以前、ハンマー投げの室伏重信先生のところに伺ったとき、中京大学陸上部の練習をみながら、欧米人と日本人の骨格位置について伺ったことがある。先生は、「欧米人の骨格位置にトレーニングすることは可能」だとおっしゃっていたが、そのことが最近ぼんやりとわかりかけてきた。
また、自然科学者の伊沢紘生先生は『生命というものが本質的にもつ融通無碍な混沌さをベースに、動物種のもつ優れた感覚と、脳のもつ記憶や経験、さらにその上に、個を越えた集団のもつ特性・・・などなど、あまりに多くのことの相互作用の上に「動物の身体の状態」があるわけですから、さらにそれを極端に複雑化した「ヒトの身体の状態」と、 そして現代の我々が置かれている「人間の身体の状態」がある 』とおっしゃった。
東日本大震災後の仙台から石巻を伊沢先生の車で案内していただいているときに、「自然科学の世界にSimple is bestという格言があります。ある事象に対して何故を問うとかく簡単に説明ができればできるほど真実に近いという意味ですが、その際にはKey wordが必要です。Key wordこそが物事の本質だということでしょう。」そして私は、Simple is bestというアドバイスをいただいた。
速く走る、遠くに飛ぶ、高く飛ぶ、遠くへ飛ばす、などの世界記録保持者たちの肉体は、真っ直ぐで美しい。真っ直ぐで美しい肉体を持たぬものたちは、彼らの華麗な動きに魅せられ、憧れ、技術を駆使して彼らの領域をめざす。しかし、技術で補う動きと、真っ直ぐで美しい肉体から発動される動きは、本質が異なる。トレーニングすべきは、肉体。トレーニングは肉体から発動される動作の質を高めていくことが大切だ。