2008年11月17日
もう二日で第五回骨盤おこしセミナーなのに、今さらなんだが、第四回骨盤おこしセミナーでのこと。
いわゆる「古武術介護」の技術である「添え立ち」についての質問があった。
「添え立ち」というのは、長座(両足を前に伸ばして座っている姿勢)の人を、ひとりで背後から抱きかかえて立たせるもの。
前の講座で、介護をやっている人が「添え立ち」を見せたことはあったが、そのときは当事者のより良い腰の構えなどの指導だけで、Takahiroさんがどうやるかを見せたわけではなかった。
今回はTakahiroさんならどうやるか、ということで大変興味深かった。
甲野先生系統の武術を応用した介護術でも、それぞれの工夫や、施術者の状態でいろいろなやり方がある。
現在の甲野先生は後ろから腕を回して(この回し方にはいくるかコツがあるが省略)、相手の背中にピタッと柔らかくくっついてただ立ち上がるだけというものだ。
ある意味これが現在の先端で、自分ひとりが立つだけで相手も立ち上がっているという感じだ。
しかし、当然のようにこれには技術がいる。ただそう思えばできるというわけにはいかないのだ。
そこで武術を応用した介護術の顔である岡田慎一郎さんは、講習会では自分が後ろに倒れることを利用して相手を立たせるバージョンを紹介している。
Takahiroさんのアイデアは、甲野先生的にそのまま立ち上がるというもの。
まずは施術者は骨盤をおこしてしゃがみ、相手の背中から腕を回して胴体を抱く。
このときの抱き方は「赤ちゃんをだっこするように」柔らかくすること。
相手に密着するが、ここで腹圧をかけてさらに密着する。
そしてすっと立ち上がると、相手はフワッと立ってしまった。
ここでTakahiroさんが、骨盤おこしらしい提案をした。
それは長座している人の骨盤もおこしておくと、相手も動作がしやすくなり、立ち上がりやすいというもの。
相手の脚の片方でいいから、膝を少し曲げて外側に開くようにする。
こうすると股関節が動きやすくなるので、骨盤も前傾しやすくなる。
そこで腹圧をかけて相手に密着するとき、相手の背中を少し押し前傾させるようにする。
つまり自分の骨盤と相手の骨盤の角度を揃えるようにして、立ち上がるということであった。
この相手の「骨盤がおきやすくする」という発想は大変興味深いものだった。
仰向けに横になっている相手の上体を起こして長座姿勢にする「上体起こし」のときも、まず相手の膝を曲げて股関節が動きやすくしてからやるなど、応用範囲は広い。
このセミナーの後、甲野先生や岡田さんの介護術を見る機会があった。
すると甲野先生は「添え立ち」で相手の肩あたりに頭を密着させるとき、前に押すようにして相手の上体を前傾させていた。
また岡田さんは椅子から立たせるときに、相手の仙骨に当てた手をぐっと押して骨盤を前傾させてから立ち上がらせていた。
このほかにも、相手の骨盤を前傾させるような動作が要所々々でいくつも見られた。
いくつかは意図的に、多くは無意識的に動きやすい動作を求めてそうなっているようだった。
骨盤おこしの説く動きの原則から見ることで、これまで見逃していた動きが見えてくることがとてもおもしろいことである。
しかもそれらは、うっかりすると説明からも洩れてしまうし、学ぶ側も見逃してしまうようなものであるが、それこそが「コツ」の中心部分であったりするわけで凡人であるわたしは「知っていると知らないでは大違いだなあ」と思った次第である。