ギリシア債務再編を市場はどう見ているのか? | ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

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ロンドン・東京そしてNYといつの間にかいろんなところを転々とそしてまた東京に。海外なんて全く興味なかったし今もないという予想外の人生でした。今は東京に戻りしばらくお休みしていましたが少しずつ再開してみようかと思ってます。よろしくお願いします

市場では昨月半ば以降、ギリシアの債務再編の観測が出ている。

ギリシアの2年国債の利回りは昨日5月3日には一時24.5%まで到達した。

4月15日以降の各種の市場の数値を表にすると以下のとおりになる。

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表のようにCDS (クレジット・デフォルト・スワップ)やギリシア国債の利回りはどんどん上昇している一方で、ギリシア株の下落幅は5%にも満たない。また、スペインやドイツなどの株価は堅調である。

ユーロ危機のような形でドイツ国債以外のあらゆる資産が売られていた1年程度前を思い出すと市場がいかに冷静さを保っているかがよくわかる。

ギリシア国債の2年/10年のスプレッド(利回りの差)は4月11日の-3.51%から-10.25%まで急拡大しており、ギリシアの債務再編の可能性をかなり織り込んできているといえよう。

それなのに市場は今のところ比較的冷静である。なぜだろうか?

一つ目の原因はなんといってもスペインやイタリアへの波及が避けられるとの見通しが強いことだろう。実際、スペインやイタリアの株価・国債の値動きは堅調である。

また、ドイツのCDSもアイルランド救済時には60bp台まで上昇したが、今回は40bp台で大きな動きは見せていない。スペインやイタリアなどの大国を救済することでドイツ自体の財政にも悪影響が出るとの見方は小さいようだ。

また、市場は冷静さを取り戻し、ギリシアは所詮小国であるという認識が広がっていることもプラス要素だろう。

下のグラフはBIS公表の数値から筆者が作成したものだが、左側の各国の銀行がPIGS 諸国にどの程度貸しているかである。

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ギリシアに対する貸し出しの割合は非常に小さい。欧州全体の銀行で見ても11兆円弱でPIGSへの貸し出しの10%を占めるに過ぎない。また、ドイツの銀行のギリシアへの貸出額はドイツのGDPのわずか8%程度である。

1年が過ぎ市場が冷静を取り戻すとともに、スペイン以外の小国の問題にユーロ全体が揺れることはなくなってきたようだ。また、PIGSへの貸し出しの半分(ドイツだけでも14.5兆円)を占めるスペインの状態が安定しているのは市場の安定にかなりの効果があることは言うまでもない。

先週発表された数値によるとギリシアの2010年の財政赤字は-10.5%となり、当初政府発表の-9.6%を大幅に上回った。経済の落ち込みもひどい。個人的には最早債務再編は避けられないのでは?と考えている。また、市場も相当程度その可能性を織り込んでいるようだ。

個人的にはギリシアの債務再編を市場に徐々に織り込ませた上で実施すべきであると考えている。無制限の財政援助は各国の財政規律を弱め、今後の各国の財政赤字削減へのインセンティブを減退させ、新たな危機を作りかねない。また、債務再編が早いほうが当該国への経済のマイナスの影響も少ないという研究もある。

今回のドタバタの中での欧州当局者の対応は個人的にはまずまず悪くなかったのかなと思っている。

当初はパニックに陥って市場からの攻撃と決め付けて空売り規制に乗り出し事態を悪化させるというかなりの愚策も見られたが、ある程度市場の規律を守りながら、事態を落ち着けることに成功したといえる。ギリシアに最終的に債務再編を実行させれば、市場規律を大きく損じることにもならないはずだ。

早い段階でギリシアに債務再編を行わせ銀行へ公的資本を注入するという方策もあったとは思っているが、政治的には現実的ではなかっただろう。

しかし、いずれにしてもユーロの問題点が解決されたわけではない。問題解決の一つの方策である財政の統合を進めていくのはおそらく不可能に近いだろう。かといって、ユーロを放棄する選択肢を考えている関係者はいなそうだ。

東アジア共同体を作り通貨を共通化するなどというバカげた意見は論外としても、道州制をもし日本に導入するならば、同様の問題が出てくる可能性もある。将来の日本の政策へまだ継続中の欧州ソブリン危機から学ぶものは多い。


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