一人の青年は絶壁にたっていた。
今しがた起きたことについて整理する時間が必要だった。
神からの啓示
民衆に伝えなければならない
その時が来たのだ。
そして、自分がその役目に選ばれた。
正確には自分の肉体を媒体として、
神の教えを人間に伝統する。
どれだけ裏切られ、ひどい仕打ちを受け、人間の残虐性を一線でみてきても、
尚、人を見捨てなかった神の甚大さ。
青年は感動した。
なんと尊いことだろう。
素直にそう思った。
無神教でありながらも、
人間の生き方というものを漠然と考えて生きてきた青年にとって、この出来事は全ての答えを明確にし、真理を知り、自身の天命を得た。
神ですらも予期できぬ事がある。
それは争いの歴史が証明し、
今尚絶えず行われている同族での殺し愛が証拠である。
殺しが神への歪な愛の伝え方となり、
それに連なる新派が生まれた。
だからこそ、
神はこの青年を世を導く預言者に選んだ。
宗教から離れ、
小さな個としてのコミュニティーで自身の在り方を考える。
些細なことを幸せだと感謝できる純粋な青年を選んだ。
しかし、神の思惑はまたも予想外に動いた。
青年は純粋が上に、事の偉大さを抱えきれず、
重役に心を病んだ
なぜ自分が選ばれたのか
青年には理解ができなかった。
ただ伝えること
それが自分の人生の天命ならば
自身の個の考えはどうなるのか
青年にとっては
自分のエゴを守ることが大事に思えた
思惑がはずれた
純粋が上に、善悪を考えてしまった
そして、
悪の道を選んだ
ただ青年にはそれが善の道であると信じて疑わない
自由意志が与えられたおかげで感謝をしった
自由意志が与えられたおかげで恥ずかしさをしった
自由意志が与えられたおかげで違いをしった
自由意志が与えられたおかげで妬みをしった
自由意志が与えられたおかげで善悪ができた
自由意志が与えられた人間は正義の名のもとに
殺し合い、力で押さえつけ、己の主張を通した。
青年は落ちた
神の啓示が命令と捉えてしまい
あえて反発してしまった
無垢な青年に与えられたエネルギーはつよく
邪心を纏い魔がついた。
また1つ破滅の歴史が生まれる。