プロアスリート向けの記事です。私はケニアのキプチョゲ選手のように走ることができないので、彼の走動作の中で何が起きているのか?ということは想像することしかできない。
一方で、陸上競技の世界記録保持者たちには、「力の凝縮と放出」という力(エネルギー)の原理がそなわっていることを証明することはできないが、その原理が備わっていると確信している。
キャプチュゲ選手のランニングフォームのスロー再生は何度もみた。ランニング動作を実感することは出来ないが、関節の動きは見ることで理解することができる。接地直後と離地直前に股関節の内外旋が切り替わる。この切り替わりの瞬間に何が起きているのかを想像すると、凝縮した力(エネルギー)が放出されているようにみえる。
言い方を変えれば、竹がしなっているようにも見えるし、脛が素早く真っ直ぐに前方へ倒れ膝を抜いているようにも見える。「しなる」という表現は、凝縮。「抜く」というのは放出。どちらも的外れではないが、表現が満たされていない。この表現を使ってランニング動作で意識的におこなうことは技術になりうるが、反面、故障の危険性をはらむ。
凝縮「しなる」からきっかけがなければエネルギーは放出されない。凝縮がないまま放出「抜く」と自重で脚をつぶす。股関節の切り返しトレーニングをはじめたばかりの選手は、脚が抜けるようで怖いという。これは股関節の切り返しがコントロールできず、力(エネルギー)のやり場にこまっているような感じに似ている。
おそらく、キプチョゲ選手は意識的に脚の動作をおこなっていないので、彼のランニング動作を実感するためには、骨格の位置、関節運動の方向を同様にし、条件をあわせなければならない。そうでなければ筋肉が作用している状態が異なったままだ。力(エネルギー)の原理を理解している選手は、「しなり」「抜く」技術は意識的におこなうことなく、自動的におこなわれているのではないだろうか。
「力の凝縮と放出」の仕組みは、骨格の位置、関節の運動方向、筋肉の作用などの総合作用により起こる。これを体で実感する方法として、いまのところ股割り動作で股関節の内外旋の切り返しトレーニングをおこなう以外、思いつかない。おそらく、実感を得るに至る人というのは限られてくると思うが、ぜひ技術にとどまらず、体に備わっている原理を覚醒し、自分自身に挑戦して目標を達成してほしいと思う。


