地震後、まだ10日ほどしかたっていない。余震も多く原発の情勢もなかなか改善しない中で多くの人々が不安感から買占めに走ったのは個人的には仕方ないかなあと思っている。(もちろん、買占めを肯定しているわけではない)
買占めに際してある有名なブロガーが「値上げで対応すればいい」とツィートして(たしか、地震後数日で多くの人々がまだ不安にさいなまれていたときであると記憶するが)たたかれたらしい。
確かに、需要が高まった場合には自然と値段が上がることで需要と供給が調整され自然と新たな均衡点が見つかるというのが全うな経済の仕組みであり、それに対してヒステリックな反論をした人はどうかしているだろう。
しかし、同時に、多くの経済理論で前提にされているような価格の伸縮性は地震後数日から10日というような超短期では「ない」と考えるのが普通であろうから、かのブロガーの方が値上げで対応すればいい(あるいは値上げを容認すべき/小売店は値上げすべき)とツィートしたのも現実の経済を知らない発言ということができるように思う。
値段の改定にはマンキューが言うところのメニューコスト がかかるはずである。小売店の形態にもよるだろうが、そのような値段の改定、しかも、パニック的な短期的な超過需要に対応するだけの幅の値上げを小売店が容易に行えるとは思えない。
また、今回のような状況下での値上げは小売店にとっては「あの小売店は売り惜しみをしている。」「火事場泥棒的に値上げして儲けようとしている」というマイナスの評判を生み出すから実際にはそのような対応をするのは難しいだろう。
おそらくそれ以上に懸念されるのは短期的には、値上げはパニック状態に陥っている人の買占め意欲をさらに刺激して事態を悪化させる可能性も高いと推測する。
このように考えるならば、超短期的には市場機能が働かせる(もしくは自然と働く)ことによって買占めを防ぐことはかなり難しいことは容易に想像がつく。(もちろん、僕自身も冷静な人々が増え値上げによって需給が調整されればそれにこしたことはないとは思うし、それが一番の解決策ではあるとは思うけれども。)
一方で、これを「市場の失敗」と捉えて政府による介入を支持する声も多々ありそうだが、それにもかなりの違和感がある。
対応策としては
*買占められそうな商品に政府が税金をかける
*買い占められそうな商品に政府が値上げを命令する。
というものが、まず考えられるだろうか?果たして政治的にこのようなことが可能かと考えればまず不可能だろう。
また、政治的に可能であったとしても何にどの程度の値上げ(もしくは課税)を行うのか?そして、小売店がどの程度の期間で対応できるのか?値上げの効果は本当にあるのか?ということを考えるならば、実際には政府が介入しても早期には事態は改善しないことは容易に想像できるだろう。また、一部の小売店は値上げ命令などには従わない可能性も高いだろう。闇市場が登場し、事態は却って観察不可能となり悪化する可能性も高い。政府が何らかの形で買占めを監視するというような案もあるようだが、それもおそらく同様の理由から実効性に疑問が尽くし、効果的ではないだろう。
この場合は市場が失敗しているからといって政府が介入してもおそらく事態が改善しないことは容易に想像できる。
こうなってくると、やはり合理性や理性に訴えて買占めを控えるように呼びかけていくしか手はないと思う。しかし、それとて多かれ少なかれパニックを起こしている人々には効果が薄いだろう。
この短期的な買占め現象に対していろんな人がいろんなことを述べていたが、そもそもこのような超短期的な現象に対して市場機能によるすばやい調整は期待できないだろう。しかし、別に今、東京で餓死者が出ているわけでもないのだから、上記の論考を踏まえれば政府も対応できないし介入すべきでもない。もちろん、事業をやっている人には影響が出ているのは事実であろうからそこに関しては僕自身、なんとかならないかと思ったりもするが、やはり現実には対応するのは難しいはずだ。
そもそも、日本国民が蓄えた莫大な貯蓄は失われていない。震災や原発問題で円が暴落したわけでもない。日本の購買力はなんら落ちていないのだから、ほうっておけば、物不足に対応するための海外からの必要な物資の輸入はすすむはずだ。
また、震災の被害を受けていない西日本を中心とした地域からの供給も時間とともに進むだろうし、それらの地域での供給力の増強も進むだろう。(実際、西日本には物資はたくさんあるという)
また、今は価格機能(もしくは流通機能が混乱によって)がうまく働いていないが、パニックが続くようならば自然と否が応にも価格は上昇し、西に滞留している物資がより多く東京に流れ込んだり、海外からの輸入が進む形で問題は解決される可能性が高い。
そう考えるならば、超短期的なこの買占めパニックに百家争鳴する必要もない。あせる必要はないし、政府も何もする必要がないというのが結論であることは容易にわかるはずである。要は時間が解決してくれるというのが一番の答えである。(もうちろん人々に冷静になるように訴えていくことは重要だとは思っている)
むしろ、こういった経験によって災害やパニックにそなえて各家庭が食料を備蓄しておくという習慣がより一般化すれば長期的にはプラスだろう。
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