家の空気が重い事はなんとなく気がついていた。
両親と子供達で過ごす事は少なかった。
祖父母と子供達。
父もしくは母と子供達。
いつしかそれが当たり前になっていた。

母は厳しい人だった。
ある日、幼稚園の鞄を今に置いたままにして遊びに出かけた。
帰ってみると、鞄は外のゴミ箱に捨てられていた。
いらないから置きっぱなしなんでしょ。
そういわれた。

父は優しかった。
夜1人でトイレに行くのが怖いと言うと、ドアの外でずっと歌を歌ってくれた。
毎晩、寝付くまでお話をしてくれた。
色々なところに連れて行ってくれた。

そういえば、母との会話は殆ど記憶にない。
今なら分かるのに。
当時は気がついていなかった。

割と裕福な家庭に生まれた。
欲しい物は何でも買い与えられた。
体の弱い兄がいて、健康だった自分には関心はあまり貰えなかった。

子供の頃の記憶は非常に曖昧なものしかない。

辿って行って思い出すのは、兄が寝ている部屋に飾ってあるクリスマスツリー。
埃が立つから入ってはいけないといわれた。
ピカピカ光る電飾をドアの外から眺めていた。

指しゃぶりが癖だった。
裁縫で使う面のロープの結び目をいつも持ち歩いていた。
小学校中学年まで指しゃぶりは続いた。
そのせいで歯並びが悪くなった。

本を読むのが好きだった。
絵本があれば何時間でも一人で過ごせる。
何時でも何処でも本を読んでいた。
指をしゃぶりながら。

いとこも沢山いた。
犬も飼っていた。
色々な遊びをした。

一番幸せだったころ。