マンションの「断熱リフォーム」で暮らしの質をアップ/今泉太爾さん−前編(vol.106) | 全国ご当地エネルギーリポート!

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-エネ経会議・特派員:ノンフィクションライター高橋真樹が行くー


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 今回のテーマは「断熱リフォーム」です。戸建や中古マンションのリフォームそのものは、あちこちで盛んになっています。多くのケースでは、見栄えを良くするだけでやめてしまうのですが、「断熱」という視点を取り入れると、その後の住み心地がまったく変わってきます。 

 

お話を伺ったのは、千葉県浦安市を中心に中古マンションの断熱リフォームを手がける今泉太爾さん(アールデザイン代表)です。今泉さんには、以前にも家の燃費性能を計る「日本エネルギーパス協会代表」(※)としてインタビューさせていただいていますが、本業は今回紹介する住宅のリフォーム業です。

 

断熱リフォームのスペシャリスト、今泉太爾さん 

 

これまで数々の物件を手がけてきた今泉さんから、リフォームによって住環境を快適にしながら、冷暖房に頼らない暮らしを実現する秘訣を、2回にわたって聞いてきました。今回の話は夏の様子ですが、もちろん冬にも効果のある対策となります。

 

 

※日本エネルギーパス協会について 日本では各社がバラバラの基準で「エコハウス」や「高断熱」などの性能を謳っているが、消費者にはわかりにくい。日本エネルギーパス協会は、欧州などで一般化している家のエネルギー性能の共通の指標となる「エネルギーパス」を、日本にも普及させようと活動している団体。 詳しくはこちらの記事へ。

 

 家の燃費を見える化する・日本エネルギ−パス協会(前編)

 

◆トッピックス

 ・ポイントは窓と壁

 ・リフォームの優先順位は?

 

 ◆ポイントは窓と壁

 

 今泉さんがリフォームを手掛けた中古マンションの一室を訪れたのは、夏まっさかり。外は35度を越える暑さでした。今泉さんの会社が2016年にリフォームしたマンションは、バブルの頃に海岸沿いに建てられたおしゃれなつくりの広大なマンション群の一室です。

部屋に足を踏み入れると、中は涼しく感じられました。エアコンは26度設定で、室温は27度程度です。驚いたのは、かつて5台のエアコンが稼働していたというこの一室が、1台で済むようになったことです。

 

人気の浦安地区の外見はおしゃれなマンションだが… 

 

こちらのマンションは105平米の4LDKの部屋で、変わった形をしているので空気が抜けにくく、リフォーム前の夏場には5台のエアコンがフル稼働していました。それがリフォーム後は、エアコン1台で十分過ごせるようになったのは大きな変化です。

 

 戸建と違い、マンションのリフォームには多くの制限が設けられています。外部に面する壁や窓、ドアなどに手を入れてはいけないことになっているのです。とはいえ、やれることはあります。大きなポイントは2つで、窓と壁のリフォームです。

 

 手軽に手を入れられるのは、窓。熱の出入り口となる窓は、どんな建物でも、対策がもっとも重要になってきます。こちらの部屋のリフォームでは、外の窓(アルミサッシ)はそのままに、内側に内窓(樹脂サッシ)を入れています。ガラスはペアガラスで、熱を通しにくいLOW−Eの遮熱サッシを使いました。

 

従来の窓の内側に、樹脂のペアガラスを搭載した内窓を設置。マンションだと窓のスペースが限られているので、全部に内窓をつけてもそれほどかからない。

 

この部屋の作りは、窓を最大限に大きくとっていることもあり、リフォーム以前は夏はビニールハウスのように暑く、冬は逆に極端に寒い状態でした。外気温の影響をモロに受けていたんですね。そこに内窓を追加するだけで、だいぶ過ごしやすくなりました。もちろん、エアコンの効き目も良くなりました。 内窓を開けて、外窓との間に手を入れてみます。すると30度以上の熱い空気がさしこんできました。アルミサッシ1枚だけだと、この熱がそのまま部屋に入ってきていたことになります。

 

