医療は成長産業になりえるのか? | ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドン・東京そしてNYといつの間にかいろんなところを転々とそしてまた東京に。海外なんて全く興味なかったし今もないという予想外の人生でした。今は東京に戻りしばらくお休みしていましたが少しずつ再開してみようかと思ってます。よろしくお願いします

これからの成長産業はなんでしょうか?と問われると多くの人が“医療とか介護じゃないの?”と答えるのではないだろうか?たしかに高齢化によって需要が増えることは間違いないだろう。が、本当にそれが国家を発展に導く成長産業になるかといえばまた別の話だろう。

医療が市場原理主義に犯されている!と一部の人からは揶揄されるアメリカでさえ医療という産業の生産性はむしろ低下傾向にある。(参考記事→医療は成長産業か? )もともと医療も介護も労働集約的な産業である。その上に様々な国家による規制のせいでその生産性は全く向上していない。製造業その他の産業のように生産性向上によって人々が豊かになれるというような産業とは少し違うわけで、介護産業に従事する人たちも看護師にしても医者でさえもその給与は重労働の割には低いといわざるを得ないだろう。

そんな産業をこれからの成長産業であり雇用を大量に生み出してくれると言って喜んでいるのだから民主党、いや日本政府はよほどおめでたいといわざるを得ない。規制でがんじがらめにすると同時に税金を大量に投入して既得権益者たちを喜ばせているだけだ。消費者たる国民はその支出の割りには満足なサービスを受けられていないし末端の労働者は生産性向上の停止や法定料金によって賃金が安く抑えられて苦しんでいる。

まあ、一般論としてこの辺りで僕のようなちょっとかじった人間なら誰でも言えることだ。では具体的に何が問題なのか?今日紹介するのはこの一冊である。



成長産業としての医療と介護―少子高齢化と財源難にどう取り組むか (シリーズ現代経済研究)

日本の医療システムは非常に効率的で・・・。という人も中にはいる。たしかにそういう面もあるだろう。が、一般に言われるようにたとえば平均寿命の長さは必ずしもその医療システムが優れていることを意味しない。
たとえば、国民が健康であるにもかかわらず他の先進国対比で異常に多い病床数。在院期間の長さ。来診回数の多さなどがその理由としてあげられる。また高額医療機器がいわゆる町医者にまで普及していることも異常であるし、地域間の医療格差の大きさもそういえるだろう。

まず第一章ではこの辺りの問題を数字を使って分析しあるべき医療制度の改革を取り上げる。より効率的な医療制度とは何か?という視点である。

当然ながら、医療保険・介護保険の問題も取り上げる。高齢者の一割負担は本当に正しいのか?医療保険の保険料に存在する地域間格差や医療保険料の定額部分の負担が多いことから逆進的になっていること。結局現役世代から資産を多く持つ高齢者世代への所得移転となっていること。などの矛盾点を数字を挙げて指摘しながら改革案を提示する。

また、日本では製薬行政にも問題は多い。これも周知の事実だろう。近年顕著になっているドラッグラグの問題にどう対処するか?そしてその行政の事なかれ主義、薬品価格を徹底的に国家の統制においていることの弊害について説く。そういえば、多くの人はなぜジェネリックが普及しないのか?と疑問に思っているだろうがそのからくりも明快に説明される。

小難しかったり数字が多すぎてよく分からない内容もあるかもしれないが、様々な角度から10人の研究者が医療・介護産業の問題を解き明かす。ぜひ読んでもらいたい一冊である。これを読めば・・・。本当に必要な改革とは何かが見えてくるし少なくとも考えるヒントを与えてくれる。ただ、税金を投入すれば医療や介護が成長産業になると考えている民主党(特にバ菅さん)の主張がいかにバカげているかがわかるだろう。

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