円安で貧しくなる日本 | ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドン・東京そしてNYといつの間にかいろんなところを転々とそしてまた東京に。海外なんて全く興味なかったし今もないという予想外の人生でした。今は東京に戻りしばらくお休みしていましたが少しずつ再開してみようかと思ってます。よろしくお願いします

アベノミクスは大成功です。これから賃金も上がります。輸出も増えます。と政府とアベノミクスで恩恵を受けている一部大企業は大本営発表を繰り返す。

だが、多くの人がご存じのとおりアベノミクスによる円安で物価が値上がりし生活が却って苦しくなっている人のほうが多いのが事実だ。名目賃金は平均では上がっているが(いやそれすら上がってない人/業界も多い)、 実質賃金は低下が止まらない。

円高が日本経済が不調の原因だといわれ続けてきたが、僕は一貫してそうではないといってきた。たとえば、以前こういうグラフを紹介した。




上のグラフにあるように2000年以降、日本のGDP成長率は主要国の中でも低い。が、一人当たりで見てみるとほとんどの国と大差がない。もっと見てみると、生産年齢人口一人当たりでみるとトップクラスである。

(過去記事 日本がそんなにダメなわけじゃない  より グラフはデレバレッジと経済成長 より)


このグラフは2000年から2010年までのものだが一人当たりのGDP成長で日本がそれほど劣後していたわけではないことがわかる。我々は本当にそんな不景気な状態だったのだろうか?

人口減少が日本の停滞の一因ではあるが、我々にとって重要なのは経済成長や豊かさを一人一人が実感できるかなのだから、経済全体が人口減少によって縮小しても一人当たりが豊かになれば別に問題はない。

そして、今や少子高齢化はコンセンサスなので予見される程度のペースで少子高齢化が進むことには何の問題もない。(もちろん、ねずみ講である財政と社会保障には重大な問題を及ぼすが、それについては今日は論じない)

だから、我々がいつまでたっても不景気だといっているのは、過去の栄光が忘れられないせいなのか、人間なら誰しも持つであろう現状への不満を不景気のせいにして慰めているのか、あるいは世界的な現象である格差の拡大によって先進国間でも極めて優れた経済成長を実は成し遂げているのにその恩恵を受けられていない人が多いというどれかなんだと思う。

そう考えると、「不景気が永遠と続いている」というのはもはやひとつの枕詞みたいなもので、世界経済がどこも停滞する中で政府がそんなグチにまじめに対応する必要はないのが本当のところだと思っている。

前置きが少し長くなったが、そんな中で安倍政権は経済を立て直しますと宣言し、国家財政の信認に傷をつける数々の政策によって円安を進行させている。もちろん、安倍政権の政策だけが原因ではなく、相対的に好調なアメリカ経済、もはや潜在成長率はゼロ以下のようにしか見えない日本経済という力関係で円安が進んでいるのだが。

その円安で多くの人が豊かになったかといえばそういった実感はないというのが現実だろう。こんな調査結果もあった。

世界19位に低下=日本の1人当たりGDP―13年

内閣府は25日、ドル換算した2013年の国民1人当たりの名目GDP(国内総生産)について、日本は経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国中、19位だったと発表した。円安進行に伴い、ドルベースでの金額が縮小し、12年の13位から大きく順位を落とした。
(時事通信より引用)

ということらしい。

海外旅行に行くのもかなり高くつくようになってしまった。輸入物価は軒並み値上がりだ。ちょっとしたぜいたくを楽しむこともできなくなったのではないだろうか?日経平均株価は値上がりしたといっても円安のせいでドルベースで見るとたいしたことはない。

かなり多くのものを輸入している日本経済にとって円安はそれほどメリットはないのである。

幸いにして原油価格が大幅に下落しているので今年はそれほど物価は上がらないかもしれない。幸いなことだ。だが、円安にして物価が上がれば豊かになれると宣言した安倍首相にとっては皮肉なことだろう。まあ、原油安もアベノミクスの成果にされるのだろうが。笑

円高で?あるいは不景気で我々はそんなに貧しくなっていたのだろうか?改めて問い直すべきだと思う。そうしないとまた「○○ノミクスでこの不景気をなんとかします。」と間違えた処方箋を持ったヤブ医者に間違えた治療をされかねない。円安で日本は貧しくなっている。少なくともこの事実だけはきちっと認識したほうがいいと思っている。