それを内窓が防いでくれているということになります。内窓を付けることにより、冬には太陽の熱が入らなくなります。それでも、冬場は内窓が冷たい空気を遮断することに効果を発揮するので、むしろ今までより暖かくなっています。今回の部屋では諸条件を検討して、昼間の日射の取得よりも、朝晩の温度低下を防ぐことを優先したということになります。

 

断熱材を入れた部分が膨らんでいる。これで夏も冬も外の気温の影響を受けにくくなる。

 

 次は壁です。窓に比べると大掛かりな工事が必要なので、予算は大きくなりタイミングも限られてきます。マンションの場合、多くは両隣に別の部屋があるので、戸建に比べると外気温の影響を受けにくくなります。そのため隣の世帯と接している壁の断熱は、それほど厚くする必要はありません。

 

問題は外と接する壁です。この部屋では、約5~8センチの断熱材を入れました。内側を厚くすることで部屋は狭くなりますが、寒くて使えなかった冬の窓辺のスペースが使えるようになるため、結果的には広さを有効利用できるようになりました。

 

 なおこの部屋はマンションの1階なので、冬は床からも冷気があがってきていました。そこで、床下にも断熱材を敷き詰めています。今泉さんは、この部屋全体を東北クラスの断熱性能にまで高めたため、暑さだけでなく寒さにも十分対応できるようになったと言います。

 

 ◆リフォームの優先順位は? 

 

ポイントは暑さ、寒さの改善だけではありません。窓を入れ替えたことで、以前はひどかった結露とカビの増加が大幅に改善されました。今泉さんは言います。

 

 「2005年より前に建てられたマンションの多くは、断熱がきちんとしていないので、結露やカビの問題がついて回ります。窓のサッシなど見えやすい部分の結露は拭くことができるのでまだ良いのですが、見えない壁の中で結露してしまうと対策ができません。リフォームするときは、その対策をする絶好の機会になります。ぜひ壁の内部を点検して、断熱材を入れるなど再発防止の対策をしてほしいですね」。

 

大きな窓が2面にある部屋。以前は壁の内部が結露してカビが大量に発生していた。もちろん夏はサウナのように暑く、冬は凍えるように寒い。

 

壁を全面的に剥がしてコンクリートむき出しに。

 

そこに断熱材を入れていく。

 

リフォームが完成。見た目がきれいになっただけでなく、夏は涼しく、冬は温かい環境になった。もちろん結露やカビが出にくいので長持ちするように。

 

一度に全てできる予算がない場合は、どうしたらよいのでしょうか?断熱リフォームの優先順位の付け方も教えてもらいました。

 

 「最優先はまず北側の窓です。寒いのはもちろんですが、何もしなければ100%結露します。結露はカビを増やし室内が汚染されるので、窓対策は必須です。日の当たる南側の窓は、空調をかけていれば比較的結露はしにくいので、後回しでいい。ただし、加湿器などで加湿するともちろん結露の原因になるので気をつけてください。次は北側の壁に断熱材を入れてください。それができたら次は南側の窓と壁という順番です。理想を言えば、マンションの外壁面だけでなく、数センチでいいので内側にも折り返して断熱材を入れてもらえたらと思います。コンクリートは熱を伝えやすいので、そこから暑さ寒さが伝わってきます。内側にも少し入れておけば、その伝わり方がだいぶ違ってきますから」。

 

 断熱を意識しないリフォームでは、壁をせっかく剥がしても断熱材を入れずに壁紙だけを張り替えてそのまま戻すというケースが多く見られます。今泉さんとしては、「コスト的にとてももったいないことをしている」とのこと。

 

でも、体感したことのない人にとっては今ひとつ実感しにくい「断熱」にコストをかけるべきと言われても、躊躇してしまう人も多いはずです。そこで次回は、断熱リフォームのコストについての話しをまとめて紹介していきます。

 

リフォーム後のお部屋。デザイン性と快適性を両立している。

 

後編はこちら: 一生に一回の食事で、400円の牛丼を選びますか?

 

◆お知らせ

 

エネ経会議代表の鈴木悌介さんの著書、『エネルギーから経済を考える』が、価格をリニューアルしてエネ経会議出版部から出されました。

 

 

地域経済を考える上で、基本となるエネルギーを通してどうやってまちづくりをしていくのかが書かれた好著です。お問合わせはエネ経会議まで。

 

 

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