二足の草鞋 -14ページ目

孤独な道標 【第十四章】~再会~

【第十四章】
≪再会≫

家に帰ると、ブログの更新を見たみるきーが心配そうな面持ちで公安との会話を聞いてきた。

実際にはまだ配属部署が決まったわけではないからなんとも言えないが、淳介のことだろうから私が勤める会社に出入りできるような部署はどこなのかを事前に調べ、そこへ希望を出しているのではないかと思う。

私とみるきーの束の間の幸せはあっという間に淳介の転職によって壊された。それが、とても悔しかった。そして、申し訳なかった。

7月1日、私はいつものように仕事をこなしていた。ちょうど、○○会社の締め日で請求書や伝票の整理をしていた。この○○会社からは、2、3日に一度は電話があり、弊社の営業のEさんとの取り次ぎでよく電話をしたり、時にはお互いの会社を行き来するなど顔馴染みだったから、もし万が一、淳介がこの営業に携わることがあればすぐにわかる。

その日は、○○会社から電話はなかった。

夕方、営業から帰ってきたEさんは事務処理をこなしながら衝撃的な内容を口にした。

「○○会社に今日から転職した相場さんって人さ、めちゃくちゃイケメンだったよ。33歳だって・・・もっと若く見えたよ!仕事も出来そうだし、明日からいつもの営業さん一と緒に行動するってさ。近いうちに電話かもしくは来社するかもしれんからよろしく。」
私は開いた口が塞がらなかった。こんなにも早く、こんなにも巧く、淳介の企みが実行されるなんて・・・。
「藤井さん、聞いてる?」
「あっ、はい!聞いてます・・・わかりました。」
公安に連絡しておいた方がいいのかな?それとも、もう知ってるかもしれないし・・・何かあったら言ってきてくれるよね。

それに、しばらくは一人で行動することはなさそうだし、もう少し様子を見よう。

次の日、会社のメールを確認すると○○会社のいつもの営業さんからメールが入っていた。

内容は思っていた通り淳介の紹介だった。今日にでも、挨拶がてら立ち寄るとのこと・・・。私は、その時間が来るまで憂鬱で仕事は捗らなかった。

会社内に訪問者を知らせるインターホンが鳴る。き、来た・・・なんて、挨拶すればいいの?知らないふりしていればいいの?それとも、ストーカーって言う?そんなこと言えない・・・どうしよう。
入口のすぐ側にある衝立てで仕切られた応接間から聞こえてくる2か月ぶりの淳介の声。元気そうだった・・・いや、元気なのは当たり前か、私と一緒のような職に就いたんだし・・・。

仕事の話も含め営業のEさんと一通り話終わる頃、私は給湯室で珈琲を入れ差し出そうとしていた。この珈琲に洗剤でも入れてやろうかと考えたりもした。

考えるだけで、行動に移せる勇気もない私は怒涛の勢いで珈琲を運んだ。

なるべく顔を見ないように、見ないように・・・。

「こんにちは、お世話様です。」私は、いつもの営業さんだけを見て声をかけながら珈琲を出す。

「こんにちは、藤井さん紹介するよ、今日から・・・」と、営業さんが言った瞬間

「み、みるく!」と、淳介の白々しい話かけ。そうか、偶然を装ってきたか・・・。
「あれ?なに?知り合い?」うちのEさんと相手方の営業さんが同時に発した。
「あ・・・はい、一応。」私は、明るいこの場を暗くするような発言はできなかった。
「知り合いが取引先にいてくれるのは助かりますね。安心できます^^」淳介は繕った笑顔で話をしていた。
「藤井さんも何かと忙しいでしょうけど相場の手助けしてやってください。」と相手方の営業さんに言われた。
嫌だと言えるわけがない。仕事だから・・・まんまと淳介の術中に嵌った気分だった。これから先が思い遣られると思うと、胃がキリキリと痛んだ。