2014年12月13日【会場:つくば国際会議場】
フェアトレードの世界的に有名な日本企業、People Tree代表サフィア・ミニーさんと、株式会社andu amet代表兼チーフデザイナー鮫島弘子さんの講演会を聴講してきた。
前日に友達に教わった8月までの期間限定で東武池袋に出店しているピープルツリーへ行き、店員さんとフェアトレードの話をしていて「近々当社の代表サフィアの講演があるんですよ」とチラシを頂いて「、え!明日じゃん!!!」と思って、日中の仕事はフラフラだし、週末でクタクタだったけれど、私はこの活動はいろいろあった32年来の親友の為に伝えている事なので、命を燃やしてもいいと飛び込みでつくばへ飛んだ。
昔、仕事でつくばへ来ていたが、随分変った。
U・Cバークレーへ通っていた同級生も、昔の職場の一生同期と約束してきたアイツ等も僕がツライ時「人生50:50(フィフティフィフティ)ですよ」と教えて下さった先輩もここを拠点に働いているんだなって思いながら会場を目指しひた進む。
流石は科学未来都市「つくば」、試験用ロボットが進む為の道があるんだ?↓
凄いな、世の中って。(勿論、「ロボットの道?(=哲学の道みたいだな)」を歩いてみる。)
こういう所を歩ける事も未来開発への人々の理解に繋がるのではないかな?
ロボットの道なので感傷に浸る間もなく、会場へ付きビルの中を入って行ったが、そこにはなんともくつろげる空間が拡がっていた。
受付に行くと昨日の今日なので取材申し込みはしていなくて、会場内の撮影は禁止(当然だし、人を撮るつもりも一切無かった。ただ学んだ事を伝えるのが大事と)だが、ビルの待合ロビーの撮影は良いと言って下さった。(そのぐらい素晴らしい会場なんだ。)この「つくば国際会議場」の素晴らしさといったら、巨大な画面スクリーンが舞台前面に設置され、席の机はモノを書き易くする為に手前に引き出せたり、折り上げる事が出来る事を筑波大学の方に丁寧に教えて頂いた、
会場は~、解り易く言うと昔の渋谷公会堂の様な雰囲気と両国国技館の様に上から順に見おろして座る型になっていて、とにかく木目調の温かみある会場で素晴らしかった。ここではJAXA(宇宙航空開発研究機構=H2A・B・イプシロンロケットや先日打ち上げた「はやぶさ2」などの独立行政法人=)も宇宙飛行士を招聘し講演を行うようだ。
それでは、いよいよ「講演」について書いていこう。
今回の主旨は、筑波大学の人文社会学の一貫である『地域研究イノベーション学位プログラム』(通称=ASIP)の一貫として今回で2回目の開催とのこと。
ここで簡単にASIPの特徴をチラシから引用し記しておく
①学類生のための学部・大学院一貫制プログラム(最短5年で修士号が取得)
②10カ国以上からの1年間の留学義務(「よく留学すると就職に不利になるのではないか?という学生がいるがそんな事はなく、近年は『留職』といって1~2年新入社員を途上国に派遣する企業も増えてきた」とのこと。
③新興国・開発途上地域で現地学習。
④地域のプロフェッショナルを目指す。(=英語だけでなく現地の人と人のコミ二ケーション能力を活かす人材育成=やはり海外で仕事をするという事はその地域でのルールというものがある。)
①~④を踏まえた上でグローバルな人材育成を、実践に則った学問の姿勢を拡げていく為に今回選ばれたテーマが「フェアトレード」だった。
最初は上記の様な筑波大学のグローバル人材育成を広めていく説明を筑波大学の方々が解り易く説明・講義し、
14:30~「日本初、MADE IN AFRICAのハイファッションブランドというビジネスモデルの可能性について」andu amet(=アンデュウ アミット)代表兼チーフデザイナー鮫島弘子さんが講演された。
ここでandu ametというブランドを知らない人の為に簡単に説明しておく、andu ametはエチオピアの材料、特に「エチオピアシープ」というエチオピアにしか生息しない羊を使って、現地の人達の雇用を創設しながら、鮫島さんの企画・素材調達・製造・販売の4つのモノ作り全てがエシカルに特化するデザインのバッグ類を販売するブランドとの事で、一時は六本木ヒルズ・ミッドタウン・ヒカリエ等にも卸しており、その製品の良さと主旨からTV番組の「カンブリア宮殿」「未来シアター」等に紹介され、全て手作りの丁寧な生産が追いつかなくなり、年単位で予約が入っている為、今はオンライン受注だけにしたとの事だった。
