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先週、FED(アメリカの中央銀行)はECB(欧州中央銀行)をはじめとする主要中央銀行とのドル・スワップ協定の条件を引き下げた。欧州債務危機に対応するためだ。これでドルの資金調達に困っている欧州の銀行が少しでも楽になるようにとの配慮からきていることは想像に難くない。
ダラス地区連銀総裁のフィッシャーはこの措置に対してこのように述べた。
「市場のドル不足に対応するためだ」と。
なるほど、市場にドルが不足しているのだから、その調達を容易にすることは中央銀行の責務であるようにも思われる。
同様のことをこの前読んだ本でも聞いた。
第一次大戦後のドイツのハイパーインフレの時代だ。中央銀行であるライヒスバンクの関係者はインフレがどんどんすすむなかでこのように述べた。
「マルクの不足に対応するためにマルクを刷り続けるのが中央銀行の責務である」と。
インフレが起こり物価がどんどん高騰していく中では、たしかに人々がお金が不足しているのだと錯覚することは無理もないだろう。本当は貨幣を刷り続けることこそが物価高騰の原因であるにもかかわらず。。。
本日紹介する一冊はこの一冊だ。
ハイパーインフレの悪夢
ドイツの第一次大戦後の悲惨なハイパーインフレの状況を描いた一冊。
イギリス人でドイツ大使館で働く人々は上述のライヒスバンクの間違えた信念を鼻で笑っていた。
いずれにしても、ハイパーインフレとは悲惨なものである。人々の勤労意欲を削ぎ、享楽的な生き方がドイツを支配した。外国人はドイツにやってきては飢えに苦しむ彼らを横目に贅沢をし商品を買いあさった。(日本人もカメラを買いあさっていたらしい)
そのような悲惨な状況がハイパーインフレによってもたらされたのである。
そして、ハイパーインフレはナチス・ドイツ台頭の基盤を作りもした。
また、ハイパーインフレ下でどういったことが起こるかを学ぶこともできる。可能性はかなり少ないだろうが、そういったことが起こるリスクがあるとすれば資産防衛のためにも役立つ一冊といえるだろう。
先進国では経済が停滞している。今。多くの政治家や人々が中央銀行にもっともっと貨幣を積極的に刷るように要求している。僕自身はそのこと事態が単純にインフレにつながるとは思っていない。貨幣をいかにすろうが大して効果はないだろうと思っている。
しかし、欧州の状況がきがかりである。インフレとは必ずしも貨幣的な現象であるとはいえないが、財政が悪化した国家においては状況が変わってくる。悪化した財政を貨幣の供給によって救うとするならば、それは間違いなくインフレへの道につながる。そして、今、それが欧州で起こりつつあるように僕には見える。
国家の財政窮乏を貨幣発行によってごまかそうとした。ドイツが戦前に行った誤った政策が今まさに欧州で行われようとしている。エリートの手によって世界を救うことができる。経済を自由自在に操ることができると考える傲慢な中央銀行家や政治家・官僚達によって再びインフレの種がまかれようとしていると感じているのは僕だけだろうか?
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