二足の草鞋 -13ページ目

孤独な道標 【第十四章】~煩悶①~

第十四章】
≪煩悶①≫

会社では営業のアシスタント的なことをしていたから外へ出る機会などもあった。少人数の部署ということもあり外出時は会社で支給されている携帯を持って出ていた。

ほとんど会社内の人としか連絡を取らなかったし、私は直接営業をする訳ではないので基本的には他社の人とは携帯で連絡を取り合う事はなかった。

そんなある日、私は庶務的な事由で銀行へ出かけていた時、会社の携帯の着信音が鳴った。見覚えのない携帯番号だしアドレス帳に登録されていない電話番号だった。

それでも、とりあえず携帯にでてみると相手は淳介。

「みるく・・・俺、わかるよな?ちょっと聞きたいことあるんだけど。」

「な、なんでこの携帯の番号知ってるの?」

「ああ、Eさんから聞いたんだ。見積りの件でわからないところを聞こうと会社へ電話したらEさんが出てさ、今回の見積りおまえが出したんだろ?」
「そうだけど・・・そんな急なの?わざわざ携帯にかけてこなくてもいいのに。第一、私いま出先だから見積りのこと聞かれても何にも手元に資料ないからわからないよ。」

「まあ、そうだけどさ・・・Eさんがみるくの携帯を教えてくれるっていうからお言葉に甘えたんだよ。それはそうと、携帯Softbankなんだな。こっちもSoftbankだからこの電話番号でメールもやり取りできるってわけだ。」
「仕事以外のメールしてきたら速攻でアンタがストーカーだってことばらすからね。」

電話を切った後、着信拒否に設定しようかと思うくらい憎たらしく感じた。営業のEさんもEさんだ。なんで教えたんだろう・・・。

私は、以前の部署で一度警察に被害届を出しに行く時に付き添ってもらった人へ電話をして今の現状を報告したが、公安がついているなら大丈夫だよとそんなに深刻には感じてくれなかった。

それから毎日、淳介から会社の携帯にメールや電話があった。確かに仕事の話はするが正直、自分でも解決できるような内容だったり、いちいち電話で話すほどのことではなかったので私は、どうでもいい内容には無視をした。

普段、私はお弁当を作ってきていて天気のいい日には近所の公園でお弁当を食べたりしていたが、今日は寝坊をしお弁当を作れなくて外へ食べに出るか買いに出るか迷っていた。

すると、営業から戻ってきたEさんは○○会社の営業のGさんと淳介と一緒だった。Eさんは私に話しかけた。
「藤井さんもこれからメシ?今日は弁当じゃないんだ。」

「あっ、はいそうです。」

「ちょうどいいや、じゃ4人で近所のファミレスに昼飯食いに行こう。」

えっ・・・淳介も来るの・・・いやだなぁ。私は、若干嫌そうにしながら3人の後を歩いた。すると、Eさんが私に話しかけてきた。

「藤井さんって、相場さんと昔付き合っていたんだってね?」

「ち、ちがいますよ・・・。」やだ・・・淳介はEさんや相手方のGさんにまでしゃべって味方につけようとしているのかな。恥ずかしさというか、ちょっと勝手な淳介の言動に苛立ちながら答えた。

「隠さなくてもいいのに。」と、冷やかされた。

ファミレスまで歩く道のりがものすごく長く感じた。EさんとGさんは前を歩き、私と淳介はその後ろを歩いていたが私の傍にピッタリとくっついて歩く淳介がうざかった。

「もっと離れて歩いてよ。暑いんだからさ!」

「いいだろ、そう怒ると余計暑くなるぞ。」

淳介の行動は堂々たるものだった。公安にまで目をつけられ以前の会社へは知られた挙げ句に左遷、それでも尚めげずに転職までして私の傍を離れようともしない・・・ある意味、感心していた。

いろいろ考えながら歩いていると、すれ違いざまに人にぶつかりそうになったとき、淳介が私の肩をグイッと引き寄せた。

「みるく、危ないよ。おまえ相変わらずどんくさいのな。」淳介は笑いながら私の頭を撫で言った。

なんだろう、この感触。胸が締め付けられるような痛みと同時に何故か身体が熱くなり顔を真っ赤にしてしまった。
淳介はそんな私をどう見ていたんだろうか。