昨日の中心軸感覚の話のつづき。
40~50代女性が訴える症状に、身体の不調や骨格位置のズレや捻じれなどについての相談が多いが、中には「膝がかみっていない」「股関節がはまっていない」などの外観からわかりにくい訴えがある。原因は、下肢のアライメントが整っていないこと、筋肉や関節の連動性が正常でないこと、などが考えられる。
膝や股関節が抜けたような感覚、自分の思い通りに動かせない感覚というのは、それらの箇所の感覚が鈍くなっている。程度によっては、感覚がなく関節をどの方向に動かしてよいか、あるいは、筋肉をどうやって収縮させてよいか、わからない状態になっていることもある。身体の不調や骨格位置のズレや捻じれなどの問題についても著しく感覚が低下しているケースが多い。
身体感覚が低下している場合は、アライメントが整っていない状態、筋肉や関節の連動性が正常でない状態に対して、徒手療法でそれを阻害しているものにアプローチし、アライメントを整えることができる状態にする。そしてアライメントを整え、筋肉や関節の連動性を正常にした上で、運動療法で感覚を目覚めさせ深部感覚を育てていくのが効果的だ。
例えば、股関節の外旋運動が苦手で外旋可動域を広げたい場合は、下肢のアライメントを整え、筋肉や関節の連動性を正常にした上で、股関節の外旋可動域を広げる。股関節の可動域を広げるには筋肉を伸ばしたり、やわらかくしたりする考え方一般的だが、実践で使える可動域を手に入れるのには深部感覚が欠かせないのだ。仮に下肢のアライメント、筋肉や関節の連動性をアプローチしないまま筋肉にアプローチしても「膝がはまらない」「股関節がはまっていない」状態になることが多い。
股関節の外旋が苦手な場合は、股割りやスクワット運動がよい。股割りは股関節の運動方向の感覚を養うのに優れている。スクワットは股関節の基礎的な感覚を養うのに優れている。股関節の可動域を広げるには、イチロー選手がやるような腰割りや四股がよいのではと考えがちだが、スクワット運動が正確にできるようになってから徐々に可動域をあげていくことが重要。腰割りや四股などは、股関節の基礎的な感覚が養われていない段階でおこなってしまうと、加重がかかる分、不適切な運動入力になってしまう。そうすると、腰割りをやればやるほど下肢のアライメントに捻じれをつくることになるので要注意。
さて、中心軸感覚は、下肢のアライメントが整い、筋肉や関節の連動性が正常になると、内部環境に芽生え始める。逆に中心軸感覚が芽生え始めると、下肢のアライメントのズレ、筋肉や関節の連動性のひっかかり、などの細かな状態が感覚としてわかるようになる。さあ、ここからが本番なのだ。
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