日本の中小企業は不利なのか? | ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドン・東京そしてNYといつの間にかいろんなところを転々とそしてまた東京に。海外なんて全く興味なかったし今もないという予想外の人生でした。今は東京に戻りしばらくお休みしていましたが少しずつ再開してみようかと思ってます。よろしくお願いします

「中小企業を守れ!」、「中小企業は大企業からいじめられているんだ!」と言われると多くの人が納得してしまう。そして、中小企業というのは保護されないといけない存在として扱われる。

たしかに、そういった面がないわけじゃない。しかし、大企業同士の取引でも、買い手はいつも上位である。競争的なマーケットや買い手の力がなんらかの理由で強い場合はなおさらである。また、大企業でもお得意様の中小企業を相手にするときには腫れ物にさわるように扱っている面もあるはずだ。(言い方は悪いが、個性的な経営者なども多いからかえってやりづらかったりするものである)

取引先企業の理不尽な要求に悩まされているのは中小企業だけではない。

もちろん、Small buisinessを優遇せよと言う声は日本のみならずイギリスやアメリカにもある。イギリスでも、Small buisinessを保護しろ、育成しろという声は強い。

日本では、90年代後半以降、銀行が貸し渋りをしている!という声のもとにき中小企業対策の名の下に数々の政策が打たれてきた。そして当ブログでは過去に何度かそういった政策の問題点を触れてきた。(参考過去記事→倒産の実態について素人ながら考えてみる②公的金融の拡大をこのまま許していいのか?

今日は、国際比較で日本の中小企業が不利な条件におかれているかをシンプルに見てみたい。

日銀ディスカッションペーパーシリーズの中小企業向け貸出をめぐる実証分析:現状と展望 から。


ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ

この表は日・米・英・独・仏の中小企業向け政策金融の規模を表したものである。

見ていただければ、わかるが、日本の額が圧倒的に多い。

なぜ、日本のみが中小企業向けにこれほどまでに政策金融で貸し出しを行っているのだろうか?あまり、説明をつけることはできないような気がしている。

その弊害を箇条書きすると、
①市場を通した適切な資源配分の阻害。淘汰されるべき企業が淘汰されない問題。そして、その結果、新しい成長産業に資源が配分されない。
②政策金融が民間金融をクラウディングアウト。
③政策金融期間による野放図な貸し出しや信用保証によるモラル・ハザード
④納税者のお金をリターンを省みずにつぎ込むことによって納税者の利益を毀損している。
⑤なぜ「中小企業」が優先されるのかという公平性に関する疑問
など上げればキリがない。

そうは言っても日本の金融機関はお金を貸してくれないんだ!という声もあるかもしれない。

しかし、同様のことはイギリスでも問題になっている。特にイギリスは銀行において寡占が進んでいて、ほぼ4行に集約されている。

また、上記の論文からの下の図を見てほしい。


ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ


日本の中小企業が多くの銀行から借り入れているのに対して米国の金融機関は一行からしか借りていない。

この辺りの解釈はいろいろあるが、一ついえることは日本の金融市場は十分競争的であるということである。

実際、中小企業に積極的に無担保で貸し出すんだ!と息巻いて参入して日本振興銀行も石原銀行も無残な失敗に終わった。

日本の銀行の審査能力は低いんだ。リスクをとりたがらないんだという人もいるかもしれない。しかし、両者を金融機関に強要すれば、審査コストやリスクをよりとった分のコストが金利に上乗せされるだけの話である。

このように考えると理屈の上でも数字上の国際比較でも日本の金融機関はおかしいから、貸し渋りするから、中小企業は金を借りれない!という主張は少なくとも成り立たないと言えるだろう。

中小企業は助けられて当然という主張の前に盲目になっていることで実は税金が湯水のように無駄遣いされている可能性があり、適切な資源配分がゆがめられているということに我々は気付いていない。何事も疑問を持つことは大切だしもっといろんなデータを調べてみる必要があるだろう。

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