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原油安の恩恵を阻害しようとしている中央銀行について先日は書いた。
世界中の先進国のインフレ率が低下している。何も最近始まった現象ではないアメリカや日本では1990年代からインフレ上昇率の伸びが鈍化しているのだ。なぜなのだろうか。
以前紹介した
ように、サービス価格は日本でもそれほど低下していないのが現実で(アメリカではこの分野がインフレ押し上げ要因になっている)、IT関連の製品や輸入されるような財の価格が低下しているのがインフレ上昇率が鈍化(もしくはデフレ状態)している原因である。
IT関連の分野は技術革新が激しいのでこの分野のモノの価格がどんどん下落しているのは容易に理解できる話だ。そして、昔に比べてはるかに安価な価格でパソコンにスマホ。タブレットなどを購入できるようになった。(昔はスマホなどなかったが。笑)
もちろん、IT関連のみならず家電製品もだ。こちらのほうはおそらく新興国の台頭の結果により安い労働コストによってより安価な価格で生産できるようになったことが大きいだろう。また機能がすでにかなりアップしてしまったのでこれ以上、新しい機能を付ける必要がなくなってきているというのも先進国よりも新興国で生産が行われるようになっている原因だろう。
いずれにしてもどちらも消費者にとっては多大なメリットをもたらしたことはいうまでもないし、数年前ならともかく円安不況に苦しむ今の日本人ならばたいていの人が理解できる事実だと思う。
なぜ物価が上がらないのか。それは世界市場が一体化しIT技術の進歩によって価格の透明性が増すことなどによってより自由で競争的な市場が実現しているからである。そして新興国の台頭によって多くのモノはより安い労働力によって生産されるようになっているからだ。
基本的にこれらは消費者としてのわれわれにとっては大きなメリットである。だから、我々は実はデフレ(あるいはインフレ率低下)によるメリットを享受しているのだ。(あるいは、してきたのだ)。誰がどう考えても20年前に比べて我々の生活は格段に便利になっている。
それがいつのまにかデフレ(低インフレ)のせいで経済が成長していないというやぶ医者の診断のもとにインフレ政策が実行されてしまった。その結果として物価は上昇し実質賃金は目減りし我々の生活は苦しくなっているのが現状だ。
成長に関しても先日書いた
ように生産年齢一人当たりに直せばかなり優秀な成長率なのだ(一人当たりでもそんなに悪くない)。
格差や財政という問題をおいておけば、デフレや低インフレによる物価下落(安定)を我々は享受してきたし、実は経済成長も悪くなかった。これが現実なのだ。なのに、なぜか、「日本は20年にも及ぶ大不況に苦しんでいる」という誤った症状の認識のもとにインフレを起こせば経済が大復活するという誤った治療方法に基づいて大量の薬物が投与されているのが現実といえるだろう。
もちろん、これは日本だけの問題ではないユーロ圏でもアメリカでも同じようなことが起こっている。
世界経済がどのような結末を迎えるのかと想像すると恐ろしい限りである。