全国ご当地エネルギーリポート!

全国ご当地エネルギーリポート!

-エネ経会議・特派員:ノンフィクションライター高橋真樹が行くー

当サイト「全国ご当地エネルギーリポート!」は、「エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議(エネ経会議)が主催するものです。著書『ご当地電力はじめました!』『自然エネルギー革命をはじめよう』で、全国で動きはじめた再生可能エネルギー(自然エネルギー)をめぐる面白い取り組みを伝えた、ノンフィクションライターの高橋真樹さんを特派員として派遣。各地でリアルタイムに起きているワクワクするような活動をつぎつぎと紹介していきます!エネ経会議についてはコチラ! 

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いま、全国の発電事業者からソーラーシェアリングが熱い注目を浴びています。ソーラーシェアリングとは、農地の上に太陽光発電を設置することで、太陽の光を発電と農業の両方に活用する事業。以前のリポートでは、小田原の取り組みも紹介しています。売電が主な目的ではなく、農業を持続可能にしていくためのツールとして取り組まれています。

 

 

 

 

 

今回は、そんなソーラーシェアリング発祥の地で、現在も全国でダントツの設置数を誇る千葉県を訪問しました。2018年3月に稼働を始めたばかりの設備に案内してくれたのは、「千葉エコ・エネルギー株式会社」代表、馬上丈司さんです。千葉エコ・エネルギーは、ソーラーシェアリング事業に加えて、各地の自然エネルギーの取り組みのコンサルタント事業も手がけてきました。ソーラーシェアリング事業が始まって5年、全国の取り組みをサポートしてきた馬上さんに、ソーラーシェアリングをめぐる環境がどのように変化してきたかについて伺いました。

千葉エコ・エネルギーの馬上丈司さん

 

◆  トピックス

・パネルの下の作物の方がよく育つ?

・よみがえった耕作放棄地

・5年間で乗り越えた課題とは?

・ソーラーシェアリングは次のステージへ

 

◆パネルの下の作物の方がよく育つ?

 

猛暑が続く2018年夏に訪れたのは、千葉エコ・エネルギー株式会社(以下「千葉エコ」)が設置し、2018年3月に稼働を始めた「千葉市大木戸アグリ・エナジー1号機」です。発電出力はおよそ777キロワット、およそ2800枚のパネルが農地の上に並びます。農作業はプロの農業者ではなく、馬上さんをはじめとする千葉エコのメンバーが新規就農して手がけています。

 

栽培している作物は、落花生、サトイモ、サツマイモ、ナス、シシトウなどさまざま。たくさんの光を必要としないイモ類や葉物野菜は、ソーラーシェアリングと特に相性が良いとされています。どれもパネルの下で青々と成長していました。特にサトイモは大きな葉っぱを繁らせ、パネルのない所で育てている通常のサトイモよりもずっと発育状態が良好です。特に今年のような猛暑では、暑すぎる直射日光が作物に悪影響を与えるため、ソーラーシェアリングの日陰を作る効果は現れているようです。

 

また、夏でもイチゴを採れるようにと、近隣の農業法人と共同で試験栽培をしています。通常、イチゴは冬にビニルハウスの中で育てられます。夏の太陽の下では熱すぎてダメになってしまうのですが、パネルによって遮光・遮熱される効果により、いまのところ順調に育っていました。

 

 

人の背丈ほどもある植物は、ソルゴーという名のトウモロコシの仲間で、食用ではなく有機肥料として使われます。千葉エコが運営するソーラーシェアリング農場では有機農法を目指しているため、この植物を草刈機で刈って地面にすき込んでいきます。化学肥料を使う農業ではあまりなじみがないのか、周囲の農家からは雑草と間違われることもあるとのこと。刈り取った跡地には、ニンニクを植える予定になっています。

 

馬上丈司さんと、青々と茂ったソルゴー

 

◆  よみがえった耕作放棄地

 

千葉エコが自社で保有するソーラーシェアリングの設備は、上で紹介した「大木戸アグリ・エナジー1号機」(千葉市)の他に千葉県匝瑳市飯塚地区に3ヶ所あり、合計出力は955キロワットになります(2018年8月現在)。その他にも、一部出資している案件がいくつかあります。

 

匝瑳市の3施設では、「スリーリトルバーズ」という若手の農家グループが大豆や麦などを育てています。スリーリトルバーズは、ソーラーシェアリングを広げるために千葉エコや地元農家が出資して、2016年2月に設立した農業法人です。千葉県匝瑳市で有機栽培を手がける農家が中心で、雇用の一部には売電収入も使われています。農地はいずれも耕作放棄地だったところです。

