シンガポールの官僚制度がすばらしいだって? | ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドン・東京そしてNYといつの間にかいろんなところを転々とそしてまた東京に。海外なんて全く興味なかったし今もないという予想外の人生でした。今は東京に戻りしばらくお休みしていましたが少しずつ再開してみようかと思ってます。よろしくお願いします

シンガポールという国がある。


マレー半島の先端にある都市国家だ。一人当たりのGDPは日本よりもはるかに高い。

安い税金・ゆるい規制・日本などと比べれば安い人件費などをテコに急成長した国と言われている。


欧州でいえばさながらアイルランドのような国だろう。もしくはロンドンか。違うかルクセンブルクかモナコあたりか。ただ、人の自由はそこまで認められてないようだ。


最近、このシンガポールを礼賛するブログ記事をたまにみかける。そもそもこんなちっぽけな都市国家と日本を同列にして扱うこと自体が僕はよくわからないのだけれども。


その中でもよく聞くの官僚制度がすばらしいという意見だ。たとえば、官僚の給料にインセンティブがついている。それがすばらしいと。


だから、日本でもたとえば国家のGDP成長率をターゲットにして官僚の給料がそれに応じて大きく上下すればするようにすればいいと。


ま、たしかに、官僚の給料に対してあまりにもインセンティブ部分が少ないのはあまりよろしくないような気もする。


しかし、国家のGDP成長率をターゲットにするなんていうのはバカげた意見だろう。もちろん、GDPをあげるための施策をそのほうが考えるからだというが、国家を成長させるためにおかしな政策を立てるのが官僚や政治家というものだし、現状の国家の目標は同時にいびつな再分配政策を全うなものにするものであるはずだ。(再分配政策の是正が成長に大きく寄与するとは思えない)


国債を発行してバラまけばいいだの、増税して賢く使えば成長するだの。自給率をターゲットにすればいいだの。政治家と官僚が一緒になってそういったおかしな政策をたくさん考えたのが今の日本という国だ。


しかも、なんだか官僚がものすごく絶大な力を持っているかのように勘違いしているようだが、今の日本ではもちろん、官僚はいろいろ改革に抵抗したりもする面もあるだろう。しかし、同時に官僚が政治家の意向を飛び越えて何か画期的な改革や提案ができるわけでもない。いくら官僚がすばらしい案を持っていても族議員に抵抗されてしまえばそれでおしまいだ。


さらに言えば、短期的なGDPをあげるのだったら簡単だ。それこそばら撒けばいい。GDP連動で激しく給料が変動するようなシステムはそういった間違ったインセンティブを官僚に与えるだろう。票欲しさにそのような誘惑が強い政治家はなおさらそれに乗っかるはずだ。それにそもそも、今でも官僚の給与は原則民間に連動しているはずだ。


長期的に国が豊かになれば自然と官僚の給料もあがる。今のように国家が停滞すれば給料も下がるし(どこの国でもそうだが)官僚というのは非難の対象にもなる。民間の活力がなくなれば天下り先も減るだろう。


だから、短期的に給料をGDPに大きく連動させたところで何かが大きく変わるわけではなだろうし、むしろ悪いインセンティブを与える結果になる可能性は大きいし、今の現状が官僚に成長させようというインセンティブがないわけではない。むしろ、目の前の選挙におわれる政治家に目の前の痛みに耐えても国を長期的に成長させようというインセンティブと気概がないほうが問題だ。


個人的には官僚にももちろん若干のインセンティブは必要だと思う。同時に雇用をもっと流動化させて官民の人材交流を図るべきだろうと思っている。それから無駄な天下り撲滅と人材の確保のためにはトップクラスの官僚の給与はもっと引き上げてよいと考えている。


しかし、いずれにしてもあのような小さな都市国家では国家の運営とはすなわち経営に近いはずだ。しかし、日本は曲がりなりにも大国であるから、そういった国家を経営すると言う感覚ではなく、やはり民間の活力を生かしていくための制度設計をしっかりしていくのが政府の役割といえるし、いかに国家の権限を縮小していくかが大切なテーマであるはずだ。


しかもシンガポールなどはエリートをIQで選抜して特別な教育を施したり、事実上の一党独裁国家でもあるし、法律も厳しいらしい。とてもではないが自由の理念をもった国とは言い難い。


そして、残念ながらどんな制度を採ろうとも権力は腐敗する。であるならば、われわれが目指すべきことは国家の権限を縮小させていくことだ。そのためには民主主義の場を通してそのことを主張していくしかない。


短期的な目線で官僚に妙なインセンティブと多大な権限を与えることは日本のような大国では必ず間違いを引き起こすだろう。もちろんシンガポールの政策には小さな政府を志向する人々には見習うべき/称賛すべき政策は多い。


しかし、その政策ではなく、官僚制度や政治形態そのものをほめたてるならばそれは結局は一部のエリートが常に正しい政策を遂行し続けることができるという国家社会主義者や共産主義者の考え方と何も変わらないだろう。経済政策のみを礼賛し木を見て森を見ない議論といえるだろうし、短期的な変革をあせる姿はまるで革命を起こそうとする国家社会主義者かレーニンかと移る。ま、今の日本にそんな悠長に構えている余裕はないよね。といわれれば、まそうかもしれないけれども。


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