インサイダー取引を肯定し奨励する | ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドン・東京そしてNYといつの間にかいろんなところを転々とそしてまた東京に。海外なんて全く興味なかったし今もないという予想外の人生でした。今は東京に戻りしばらくお休みしていましたが少しずつ再開してみようかと思ってます。よろしくお願いします

という議論。


は?と思う人も多いと思うが、経済学的には結構ある話。金融庁のお役人が目くじらを立てそうだけど。


インサイダー取引はもちろん現在の法律下では違法であり行ってはいけないことだが、そもそもインサイダー取引を規制することは必ずしも正しくないのでは?という議論だ。※


ま、とりあえず読んでみてほしい。


個人的には一度考えて書いてみたいと思っていた話なんだけど、ちょうどいい記事があったので、まずは軽く引用しながら理由を見てみたい。(WSJ紙より)↓

Learning to Love Insider Trading

Here's a hot tip: Want to keep companies honest, make the markets work more efficiently and encourage investors to diversify? Let insiders buy and sell, argues Donald J. Boudreaux.


*インサイダートレーディングの禁止は市場の価格形成機能を歪める


インサイダートレーディングが禁止されると、市場の価格の調整が遅れる。ま、たしかにそりゃそうだ。インサイダー情報を掴んだ投資家がいち早くトレードすることで市場は適正な価格をよりすばやく探し当てることができる。

間違った価格に株価が長い時間とどまることは間違った価格で取引されるボリュームを増やし、そのことによって損失(あるいは不当な利益)をこうむる投資家を増やし、結果として市場の効率性を減少させる。


*インサイダー・トレーディングが認められれば、小口投資家は個別株を取引することのリスクをより感じ、投資先を分散させる。


たしかに、これもそうだろう。小口投資家は大口の投資家が特別な情報を持っているのではないか?と疑念を抱く。その結果、より多くの株式ならびに資産に分散投資する投資家が増えることは悪いことでないはずだ。プロの投資の世界でよく言われるのはどの株(銘柄)に投資するかではなくどの資産にどれくらい配分するかが大切ということ。小口投資家もそういった投資をしたほうがいいだろう。


*そもそも、インサイダー情報を使って売買を行ってはダメだが、インサイダー情報を得て売買する予定だったのにそれを中止することは罰することができない。


これは明らかに公平性を欠いているだろう。個人だとイメージがわかないかもしれないけど、プロの投資家ならほとんどすべての銘柄を保有している場合も多いはずだ。あの会社が・・・な情報を午後に発表するらしいと聞かされた投資家は「じゃ、朝売ろうと思ったけどやめて午後に情報が発表されてから売ろう」という判断をするかもしれない。これは立派なインサイダー情報に基づいた取引だが罰することは無理だ。


また個人的に思うのは・・・


*そもそもインサイダートレーディングはすべてが摘発されるわけではないから、その点からの不公平性という面も残る。


*さらに何がインサイダーでインサイダーでないかという判別も難しいだろう。微妙な内容のものもあるはずだ。政治家とかに金をつかませてインサイダー・トレーディングのお目こぼしをしてもらうような投資家もいるかもしれないし、グレーなのに世の中への見せしめのためにお縄になる投資家もいるだろう(日本にも居たね・・・)


*もちろん、株式市場においてはインサイダー取引はかなり厳しく規制されているが、世界中の参加者が集う為替の世界なんてどうだろう?しょっちゅう怪しげな噂やインサイダーと思しき情報で動いているような気がする。

また、金利(債券)の世界でもそういうことは多々ある。


そう考えるならば、インサイダー・トレーディングを禁止する正当性はあまりないといえるのではないか?もしくはなぜ為替や金利ではインサイダー規制がそんなに甘く株だけは厳しいのか?という議論にもなるだろう。


もちろん、インサイダー取引禁止反対論に対するよくある反論は

①インサイダーのみが儲けられるので公平性を欠く

②インサイダー・トレーディングが横行することでそのような情報にアクセスできない投資家が市場から退出し、流動性の低下などを招き、結果として市場の効率性も欠く。


などがある。


また、個人的にはインサイダー情報の獲得にのみ躍起になる投資家が増えることで正しい市場の分析があまり行われなくなったり、インサイダー情報の獲得のために政府高官や企業の幹部にワイロを掴ませる等等の汚職が横行するようになる可能性もあると思う。


これらの反論は結構強力だと思っている。だから、やはりインサイダー・トレーディングの規制は正しいのかもしれない。


それでもたとえば、社員のインサイダー・トレーディングをどの程度許容するかというのならば、各企業が個別に社内の規定などで決定し、その規定を公表させるという考え方もあるだろう。一切ダメの企業もあればぜんぜんありという企業があってもいいはずだ。もちろん、社員のインサイダー・トレーディングがおおっぴらに認められている会社の株は取引されづらくなり、資金調達において不利をこうむるかもしれないから各企業がベストのあり方を考えるだろう。


別にインサイダー取引を必ずしも政府が規制し監視する必要もないわけだ。


いずれにしても固定観念を捨ててインサイダー取引は本当に悪なんだろうか?規制する必要だあるのだろうか?と考えなおしてみる必要はあるだろう。金融庁が怒るだろうなあ。笑。仕事がなくなっちゃうから。※


また、仮にインサイダー取引が悪であり問題であったとしてもその摘発に膨大なコストがかかるのであれば、インサイダー取引の規制が必ずしも正しいということにはならないともいえる点は注意しないといけないだろう。(ちなみにコストとは効率性のみならず公平性の観点からの社会的コストも含む)


繰り返しになるが、本当はもっと議論が起こってもいい話題のはずだと思っている。


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※若干誤解を招く可能性ありと思って追加と訂正(二箇所※印)。当然、現在の法律の下で禁止されているインサイダー取引を奨励しているわけではない(2011/1/19)訂正