なぜ敢えて、規模を縮小してまでもオンライン戦略にこだわったか?については「やはり、丁寧なモノ造り・エシカル・高い品質レベルを落としたくなかった。良い物を造り続けていれば必ずファンは付いてくる、解ってくれる人がいる」という確信が強く伝わる言葉から真摯な姿勢を伺い知る事も学べた。
この「エチオピアシープ」という羊の皮は普通の皮よりも破れにくく、折り曲げてもすぐ戻る材質との事。その稀少価値がある皮をバッグの裏と表に使い、現地エチオピアで伝統的に伝わる配色・花・古くから伝わる風習や文化と、現在世界で流行のデザインも考慮しつつ、日本の伝統工芸からもインスピレーションを得てデザインしているとの事。
「andu amet」とは、元々エチオピア語で「1年」とか「ひととせ」(←この言葉を聞いて素敵な語譚の響きがあった)を意味し、皮製品というモノは使えば使い込む程に馴染んでくるので1年1年その人と共に傍らに寄り添ってくれるようなデザインのモノ作りをしたかったと鮫島さんは、慣れない講演にゆっくりと言葉を選びながら、会場全体にその正直な姿勢が伝わる様な透き通る声で語られていた。(ライブ会場の様に講話側と聴講側が一体となったからこそ醸し出していた会場の雰囲気がそこにあった。これがライブの良さだと思う。)
人柄や熱意、至誠というのは「言音(ことね)」の響きからも伝わってくる事を学べた。
元々、日本企業で商品デザインの仕事を担当されていた時に”最初はデザインが楽して楽しくてしょうがなかった”が、ふと、造っては季節が変る度、又は、使い終わったら捨てられていく製品に対し、自分がキレイなゴミを生み出しているんじゃないか?という疑問を持ち始め、自分で長く使えるデザイン製品を造っていこうと行動へ移したとのこと。
それでも、やたらめったらに動いたのではなく、自腹でエチオピアを何度か視察し、海外のデザイン企業でブランド造りのノウハウを学んだり10年の準備期間を取ってから、やっと企業登記して始めたとの事。
又、現地で生産する意味は別にあり、
※フランス・イタリアを経由して生産されると、原料を産出するエチオピアやその国にはお金が落ちない、andu ametを始めてから現地の雇用者の年間所得が10倍にもなったと講演中に流されたカンブリア宮殿の映像で現地の職人が答えていた。それについても自分で働いた分が稼ぎになる、それが現地の職人さん達のモチベーションに繋がると講演後の後談で補足された事・会社を運営し継続させ続ける事の難しさ・何が起こっても全部自分の責任である事を強く語られていた事で、企業運営の厳しさもきちんと伝えられていた。
又、消費者への啓蒙だけでなくエシカルに関心が高いクリエーターを増やしていこうというのも目指しているとの事だった。
他にもフェアトレードや海外・デザインに関する生い立ち等を説明して頂き、青年海外協力隊でデザイナーを募集していた時に思い切って応募し、現地の人にデザインを指導していた事や、中東地域で多感な時期に滞在していた頃のご経験等は凄く教育について考えさせられる問題提起を会場の私達の心の中に残して下さった。
第一線で活躍されるフェアトレードの現在進行形の形を具体的に言葉だけでも、何故か映像的に描写出来る講演で素晴らしかった。
筑波大学が提唱する冒頭に上げた③④の実践と実体験の大切さとはこういうお話ではないか?と感じたし、気持ちを新たに熱え上がらせて頂ける素晴らしい講演だった。
15:15分からの第2部ではフェアトレード業界で有名なPeople Tree(ピープルツリー)の代表サフィア・ミニーさん(イギリス=グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)の講演だった。昔、銀座数寄屋橋にあったピープルツリーで「フェアトレード」という運動を店員さんから教えて頂いて、巡り巡ってやっとここまで導いてくださったのが自分にとってのピープルツリーだ。
(フェアトレードがどうこうではない、何か物事を学ぼうとする姿勢こそ大事という事を教えてくれたのがピープルツリーだった。)