 

「売電収益は順調に入ってきていますが、大変なのは農業です。耕作放棄地だった農地を回復させ、事業として回していくのはひと苦労でした。最初は設備投資もあるので人手とお金がかかります。そこを売電収入でサポートできればいいと思います」(馬上さん)

 

ナスも順調に育っていた

 

飯塚地区の土地は長いあいだ耕作放棄地だったので、土も固くあまり良い畑にならないと言われていました。しかし、2〜3年かけて丁寧に土作りを行ったことで、最近では大豆や麦がきれいに生え揃い、収穫量も安定してきました。麦は、大麦と小麦を栽培し、大麦はビールに、小麦は製粉して国産小麦として出荷していく計画です。

 

「千葉エコも含め、匝瑳市飯塚地区の各地にソーラーシェアリングができたことで、同地区内にある耕作放棄地の半分が解消するめどが立ってきています。この規模は通常の農業政策だったらありえないことです。ソーラーシェアリングが新しい現実をつくっているのです」(馬上さん)

 

千葉エコが出資するプロジェクトでは、2018年8月現在、匝瑳市飯塚地区の耕作放棄地だった20ヘクタールのおよそ半分である10ヘクタールを、ソーラーシェアリングによって回復させました。これは、東京ドーム2個分以上の面積です。

 

ソーラーシェアリングの下のサトイモ。葉っぱが元気に伸びている。

こちらはすぐ近くにある普通の畑のサトイモ。生育状況はパネルの下のほうが良い。

 

◆5年間で乗り越えた課題とは?

 

農林水産省がソーラーシェアリング事業を認可したのは、およそ5年前の2013年4月です。その後、ソーラーシェアリングをめぐる環境はどのように変化したのでしょうか?ソーラーシェアリングには「自然エネルギーを増やしながら、地域の農業振興に結びつける」という一石二鳥のコンセプトがあります。しかし当初は実践例が少なく、「本当に二兎が追えるのか」という不安の声が外部の企業や金融機関などから出ていました。

 

影の部分も移動するので、さまざまな作物の栽培が可能だ。

 

「疑問視されていたのは事業としての採算性です。すき間を開けた太陽光発電で元が取れるのかということと、ソーラーパネルの下でちゃんと作物が育つのかという2点です。そのため、金融機関からの融資が受けにくい状態が続いていました。また、当初はチャレンジ精神のある個人の農家が、自分の土地でひとつずつ設置するところから始まりましたが、農家はすでに農業機械の購入などで複数のローンを抱えている人が多く、新たな融資が受けにくいという事情もありました」(馬上さん)

 

2014年になると、耕作放棄地の問題を解消したいと考えていた千葉県匝瑳市飯塚地区が、地域ぐるみでソーラーシェアリングに取り組むようになります。また、原発事故の影響を受けて地域の農業の行方に頭を悩ませていた福島県南相馬市でも、「えこえね南相馬」という団体が中心となり、ソーラーシェアリングを実験的に広げていきました。手がける人は少しずつ増えても、事業への信用と資金調達の問題はついて回りました。

 

転機となったのは2016年。匝瑳市で出力1メガワット(=1000キロワット)の大規模施設、「メガソーラーシェアリング」のプロジェクトが動き始めてからです。最終的に城南信用金庫などの金融機関が融資したことで、設備は2017年3月に完成しました。なおこの事業には、千葉エコも出資をしています。かつてない規模の事業に金融機関が融資したことは、大きな実績となりました。

 

メガソーラーシェアリングの稼働式には、小泉元首相(中央右側)らが駆けつけた。左端が馬上さん。

 

また、2013年や14年あたりに始めていたソーラーシェアリング事業で、さまざまな実証データが揃うようになりました。太陽光発電で収益が上がることや、パネルの下で数十種類もの作物が栽培できることが証明されるようになったのです。そのような積み重ねが、企業や金融機関の信用を高め、資金調達ができるようになりました。

 

馬上さんは、この5年間の変化についてこう語りました。「これまでのソーラーシェアリングは、お金持ちか、あるいは良い意味での変わり者しか手を付けられませんでした。でもこれからは、やりたいと思えば誰でもできるステージに入ってきたと思います」。

 

◆ソーラーシェアリングは新しいステージへ

 

試行錯誤を経て、ソーラーシェアリングは新しいステージに入りました。次の課題は、認知度の低さです。発電事業者には知られるようになりましたが、農業者にはまだまだ知られていません。そこで馬上さんは、ソーラーシェアリングを積極的に支援している城南信用金庫の吉原毅顧問とともに、全国をめぐってセミナーやシンポジウムを昨年から開催しています。

