ノリで浜岡原発を止めてみる菅首相 | ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

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ロンドン・東京そしてNYといつの間にかいろんなところを転々とそしてまた東京に。海外なんて全く興味なかったし今もないという予想外の人生でした。今は東京に戻りしばらくお休みしていましたが少しずつ再開してみようかと思ってます。よろしくお願いします

いきなり、菅直人首相が中部電力に浜岡原発の停止を要請した。


個人的には浜岡原発を停止するという判断は理にかなっているように思う。あのような場所に原発を建てることはリスクが高すぎるからだ。


実際、中部電力の電力発電量に占める原子力発電の割合は10%程度に過ぎないようだから、電力供給にはそれほど問題はなさそうにも思える。

もちろん、火力発電所などの稼働率を上げなければいけないだろうから、そのことによってかえって事故などが起こらないか?心配ではあるし、想定以上の猛暑になった場合にはこのことが致命的になる可能性もあるが・・・。

浜岡は御存じの通り、東海地震の想定震源域の上に建っており過去にも地盤の弱さなどが指摘されている。


浜岡は1000ガル程度の揺れがあっても大丈夫 ということになっているが・・・。実際には今後直下型の地震が起こった場合には2000ガル以上の揺れがある可能性も懸念されている。そうなると反対派が主張するように制御棒がそもそも入らないという可能性や配管の破断の可能性もある。


万が一、そのような状態に陥った場合には風向き次第では首都圏がやられる可能性はかなり高い。


以上を考えると、そもそも東海地震の想定震源域の上に原発が存在すること・もしもの場合に福島第一以上の人的被害・経済的被害をもたらす可能性があることを考えると浜岡原発を停止することは理にかなっているようにも考えられる。事態が起こる確率は高くないだろうが、起こった場合の期待損失があまりにも大きすぎるから、これは取るべきリスクではないことは明らかだからだ。(それならば、まだ福島第二を早急に運転できるようにもていくほうがましだ。と僕は思っている)


今回の福島第一程度の事故なら大丈夫と言う人もいるかもしれないが、そうなった場合でも首都圏・および東西交通の大動脈で風評被害が起こった場合の損害も考えないといけない。そう考えるならば、そもそも立地場所のリスクが高すぎる。


ただ、今回の「要請」というやり方には疑問だ。しかも、唐突な発表から推察するにこれはお得意の所詮思いつきのパフォーマンスにすぎないのでは?との思いは強い。


まず、直下型に対する懸念は出て来ず、津波対策ということになっている。しかし、それであるならば、池田氏が言うように懸念はそれほどないように 思える。


では、なぜ、そのような理屈を使うのかと考えると・・・。


政府が原発政策を推進し、浜岡に関しても安全性を認めてきた以上はすべて廃炉にせよという命令は下せないから、直下型地震ではなくて津波の懸念ということにして官僚や原子力村と取引をしたようにも感じられる。(直下型への懸念と言ってしまうと廃炉にしないといけなくなる可能性が高くなるし、そのことは過去の原子力行政の失敗を認めることにもなるからだ。)


しかも、これが「要請」である以上、受けるかどうかが中部電力次第となっている点もいやらしい。どちらに転んでも政府は痛まないからである。しかもその要請は唐突で科学的根拠に基づいた説明がきっちりとなされているかも疑問だ。

要請を断れば断った中部電力が悪いとなるし、受け入れて中部電力の株主が損をしても政府はあくまで「要請」をしただけであるから、これまた痛まない。


もし、とめた場合には燃料調達費の増加によって中部電力は2000億円以上のコスト増になるという。これは、おそらく看過できない問題で、容易に政府の要請を受けようものならば、中部電力の株価は大きく下落する可能性があるし、株主代表訴訟を起こされかねないだろう。

浜岡原発停止なら、中部電力の赤字避けられず

5月以降の稼働率がゼロとなった場合、11年度分で2000億円を超える減益要因になる見通しだ。中部電は、11年度の営業利益を1300億円と予想しているため、営業赤字に転落する可能性が高い。(読売新聞より引用)

また、政府が安易にそのような要請を出し電力会社が受けるのだとわかれば市場は嫌気し、電力会社の資金調達はますます難しくなる可能性は高いだろう。

そういった責任を「政治主導」を掲げる民主党と菅直人は取るつもりはないらしい。


このように考えて行くと、この要請は支持率回復という目的とお得意の気まぐれによるくだらない政治のゲームであるように僕には思える。また、民主党の支持者の中にいるであろうサヨク的な人々へのアピールでもあるのではないだろうか?そして、それが所詮「政府の限界」だと僕には思える。

一部のサヨクや官僚などによるリスクゼロ症候群・リーダーシップを演出したいパフォーマンス大好きな首相・しかし実質は政治主導ではなく責任はすべて中部電力に丸投げという醜い絵になっているような気がして僕にはならない。


そして、今やるべきことは人気取りのために浜岡原発の停止を要請することではないのではないと考える。


鉄は熱いうちに打てという。

そもそも、福島の事故における東電の責任は大きいが、廃炉を予定されていたものを60年まで運転可としたことなど政府の責任も問われなければならないのは言うまでもない。そして不安院と揶揄される保安院の対応や経産省と電力業界の繋がりを改めて見た方がいい。どう考えても、政府が関与したところで原発の問題を改善できるかはかなり微妙である。

東電に対する厳しい批判・世論が強まっている今のうちに政府は「電力事業における更なる自由化」と「送・発電の分離」へ向けた議論を進めるべきだろう。そして、エネルギー政策への関与をやめるべきである。原発絡みの自治体への交付金などもやめにし、それらはすべて電力会社が自ら支払うようにすべきだ。

そうすれば、原発という発電方法が本当にコストが高いかどうかを各電力会社が競争の中で判断するだろう。それでやめるならば、やめればよいし、それでも続けるのならば続ければよい。

政府がエネルギー政策に対しての判断力をまったく持っていないと同時に、政・官・財・メディアの癒着でゆがめられまくっていることが今回の福島の事故ではっきりした。さらにそのことをこの唐突で妥協の産物にも見える人気取りの浜岡原発停止「要請」を確信した人は多いだろう。


真の政治主導をめざすならば、東電ならびにそのステークホルダーに責任を取らせること。そして、エネルギー政策への政府の関与を終わらせることの二つが絶対に必要である。これを行うためには族議員・官僚・独占企業といった非常に強固な既得権益を持つ人々と戦わねばならない。しかし、それを実行することとこそが真の政治主導である。

今更(というよりも最初から)まったく期待していないが、そのような対応を民主党政権ならびに菅首相には期待したい。それとも、はやくも電力マフィアの手にかかって身動きが取れない状態になっているのではないか?


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