一生に一回の食事で、400円の牛丼選びますか?/今泉太爾さん−後編(vol.107) | 全国ご当地エネルギーリポート!

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-エネ経会議・特派員:ノンフィクションライター高橋真樹が行くー


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前回に続き、中古マンションの断熱リフォームを手がける、今泉太爾さんのお話を紹介します。今回は主に、断熱リフォームのコストをどう考えるかについての話を取り上げます。年間で200件から300件の断熱リフォームを実施している今泉さんは、目先のコストだけではなく、暮らしの質についてのコストも合わせて考えるべきだと語ります。後編は、インタビュー形式でお伝えします。

 

今泉さんがリフォームしたお部屋。デザイン性はもちろんだが、本当にさがつくのは目に見えにくい部分。

 ◆トピックス

 ・断熱リフォームにかかる費用は?

 ・窓が結露しない価値はいくら?

 ・コストは判断基準のひとつでしかない

 

 ◆断熱リフォームにかかる費用は?

 

 高橋:断熱リフォームの費用は、どれくらいを考えればいいでしょうか?

 

 今泉:戸建だと広さによって大きく替わりますが、マンションの断熱リフォームの場合、断熱にかかわる金額だけで言えば、窓がおおよそ30万円から60万円程度。壁の断熱は外に接する外壁だけを考えたケースですが、20万円から40万円の範囲です。

 

今泉太爾さん

 

壁の場合は、実際にはいったん剥がして戻す工事が加わるので、それを合わせると200万円ほどを考えたほうが良いでしょう。そのため断熱リフォームのためだけに工事をするというよりも、リフォームするタイミングで断熱材を入れるのが合理的です。

 

 ちなみにこのマンションの部屋(千葉県浦安市/前編参照)は、外壁の断熱もした上に、壁の内部でかなりカビが繁殖して傷んでいたこともあり、徹底的にリフォームをしました。キッチンや部屋の改修など、断熱以外の部分も含めて大幅な工事をしたので、合計で1000万円代のリフォーム費用がかかっています。

 

まるごとリフォームしたため、リフォーム前とでは部屋の配置も様変わりした。

 

その全体の費用からすると、断熱にかかる費用というのは微々たるものです。 断熱リフォームはコストアップの価値をどう考えるか、ということが大切です。寒さ暑さを改善して、結露やカビを減らす健康的な暮らしをするのに、窓なら30万円程度、壁でも30万円程度で大幅に効果が上がるのがわかっているのだから、やらない理由はありません。

 

良い素材を使えばもちろん多少のコストアップはしますが、私は30年スパンで考えて、抑えるべきところを抑えながら、必要な所にはちゃんとコストを掛けたほうが良いと提案しています。

 

高橋:断熱とコストの関係は、「先行投資」と考えることもできますね?

 

 今泉:その通りです。窓や壁を30万円ずつ(合計60万円)かけてリフォームするとします。そのことで年間の光熱費を10万円程度削減できたとすれば、およそ6年間で回収することができます。そして、7年目からはプラスに転じます。このマンションの部屋で、5台あったエアコンが1台で済んでいることからわかるように、設備更新費と光熱費の削減量というのは大きいですね。

 

断熱への投資は単なる出費ではなく、先行投資の意味合いも。

 

さらに、30年くらい先までは手をいれることなく、数字に現れない快適性や健康度がアップすることになる。総合的に考えると、確かに失敗しない先行投資と考えることもできます。 例えば内窓を付ける場合は、目先の費用を考えてガラスはペア(2枚)ではなくシングル(1枚)でいいと言うお客さんがいます。

 

でも、コストは3割アップする程度です。何倍もするわけではありません。効果は何倍もアップしますが、コストは少しアップするだけなので、せっかく内窓を付けるならぜひペアガラスやLOW-Eペアガラスにして欲しいと思います。

 

 ◆窓が結露しない価値はいくら?