大木戸アグリ・ソーラーでは、さまざまな実験も行っている。これはビニルハウスに見立てた倉庫の上に設置できる可動式のソーラー。発電しながら、強すぎる日差しをカットすることもできる。

 

「以前より増えたといっても、ソーラーシェアリングを実施しているのは日本の農地面積450万haの0.01%以下にすぎません。情報も実績も不足しているので、全国で農業に携わっている人たちには、まだまだ知られていない。そこで千葉エコとしては各地で取り組みを紹介し、可能性を感じてくれた農家さんにコンサルという形で協力しています。それも単なるコンサルではなくて、自分たちで発電も農業もやっているプレーヤーとしての実績がありますから、一緒に取り組みを進めていくことができます」(馬上さん)

 

ソーラーシェアリングをめぐる状況は、めまぐるしく変化しています。数多くの発電事業者が参入してきたことで、農業がおまけのような扱いをされている事業も増えてきています。また「再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)」の買取価格が下がってきたことで、今後のあり方をどうしていくのかという模索も始まっています。持続可能な農業を実現するために、ソーラーシェアリングで何ができるのか、課題と可能性について、次回も馬上さんに話を伺います。

 

◆お知らせ:映画「おだやかな革命」上映情報!

 

日本で初めて、ご当地エネルギーの取り組みを描いたドキュメンタリー映画「おだやかな革命」が全国で公開中です。(当リポート筆者の高橋真樹は、この映画のアドバイザーとして関わっています)

 

詳しい場所と日程は映画のホームページから上映情報をクリックしてご確認ください。

 

 

 


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「断熱先生」ことエコハウスをつくる建築家・竹内昌義さんへのインタビュー(後編)をお送りします。前回の記事では、竹内さんがエコハウスづくりにめざめたきっかけや、新築だけではなく中古住宅に断熱改修を進める意義を伺いました。今回は、竹内さん自身のご自宅の断熱リノベ―ションについてなど、状況に合わせたプチ断熱改修のやり方を伺っています。さらに断熱改修が地域に及ぼす影響などについても聞いています。

 

竹内昌義さん

 

◆本日のトピックス

・手を動かして学んだことは忘れない

・状況に合わせた断熱リノベを

・地域の産業を産み出す動きに

 

◆手を動かして学んだことは忘れない

Q:自分が参加して断熱を手がける意味と、一般の方が断熱リノベをやる場合のポイントを教えてください

 

実際に手を動かして自分の家を改修できる機会は貴重で、何より面白い。素人でも、カッターとかノコギリが使えればかなりの範囲でできる作業です。座学で聞いて学んだ気がしても忘れちゃうけど、実際に手を動かすことで学ぶことは忘れにくい。それがやりがいにもつながっています。さらに寒い時期にやると断熱効果がわかりやすく、より実感がわきますね。

 

プロの大工さん(手前)のサポートで、安全に作業を進める

 

留意する点は、素人だけでなくプロの大工さんがいた方が、施工も適切にできるし安全です。床の断熱は、プロが使う丸ノコがないと難しいでしょうね。また、ちゃんと温熱環境のことを把握していないと、間違った工事をしてしまうリスクもあるので気をつけてください。

 

作業自体はそれほど難しいわけではありませんが、家一軒手がけるとなるとかなりの反復作業をしなければなりません。それを職人さんみたいにやってしまうと、ついてこれなくなる人もいます。「DIYウツ」という言葉があるように、少人数で黙々とやるのではなく、仲間を集めてみんなでワイワイやって、学びながら楽しむことが重要な要素です。

 

◆状況に合わせた断熱リノベ―ションを

Q:ご自宅も断熱リフォームして暖かくなったそうですね?

 

実はわが家も冬は寒くて困っていました。2年ほど前に、家の北側の窓には内窓をつけました。本当は全部の窓でできればよいのですが、コストの問題もあり寒い北側を優先したのです。他の窓は、ホームセンターなどで「隙間テープ」という名称で売っている「モヘア」を貼り隙間風を防ぎました。また、断熱ブラインド(ハニカムスクリーン)を各窓に設置しました。カミさんは最初は疑っていたのですが、使ってみると効果てきめんで、「何でもっと早くやってくれなかったの!」と言われました(笑)。効果がなければ、家族からは建築家として信用されなくなっていたかもしれません。こうした窓対策は、夏の暑さ対策としても有効でした。

 

空気層が断熱効果を生むハニカムブラインド

 

Q:集合住宅の断熱改修はどうでしょうか?