ピープルツリーは有名過ぎてもう説明するまでも無いだろうが、サフィアさんが1990年に来日後、1991年にNGOグローバルヴィレッジを立ち上げ、1995年にフェアトレードに特化したブランド「ピープルツリー」を設立し、2004年には「世界で最も傑出した企業家」にも選ばれ、イギリス政府より大英帝国勲章第五位(MBE)を受賞している。地球に貢献する企業に勲章を与えるという事もイギリスという国が伝統あるものを重視しながらも、それを駆使し新しい文化を前進させていこうという文化への「まなざし」や国民性を学んだ気がした。
そういえばフェアトレードはイギリスのリバプールが発祥で、日本では熊本が世界で1000番目・アジア初のフェアトレード都市に認定された事は以前にも書いてご承知の事だろう(働きながら書いているので中々動けないが、日米だけが遅れていてイギリス発祥でカナダなど各国ではカリキュラムに組み込まれているメディア・リテラシーを元出版社として勉強追求出来たらと。司馬遼が「生まれ変わっても記者をやりたい」と言った気持ちは解る)。
話をイギリスからピープルツリーに戻そう。
サフィアさんは13歳の時にパート(アルバイト)を始めたが、特に子供の時でも働く事に疑問を感じたり嫌だと思った事も無かったとのことで(もしかして外国人ってそうなのかな?とここで感じた。)ただフェアトレートを始めるにあたって、様々な国を回った時に14時間とか児童労働している子供達の働いたお金が家族の生活費に回ってしまい、自分の手元には殆ど残らず教育も受けられない現実がある事をお聞きする事が出来た。
元々サフィアさんも元出版社で働かれていて、25歳の時に自分のお金を世界的に良く使いたいと、行動に移されたとの事だ。
当時はフェアトレードに類似されるものとして食品には多少あったが、ファッションや可愛い雑貨が無く様々な国を回り、視察を重ねられたとのこと。
6ヶ月ごとのタイミングで商品の入れ替えを行うノウハウやそれを続けていった結果、現在直営店3店舗の他に400店に卸しているとのことでピープルツリーのHPでも、誰もがつい自分の住んでいる地域のお店しか見ないがかなり大規模なフェアトレード活動を展開している模様。
又「直営店を持つと生のお客様の声を聞ける事が助けになる」ということで、それを聞いた時にただ買い物をするのではなく店員さんと品物の話をして共に良くなっていければ良い事を学べた(又、店側としても絶対揺ぎ無い自信を持ちながらも、聞く耳を持たねばならない事を。)。自分もピープルツリーの店員さんに何気にフェアトレードを教わり・熊本を教わり・今日の講演を教わったのだから。
更に活動は留まる事を知らず、フェアトレード発祥の国・ロンドンに事務所を開き、東京とロンドンで80人のスタッフ、世界各国4000人の職人さん達に支えられているという。その中で鮫島さんも同じ事を言われていたが、丁寧に作る事のノウハウを教える事(気持ちではなくて技術的問題だった事)から、1つの品質ミスでどうなるか?解ってもらう為に職人のリーダーを日本にお連れして学んで頂いているとの事だった。だったら私達にも足りないモノがあったら外に出て学びに行かねばならない事もあるだろう。
又、この日はサフィアさんはオーガニックコットンの自社ファッションで講演されていたが、凄く伸び伸びとした自由な服装で、動き易く実用的な服だと思った。着飾るのは公的な場で良くて、日常では良い物を長く使うと言われるイギリス式の考え方を垣間見る事が出来た一瞬で、ジーンズもLeeという有名ブランドメーカーとコラボレーションして作った品物とのこと。
昨今風のストレートなズボンで細身のシルエットが格好良かった。
ジーンズっていうと男にとっては労働者やオタクのイメージ(自分は中途半端なのでオタクにもなれない)が多かったり、ロックやパンクなイメージしか無かったがシルエットをキレイに映し出す上下の合わせ方を学べた気がした。
お洒落の基本は模倣からという。
ただ、お洒落で無くてもチョコレートや紅茶・コーヒーでフェアトレードをすることも出来る。
フェアトレードはエコや慈善だけではないと思うし、消費者の自分も無理もせず納得してフェアトレード製品を購入出来れば良いのではないか?とも思う。それは鮫島さんの言われた熱い正義感ではなくて、素朴な疑問から起こった気持ちだったという事に通ずるのではないか?
