデザインの方が消費者は喜ぶのでは?)。
☆味は、実際に食べると意外にカジュアルな感じの軽い味で美味しかった。
(素材の味を敏感に感じ過ぎる超薄味の自分が、後日、汗をかいていない普通の時分に食してみたが、塩辛くはなかった。)
又、企業のCSR(=企業の社会的責任)を具現化するあるデザイン企業では、デザイン会社→製作会社→印刷会社等の製作物関連企業を複合的に取りまとめており、プロジェクト単位で様々な仕事を請け負っている企業体で、確かに小さい出版社や、個人のデザイン会社だけでは弱いかもしれないが(黙っていても家賃と人件費や交通費が出て行く苦しみ)、複合企業なら消費者と顧客のニッチな要望に木目細かく応えられる可能性も拡がる事が見えて、それは今後多くの事に繋がる事と自分の課題として大切にしておかなければと強く感じた。
次回、暑さ対策展~「技術開発偏」へ続く~。
【熱中症】
熱中症は、高温や多湿の環境で、体内の水分や塩分が失われ、体温調節の機能が壊れて、平熱の体温を維持出来なくなる障害の事だ。
処置が遅れると死に至る症状だが、体温42℃で脳細胞の淡白質が固まると言われる、ちょうど生卵が茹で卵になるようなイメージで、生卵と同じで1度固まってしまった脳は最先端の医療でも手の施しようがなくなるという。
熱中症になったらとにかく、脇の下や足の付け根等を冷やすことが大切だが、重度になると点滴や、カテーテルを用いて胃や膀胱に水分を補給したり、最悪全身の血液を1度外に出して冷ましてから体内に戻す医療行為もあるらしい。
特に建設業界では2010年~2013年の4年間で全体の38%と圧倒的に羅漢率が多く、作業開始から数えて3日目、つまり実作業員がまだ暑さに慣れていない段階で亡くなる率が高いデータもある。工事現場に入場して1週間は全ての安全面に於いて特に要注意が必要という事だ。
又、風邪、下痢、嘔吐、アルコールの過度な摂取、寝不足等の健康状態や管理が出来ていない状況で発生する事が多いので、自分では頑健だと思っている人でも日頃の健康管理に周囲の人も客観的に目を配り注意しなければならないだろう。(勿論これは建設業界だけではなく、ガス会社の下請さんや、飲食業界、医療業界、飛び込み営業をし続け知らず知らずに疲弊する営業職、もしかしたらオフィス等でも、他業種でも注意しなければならない。くれぐれもクタクタに疲れている人を更に走らせるようなトドメを刺すような行為は、下手したら殺人未遂や殺人に発展する事がある。ちょっとしたカラカイや悪戯でも、必ずエスカレートするから上役や周囲は仕事や結果だけを見ているのではなく注意をしなければならない。必ず死角は存在する。)
糖尿病や腎臓病がある人は重症化し易く、高血圧や心臓疾患、全身性皮膚疾患や、服薬中も脱水症状になり易い為、熱中症にかかり易いという。
なので、建設業に限らず作業する現場では、コップ一杯の水を摂ってから作業に入るのが望ましいという。(能の風姿花伝を残した世阿弥の言葉にも”喫茶してから行け”という言葉もある。)
又、大量に汗をかいた時だけ水分を補給すると血液中の塩分が薄まるので、脳から”これ以上水分を摂取するな”という指令が出されて水分を摂らなくなる。
更に、一度に吸収出来る水分量は130cc程度(ヤクルト2本)とも言われ、のどが渇いてから水分を補給したのでは遅い為に、こまめに水分を補給しなければならない。
更に7日間暑い場所に順応化した自律神経は、涼しい場所にいると元に戻るのでお盆休み明けは特に熱中症の発生率が高くなる。
扇風機やクーラーの風も意外に身体から水分を奪うので注意が必要らしい。
これらの事を、朝の朝礼や声掛けで職長さん、店長さん達、周囲の人は、職員や共に汗を流してくださるスタッフ1人1人、弱者の体調と人生を判断していかねばならない。