健康に関心の高い知り合いから、個人的にみてほしいといわれた。来院されて、問診票に記入をしてもらうと、人体図の腰の辺りに印がされている。話を聞いてみると、10年前から腰の治療を受けつつ、自分でも姿勢を気を付けたり、腰痛の原因を考えたりしているが治らないそうだ。もしかしたら、趣味のお琴をする際に、楽器に対して正対しない姿勢が良くないのかもと、趣味を手放そうとしているようだった。
腰痛で悩まされるまでには、フルマラソンを走った後の膝痛、テニスのときに膝痛、内科の手術歴があった。徒手検査をおこなうと、見た目には姿勢がよいが、脊柱では疼痛逃避姿勢が確認できた。症状が10年以上も続いているので慢性化し、腰椎の可動を制限している。症状が慢性化して長期に及んでいる状態は、関節の制限を解除することが難しい。
このような場合は、腰に症状を出していたとしても、別の箇所の原因が複数重なり合っていることが多い。徒手検査を入念におこなうことが大切だ。徒手検査で原因を探りながら施術を進めていくと、腰の運動を制限している複数の原因が浮かび上がる。そして、原因を一つ一つ処理していくと、今回の要因に辿りつく。
なんとか、今回の要因に辿りつき、腰椎の可動制限をおおむね解除できた。本人は、痛みがない状態で滑らかに腰を動かすことができるようになって喜んでいるが、再度、徒手検査で確認をしてみると完全でない項目がある。このような項目を放置すると、再発する可能性が高い。再発を予防するために必要な運動療法をおこなうことが必要だ。運動療法は、正しい感覚の入力をし、正しく運動で出力できるようにすることが大切だ。
最後に趣味のお琴の姿勢を見直した。腰痛による疼痛逃避姿勢により、腰に負担がかかる姿勢が身に付いている。正しい姿勢を身に付けていくことで、楽しく趣味を続けることができるはず。正しい姿勢とは、その姿勢が頑丈で、安定していて、すぐさま次の動作へ移ることができる姿勢だ。正しい、感覚入力、運動出力を繰り返しおこない、正しい姿勢を身に付けたい。