あとフェアトレードに限らず、こういう事を知ろうとする事・伝える事の姿勢が大事なのだと思う。
昨年、ピープルツリーはWFTO(世界フェアトレード機関)の初めての認定ブランドにもなったそうだし、現在、お隣の韓国では政府主導の下、フェアトレードに力を入れ始めており、政府から助成金も出る中で、フェアトレードはフェアではない競争の中で競争をしていかねばならないので力強い支援でもあるという、その中で日本と韓国での起業や経営の相違点をサフィアさんから私達に教えて頂けた。
果たして日本はフェアトレードだけに限らず弱者に対しどういう動きをするのだろうか?
全体を通してサフィアさんのお話の中に出てくるいくつもの「キーワード」を聞く度に自分の中のインスピレーションがもの凄く触発されるのを感じ、次のビジョンが描けた。
今回本気でメモを取って勉強をしていて何故筑波大学が鮫島さんとサフィアさんという、同じフィールドなので全く対極という訳ではないが、聴く側が聴講を比較出来るようにして下さったか?ご配慮を感じる事も出来た。
サフィアさんからキーワードとなる言葉からインスピレーション導き出し、鮫島さんから現状とか不撓不屈・至誠の精神・現地での実践のお話等・今回聴講し、学ばさせて頂いた事を100年後の子供達の為みたいな気持ちで次世代に拡め、学んだ事をきちんと実践していけたらという私の考えに同起した。
会場には高校生も来ており挙手で質問をぶつけたり(若いのによく出来るなあ~!!と驚いた)、今は教科書にもフェアトレードという言葉が載っているらしいので、今後が、モノ凄く楽しみだ。
この会場に聞きに来た中から未来の鮫島さんやサフィアさんの様な、いやそれを超えていくような人材が育まれていけば良いと思う。
最後の質問コーナーの中で匿名で書いたサフィアさんへの自分の質問が読まれた時には本当に訊きたい事が訊けて本当にラッキーだった。
同じ元出版人としてどこにPR活動の重きを置いているのか?の質問だった。
長くなるのでここには書かないが、今これをまとめているうちによく咀嚼出来始めたので、もう少し、サフィアさんの言われた意味を更に考えてから自分で実践し学ばなければいけない、その時初めて、サフィアさん達の意図する所がより深く理解出来るのかなと(同じ出版人として考えれば考える程今も理解が深まりつつある、あの時は前日までの仕事でクタクタだったし、メモする事に必死だったが、大切な事へのヒントを残して下さった気がする。かなりの所まで咀嚼出来たが・・・。)
又、質問コーナーで鮫島さんが言われた、ファストファッションに疑問を持ち、どうしてこう起業しようと思われたか?について、「自分が生きている世界が全ての世界じゃない」と言われた事は、業種・職種に問わずどんな事にでも通ずる事ではないだろうか。
少しプライベートな事を書くが、学校を出てずっとその職場に居たのでは解らない事もある、文部科学省へ出向になった同期が、「外に出てみて初めて、10年前、君の言っていた意味が解った」と言っていた事を思い出した。
大した事は言ってない、消費者の心情を伝えただけだ、民間から来た自分を6大学の更にトップクラスの中に放り込んで異業種交流させる事で学校出立ての新人達に学ばせようとした人事の育成とそれを受け止める彼等の懐の深さが素晴らしかったのではないかと私は思っている。私も彼等や先輩から得る物事があったし、その方達から教わった事を基本にし、その基本は、今でも次世代達に伝えている。
「一生同期だ」と約束してきた事に変りは無い。
そんな次世代達へ両講演者の高い志と筑波大学の人材育成という「Right Thing (正しいこと・すべきこと)」する姿勢を伝えていこう。
自分の知らない違う世界は絶対にあるものだ、
出版社の頃の社長が言っていた、「複眼を持て」と。