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インフレは素晴らしい。インフレを起こせばすべて解決だ。と勉強不足のリフレ派の人たちは叫んできた。それに乗っかった安倍首相と黒田日銀総裁は金融緩和に財政の信任に傷をつける政策で円安・物価上昇を起こしてみたものの国民の生活はちっともよくならなかった。
日本がデフレに苦しんでいた(ということになっていた)時代に海外の中央銀行の「インフレターゲット/インフレ目標」が素晴らしいという議論が盛んにされた。だが、ユーロ圏にしてもアメリカにしても、あるいはイギリスにしてもインフレターゲットは達成されていないのが現実だ。特にユーロ圏ではデフレの危機が言われている。
その原因は何だろうか?もちろん経済の停滞も一因の可能性がある。だが、近々のインフレ率低下の原因はまずは原油安である。あるいは、コモデティ全般の価格が下がっていることだ。これは世界経済の成長が予想よりも停滞しており、需要が不足していることがその一因であるが、同時にアメリカでシェール革命がおこり原油並びに天然ガスの採掘コストが圧倒的に低下してきていることもその大きな要因である。
生産性向上による物価下落という、これは消費者にとっては悪くはない話だ。
日本やアメリカ、アジア諸国・西欧諸国は原油を輸入に依存しているのでこのポジティブな効果は大きい。当然、ガソリンなどが安くなることで実質ベースの所得は上昇し消費者は同じ(名目)所得でもより多くの消費ができるからだ。
ところが、欧州中央銀行はこれに慌てふためいて量的緩和についに踏み切った。あ、まあ黒田日銀も名目上はこれを追加緩和の理由にしたわけだが。消費者が原油安の恩恵でさらに多く消費をできるというメリットを享受できるはずなのに、インフレ率が低下するとして金融緩和を行おうとしているのである。もちろん、金融緩和をしたところでインフレになるかは疑問も多いだが、緩和によって物価を無理やり押し上げることができたならばそれは消費者の実質ベースの所得減を意味する。
こう考えると、インフレターゲットとやらは何のために存在しているのかわからなくなる。インフレ低下が消費者にメリットをもたらはずなのに、それが大問題だと騒いでいるからだ。中央銀行も政府も何のために存在しているのかさっぱりわからないのである。