 

鉄筋コンクリートでできているマンションは、もともと木造の戸建より気密性能が高くなっています。玄関ドアと窓から伝わる熱気や冷気を防げれば、とても快適になります。内窓が付けられるなら内窓で、難しければ断熱ブラインドで効果が出るでしょう。「モヘア」は、玄関ドアの隙間風対策にも使えます。1世帯3部屋くらいのマンションだったら、全部やっても20万円程度で済むと思います。

 

Q:賃貸でもできることはあるでしょうか?特に都市部の賃貸では、穴を開けられません。

 

もちろんあります。地方では、賃貸でも改修していいという物件が増えています。また、穴を開けられなくても、窓枠に両面テープを貼り付けて簡易的な内窓をDIYでつくることは可能です。プラスチックダンボールなどを使えば、簡単で十分効果のあるものはつくれます。冷気が上がってくる床は、フローリングなら気密シートなど上に敷くもので対策できるし、畳なら剥がして下に断熱材を入れることができます。ただ、場所によっては地下が湿気っていて、木が腐る可能性があるので要注意です。ドアや窓の隙間を防ぐ「モヘア」は、ここでも有効です。条件は違っても、それぞれのレベルでできることは必ずあります。

 

プラスチックダンボール(プラダン)を使った「断熱障子」づくり

 

◆断熱を地域の産業に

 

Q:竹内さんは昨年、建築家の丸橋浩さんらと共同で「まちづくりエネルギー社」を設立しました。断熱DIY教室をはじめ、家づくり、まちづくりにエネルギーという視点を取り入れて活動するとのことですが、どのようなビジョンをお持ちでしょうか?

 

竹内:断熱ワークショップを経験した人たちはどんどん増えています。彼らがその意義や楽しさを伝えてくれたら良いなと思っています。ただ、会社を立ち上げた理由は、断熱ワークショップをやるためではありません。これからは、人口も減って新築住宅は減っていきます。そうなると、中古住宅のリノベーションがいまでは考えられないほど大きなビジネスになるはずです。

 

僕はいま、いろいろな自治体とも一緒に仕事をしています。地方から人がいなくなって移住者も定着しない最大の理由は、仕事がないからです。でも人がいる限り、中古住宅はあり工務店の仕事はなくなりません。

 

「まちづくりエネルギー社」では、そういう工務店を育てあげて、中古住宅のリノベーションを中心にした地域の産業を生み出したいと考えています。さらに個別の家を手がけるだけでなく、自治体と相談しながら街全体にもきちんとした断熱の基準を広げられたらと思っています。そうなれば世の中が変わるはずです。

 

竹内昌義さんへのインタビュー前編はこちら!

 

断熱DIYワークショップの様子はこちら!

 

◆お知らせ:映画「おだやかな革命」上映情報!

 

日本で初めて、ご当地エネルギーの取り組みを描いたドキュメンタリー映画「おだやかな革命」が全国で公開中です。(当リポート筆者の高橋真樹は、この映画のアドバイザーとして関わっています)

 

詳しい場所と日程は映画のホームページから上映情報をクリックしてご確認ください。


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前回の記事で紹介した「断熱DIYワークショップ」の生みの親である、竹内昌義さんにお話を伺ってきました。竹内さんは、建築家ユニット「みかんぐみ」の主宰者として、省エネで快適なエコハウスを手がけてきました。そして新築だけではなく、それぞれの環境や予算に応じて省エネで快適な暮らしを実践できるようにと、DIYによる断熱改修を実践されています。

 

現在は、「エネルギーまちづくり社」という会社も立ち上げ、参加型で家をリノベーションする事業も始めています。省エネ型の社会を作る上で欠かせない、住宅の断熱の重要性とそこに家主自身が参加してつくる意義について伺いました。

 

「断熱先生」こと竹内昌義さん

 

◆本日のトピックス

・震災後も暖かかった山形エコハウス

・中古住宅の「暑い」「寒い」を解消したい

 

◆3・11の震災後も暖かかった山形エコハウス

Q: 断熱性能を重視したエコハウスの建築はいつごろから手がけているのでしょうか?

