「まったくだまったくだまったくだ」
彼はこの狭い部屋の同じところを行ったり来たりしながらかれこれ30分ぼそぼそと呟いてる。正直煩わしい。構ってほしい。何がまったくなのかを聞いてほしい。という気持ちが隠しきれていない。ちらちらちらちらとこちらを盗み見ては呟き続けている。本当に煩わしい。これがまだかわいい年頃の女性だったらまだいいかもしれない。わたしも少なからずどうしたんだい?と尋ねる気は起きたかもしれない(自身の性格上、尋ねる気が起きるだけだろう)。ただ、現実に、目の前をうろちょろしているのは50過ぎのはげちょびんだ。波平のファンですと頭皮が公言しているメタボリックのおっさんだ。
「まったくだまったくだまったくだ」
こっちがまったくだよまったく。あの残り髪の毛を引きちぎってやりたい。という怒りが心からあふれ。どんどんと想いが強くなる。
そこでふと面白いことが思い浮かんだ。