 

 高橋:断熱の価値は目に見えないので、コストを掛ける価値を伝えるのが難しそうですが。

 

 今泉:確かに、コストに比べて体験したことのない快適性はわかりにくいものです。だから最初は説明して納得してくれるまで時間がかかります。でも、私はこの8年ほど、100件以上の断熱リフォームをしていますが、お客さんから後で「断熱しなきゃ良かった」と言われたことは一度もありません。 特にコストパフォーマンスが良い窓については、きちんと説明すれば内窓をつけないという人はいないのではないでしょうか。

 

リフォーム前は5台だったエアコンが、1台で済むようになった。

 

マンションで30万円から60万円です。60万円としても家を購入した金額でいえば、月々の住宅ローンの支払いがせいぜい月1,000~2,000円程度増えるという話です。それくらいの金額は、金利の変動などの誤差で吹っ飛ぶ単位なので、それがどうしても払えないということはありえないと思います。それで快適性や省エネ性能は大きく上がるわけですし。

 

たとえば結露した窓を毎日拭かなきゃいけない手間がなくなるだけでも、月2,000円よりはるかに高い付加価値があると思います。 日本の住宅の暑さや寒さに対するスタンダードは、世界的に見れば凄くレベルが低いのですが、一般の日本人にはその認識がありません。変える必要がないと思っている人に伝えるのは確かに難しいことです。

 

毎日結露を拭く手間はいくら?数字に反映されていない隠れたコストも考えたい。

 

しかし、普通に暮らしていて結露したりカビが生えやすい家は、日本以外の先進国では「建築の不具合」だとして訴訟になってもおかしくないレベルです。日本だけは、そういう悩みを口にしても「住まい方ですね」なんて言い訳が通じちゃう社会になっている。 お客さんの寛容さに甘えすぎているんじゃないか、と思います。

 

業者によっては、中古マンションを売るときに壁のビニールクロスだけ新しいものに張り替えて売っているケースもあります。そして実際に生活し始めて1年くらいたって、壁の中がカビだらけだったとわかる。自分はプロとして、見なかったことにしてまた戻す様なな無責任な仕事はできないので、こういうことを説明しながらリフォーム工事をやっています。 

 

◆コストは大事、でも判断基準のひとつでしかない 

 

高橋:コストは見えやすいけれど、見えない部分の大切さは住んでからでないと気付かない人がほとんどなんでしょうね。

 

今泉:たしかに断熱材を多めに入れると少し高くなる。でも住まいは、人生でそうしょっちゅう買い換えられるものではありません。ご飯を食べに行って、失敗したら次は別のお店に行くというのは可能ですが、住宅の場合はそうはいきません。

 

もし一生に一度しかご飯を食べれられないとしたら、そのときコストだけで考えて400円の牛丼を選んで食べるんですか?ということです。ぼくは一生に一度の食事の機会で、400円の牛丼は選びません。本当に好きで選ぶのならば、かまわないと思いますが。

 

一生に一度の食事なら、400円の牛丼を選びますか?

 

もちろん予算は大切です。でも無理のない範囲で、快適な暮らしを追求することはできる。自分や家族がどんなものに囲まれて暮らすのが良いかを考えれば、「とにかく安ければ良い」ということにはなりません。その時の判断基準としては、コストは要素のひとつでしかないと思うんです。

 

 高橋:コストだけを気にしすぎることで、逆に損をする部分もありそうですね。戸建や賃貸の人でもできることはありますか?

 

 今泉:もちろんです。戸建はマンションよりも費用はかかりますが、それでも内窓を付けるだけなら100万円あればかなりできる。前回お話したように、北側の窓をやるだけでもだいぶ変わります。すでに家をお持ちの方にはぜひやってほしいですね。

 

 賃貸は、持ち家に比べると手を入れる部分が限られます。しかしできないことがないわけじゃありません。やはり内窓を付けるのは難しいことではありません。10年くらい住むつもりだったら、十分元がとれます。また、DIYで手を入れてもいいよ、という条件がついている賃貸物件を借りる方法もあるでしょう。

 

高橋:今はリフォームがちょっとしたブームのようですが、そのときに「断熱」という視点を入れていくことが大事になってきそうです。

 

今泉: 戸建てにもマンションにも言えることですが、壁紙がカビなどで汚れたら、上から新しい壁紙を貼って表面だけきれいにするのが今のリフォームの主流ですが、それでは原因が解決されていないので同じことが繰り返されるだけです。目に見えない壁の中にもしっかりとコストをかけて断熱リフォームをすることで、その後の暮らしの質が向上するのは間違いありません。

 

 高橋:どうもありがとうございました。2回にわたり、断熱リフォームについてお伝えしました。そろそろリフォームをとお考えの方は、見栄えだけではなく、夏は涼しく冬暖かい、カビの生えない気持ちのいい生活をめざしてみてはいかがでしょうか?

 

断熱リフォームにはお金をかける価値がある。リフォームの際にはぜひ考えてみよう!

 

前編はこちら!マンションの断熱リフォームで快適さアップ!

 

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