断熱ワークショップを地域の産業に! 「断熱先生」竹内昌義さん(後編/vol.114) | 全国ご当地エネルギーリポート!

全国ご当地エネルギーリポート!

-エネ経会議・特派員:ノンフィクションライター高橋真樹が行くー

「断熱先生」ことエコハウスをつくる建築家・竹内昌義さんへのインタビュー(後編)をお送りします。前回の記事では、竹内さんがエコハウスづくりにめざめたきっかけや、新築だけではなく中古住宅に断熱改修を進める意義を伺いました。今回は、竹内さん自身のご自宅の断熱リノベ―ションについてなど、状況に合わせたプチ断熱改修のやり方を伺っています。さらに断熱改修が地域に及ぼす影響などについても聞いています。

 

竹内昌義さん

 

◆本日のトピックス

・手を動かして学んだことは忘れない

・状況に合わせた断熱リノベを

・地域の産業を産み出す動きに

 

◆手を動かして学んだことは忘れない

Q:自分が参加して断熱を手がける意味と、一般の方が断熱リノベをやる場合のポイントを教えてください

 

実際に手を動かして自分の家を改修できる機会は貴重で、何より面白い。素人でも、カッターとかノコギリが使えればかなりの範囲でできる作業です。座学で聞いて学んだ気がしても忘れちゃうけど、実際に手を動かすことで学ぶことは忘れにくい。それがやりがいにもつながっています。さらに寒い時期にやると断熱効果がわかりやすく、より実感がわきますね。

 

プロの大工さん(手前)のサポートで、安全に作業を進める

 

留意する点は、素人だけでなくプロの大工さんがいた方が、施工も適切にできるし安全です。床の断熱は、プロが使う丸ノコがないと難しいでしょうね。また、ちゃんと温熱環境のことを把握していないと、間違った工事をしてしまうリスクもあるので気をつけてください。

 

作業自体はそれほど難しいわけではありませんが、家一軒手がけるとなるとかなりの反復作業をしなければなりません。それを職人さんみたいにやってしまうと、ついてこれなくなる人もいます。「DIYウツ」という言葉があるように、少人数で黙々とやるのではなく、仲間を集めてみんなでワイワイやって、学びながら楽しむことが重要な要素です。

 

◆状況に合わせた断熱リノベ―ションを

Q:ご自宅も断熱リフォームして暖かくなったそうですね?

 

実はわが家も冬は寒くて困っていました。2年ほど前に、家の北側の窓には内窓をつけました。本当は全部の窓でできればよいのですが、コストの問題もあり寒い北側を優先したのです。他の窓は、ホームセンターなどで「隙間テープ」という名称で売っている「モヘア」を貼り隙間風を防ぎました。また、断熱ブラインド(ハニカムスクリーン)を各窓に設置しました。カミさんは最初は疑っていたのですが、使ってみると効果てきめんで、「何でもっと早くやってくれなかったの!」と言われました(笑)。効果がなければ、家族からは建築家として信用されなくなっていたかもしれません。こうした窓対策は、夏の暑さ対策としても有効でした。

 

空気層が断熱効果を生むハニカムブラインド

 

Q:集合住宅の断熱改修はどうでしょうか?

 

鉄筋コンクリートでできているマンションは、もともと木造の戸建より気密性能が高くなっています。玄関ドアと窓から伝わる熱気や冷気を防げれば、とても快適になります。内窓が付けられるなら内窓で、難しければ断熱ブラインドで効果が出るでしょう。「モヘア」は、玄関ドアの隙間風対策にも使えます。1世帯3部屋くらいのマンションだったら、全部やっても20万円程度で済むと思います。

 

Q:賃貸でもできることはあるでしょうか?特に都市部の賃貸では、穴を開けられません。

 

もちろんあります。地方では、賃貸でも改修していいという物件が増えています。また、穴を開けられなくても、窓枠に両面テープを貼り付けて簡易的な内窓をDIYでつくることは可能です。プラスチックダンボールなどを使えば、簡単で十分効果のあるものはつくれます。冷気が上がってくる床は、フローリングなら気密シートなど上に敷くもので対策できるし、畳なら剥がして下に断熱材を入れることができます。ただ、場所によっては地下が湿気っていて、木が腐る可能性があるので要注意です。ドアや窓の隙間を防ぐ「モヘア」は、ここでも有効です。条件は違っても、それぞれのレベルでできることは必ずあります。

 

プラスチックダンボール(プラダン)を使った「断熱障子」づくり

 

◆断熱を地域の産業に

 

Q:竹内さんは昨年、建築家の丸橋浩さんらと共同で「まちづくりエネルギー社」を設立しました。断熱DIY教室をはじめ、家づくり、まちづくりにエネルギーという視点を取り入れて活動するとのことですが、どのようなビジョンをお持ちでしょうか?

 

竹内:断熱ワークショップを経験した人たちはどんどん増えています。彼らがその意義や楽しさを伝えてくれたら良いなと思っています。ただ、会社を立ち上げた理由は、断熱ワークショップをやるためではありません。これからは、人口も減って新築住宅は減っていきます。そうなると、中古住宅のリノベーションがいまでは考えられないほど大きなビジネスになるはずです。

 

僕はいま、いろいろな自治体とも一緒に仕事をしています。地方から人がいなくなって移住者も定着しない最大の理由は、仕事がないからです。でも人がいる限り、中古住宅はあり工務店の仕事はなくなりません。

 

「まちづくりエネルギー社」では、そういう工務店を育てあげて、中古住宅のリノベーションを中心にした地域の産業を生み出したいと考えています。さらに個別の家を手がけるだけでなく、自治体と相談しながら街全体にもきちんとした断熱の基準を広げられたらと思っています。そうなれば世の中が変わるはずです。

 

竹内昌義さんへのインタビュー前編はこちら!

 

断熱DIYワークショップの様子はこちら!

 

◆お知らせ:映画「おだやかな革命」上映情報!

 

日本で初めて、ご当地エネルギーの取り組みを描いたドキュメンタリー映画「おだやかな革命」が全国で公開中です。(当リポート筆者の高橋真樹は、この映画のアドバイザーとして関わっています)

 

詳しい場所と日程は映画のホームページから上映情報をクリックしてご確認ください。