 

ヨーロッパなどで、外がマイナスの寒さでも、エネルギーをあまり使わず室内が暖かい家があることは知っていました。とは言え、頭で理解していただけで、いまひとつイメージができていませんでした。従来の日本の家との違いを体感したのは、2008年に知り合いの住むエコハウスを見学させてもらったことです。冬でも寒くないので、いいなと感じました。そして2009年に、僕が教えている東北芸術工科大学が主体となって、環境省事業でエコハウスを建てることになりました。その設計を僕がすることになったんです。

 

そのときつくった「山形エコハウス」は、天井に40センチ、壁に30センチの断熱材を入れて、窓はトリプルガラスにしました。自然エネルギー設備は、屋根に太陽光発電と太陽熱温水器、地下にペレットボイラーを設置しました。

 

そこでペレットを燃やし、暖房と給湯をまかないます。でも実は、そこまで自然エネルギーを使わなくても、断熱効果が高いので、適温になるのです。実際、東日本大震災のときに、この地域は2日間停電して暖房設備が動きませんでしたが、室内は平均18度を保ち続けました。春先の山形はとても寒いのに、室温が下がらなかったことは大きな自信になりました。

 

山形エコハウスの経験をもとに竹内さんが設計した高断熱高気密の一般住宅

 

この経験からも、それまで自分がつくってきた家とは全然違うなと実感しました。以前は家のエネルギーまでコントロールできるなんて思ってもみませんでしたが、「やればできるんだ」と思いました。断熱と気密がしっかりしていれば、設備機械に頼らず日射や通風を工夫するだけで、快適な空間がつくれます。それはどう考えても住む人のメリットと言えるんです。

 

◆中古住宅の「暑い」「寒い」を解消したい

Q:中古住宅を断熱することは、なぜ大事なのでしょうか?

 

山形エコハウスはいわゆる補助金でつくった家で、結構なお金がかかっています。もちろん一般の住宅ならもっとコストダウンできますが、それにしても新築しかできなければ「お金持ちしか省エネできない社会」になってしまいます。そこで、新築のエコハウス建設と同時並行で、断熱リノベーションを手がけるようになりました。

 

日本の中古住宅は、39%が無断熱です。そして「昭和55年基準」というほぼ無断熱に近いものが37%あります。合わせると、日本の既存住宅の80%近くはほとんど断熱がされていません。そういう家は、年間の暖房負荷でドイツの家と比較すると、10倍も浪費しています。これから新築住宅の断熱性能があがっていくとしても、これら中古住宅をなんとかしないと、日本のエネルギー問題は改善されません。

 

寒い家を建て替えたいと考える人も多いのですが、ぜんぶ新築に置き換えるのはお金もかかるし、資源やエネルギーも無駄になる。それを解消するためには、リフォームに合わせて、断熱工事をすることです。

 

断熱DIYワークショップでは、竹内さんから理論も学べるので好評だ

 

◆断熱DIYの広がり

Q:断熱DIYワークショップはいつ頃始まり、どんなところで行われてきたのでしょうか?

 

住宅業界では、新築の断熱のレベルが上がってきています。でも僕は、トップレベルをさらに上げるよりも、無断熱の家を少しでも改善していく努力をしたいと思いました。なにしろ、80%の既存住宅が断熱されていないわけですから。DIYだから、プロのやる工事のようなレベルではできないと思います。それでも今より暖かくなれば、何もしないより全然いい。

 

2015年冬に、戸建ての六畳一間の一室だけを実験的にセルフリノベーションするワークショップをやりました。4日間かけて、畳の下に断熱材を入れ、壁の中には毛糸とか、いらなくなったダウンジャケットを詰め込み、その上に気密シートを貼りました。即席でしたが、部屋はすごく暖かくなりました。

 

ワークショップでは自ら指導する

 

現在は、グリーンズ主催のワークショップの他、千葉県南房総市のグループが主催しています。また、岩手県紫波町では自治体と共同でエコハウスを作っているので、その関連でワークショップを行うこともあります。南房総市のグループは、主要メンバーの家をどんどん断熱仕様に改修しています。その他では、北九州(福岡)、逗子(神奈川)、熱海(静岡)などで開催してきました。僕が知らない間に盛り上がって、どんどん広がっているような部分もありますね。これは、楽しみながらできるからだと思います。

 

※後編では、竹内さんのご自宅を断熱リフォームした話やまちづくりにも広げていこうという構想について語っていただきます。

 

竹内昌義さんへのインタビュー後編はこちら!

 

断熱DIYワークショップの様子はこちら!

 

◆お知らせ:映画「おだやかな革命」上映情報!

 

日本で初めて、ご当地エネルギーの取り組みを描いたドキュメンタリー映画「おだやかな革命」が全国で公開中です。(当リポート筆者の高橋真樹は、この映画のアドバイザーとして関わっています)

 

詳しい場所と日程は映画のホームページから上映情報をクリックしてご確認ください。

 

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