二足の草鞋 -16ページ目

孤独な道標 【第十四章】~距離~

【第十四章】
≪距離≫

正直、淳介が地方に転勤になって清清するはずだった。

でも、何か私の心に蟠りがあった。

新たな“正直日記”というブログを始めた淳介はなんだかどこか寂しげで、淳介らしくない筆のタッチだった。
確かに、警察から公安に管轄が変わりおとなしくしていないといけなかったのかもしれないけれど、私には淳介が憐れに思えた。

淳介の母親が憔悴しているという事実をブログで知り、私はなんだか心が締め付けられた。私と淳介の間での関係はいろんな人を巻き込み、傷つけ、悩ませている。
私たちが別れたことで、不幸になる人や悩まされる人がこんなにも増えていたことに気づく。Y子ともあれ以来、連絡を取れなくなったし、K先輩ともなんだか連絡を取りづらくなった。
私が淳介ときちんと別れていなかったが為に、みるきーまで巻き添えにしてしまい心を悩ませ毎日が心配で堪らない様子だ。
ここまでされたのなら、告訴に踏み込めばいい・・・本当はそう思った。でも、出来なかった。淳介に対し同情と改正への期待があったからだ。
私は警察署を通じて管轄する公安に淳介の現状を電話で聞いた。

「ブログの内容や言動は少しおかしいところもありますが、直接的な被害を与える危険性は少ないと思われます。理由としては、週に3日ほどですが3~4人体制で尾行をしております。ほとんどが、バイクで近所に出かけすぐに帰宅し家で過ごされています。また、1週間に一度こちらが指定する精神病院に出向いてもらい指導を行っています。」

あれ?そうなんだ・・・。ブログでは母親の病院のついでに診てもらったみたいな感じで書いていたのに、実際には公安からの指示だったんだ。
「そうですか・・・。で、病院の診断はどうなんですか?」
「診断結果は低度の精神分裂障害です。ただ、相場さんは頭が良いので、仕事や今後に差し支えのない治療の範囲で故意に低度の精神病を装っている可能性もあります。なにしろ、お母様が精神病を患っていますからね、その辺りはよく診察の範囲など御存じですね。」
「はあ・・・。」私は、今後どうしたらいいのだろう。公安に全てを任しておけばいいのだろうか。相手が女性ならもう少し親身になって話をしてくれるのだろうか。
なんとなく事務的な対応だった。それでも、週に3日も尾行し週1で病院の診察があるなら安心してもいいのだろう。警察の対応よりは遥かに速やかだ。
「こちら側としては捕まえる方向として捜査しているのではありません。あくまでも相場さん自身の更生を期待しております。ですから、ブログの挑発などには乗らずに、貴女はどっしり構えていればいいのですよ。今後は、何かありましたらこちらから連絡します。」
「はい・・・。わかりました・・・。」ほんの少しのやりとりで電話を終えた。
淳介のブログは相変わらず自己中心的な内容だがどこか投げやりだった。でも、なんだか余裕さえ感じる。
こんなんで終わるはずがない。
淳介は、この私との距離を縮める方法を何かを企んでいるような気がした。