佐渡裕&新日フィル、角野隼斗:チャイコフスキー;ピアノ協奏曲第1番、交響曲第5番 | Wunderbar ! なまいにち

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まだまだひよっこですがクラシック大好きです。知識は浅いがいいたか放題・・・!?

2024. 5. 21 (火) 19 : 00 ~  福岡シンフォニーホールにて

 

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 Op.23

(ソリストアンコール)

チャイコフスキー:「くるみ割り人形」より こんぺい糖の踊り

 

チャイコフスキー:交響曲 第5番 ホ短調 Op.64

 

(アンコール)

チャイコフスキー:弦楽セレナーデ ハ長調 Op.48より 第2楽章 ワルツ

 

 

ピアノ:角野隼斗

指揮:佐渡裕

新日本フィルハーモニー交響楽団

(コンサートマスター:崔文洙)

 

   

 

新日フィル聴くの久しぶり~なんて思ったら、前回は2022年11月のすみだトリフォニーホールでの公演だった。佐渡さんはもっと久しぶり。で、2回目だと思う。

このチケットを買ったのはかてぃんさんこと角野さんのピアノを聴いてみたかったから。

 

本番前に佐渡さんのプレトークがあった。

かてぃんさんのことを「東大出身のピアニストってねぇ~、なかなかいませんよw」「でも外見からはそう(東大出身ということ)はみえないですよね。ちゃんと食べてるんでしょうかね~w(スリムということだと思う)」とかてぃんイジリをしていた指差し そしてチャイコの5番に関して”交響曲5番”はベートーヴェンの「運命」のせいで各作曲家にとっては鬼門の番号、というお話。チャイコの5番は「運命」と同じく”苦悩から歓喜へ”というストーリーがある、ことなどをお話された。

 

今回の全11公演の全国ツアーの初日がこの福岡公演。

なんと全公演が完売だそうおーっ!ハッ間違いなくかてぃんさん効果ですよね~にやり

 

 

前半はチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番。ソリストのかてぃんさんは初聴き音譜

チケットも早々に完売になってたくらい、今もっとも旬なピアニストのおひとりだと思う。

 

で、率直な感想は・・とってもよかった!! 予想以上によかった!

私はショパンコンクールのときのイメージを持っていたが、年月が経ちあのときよりもきっとずいぶん進化されているのではないだろうか。

オケにも決して負けない力強さとしっとりと聴かせる繊細さともに素晴らしかった。

第1楽章の前半あたりまではペダルがちょっと効かせすぎのような気がした。たぶん意図的にそうされていたのだろうけど音がダマになって連なって残っていくのが気になった。

ただ途中からはそうでもなくなったような。 

第2楽章の高音のキラキラした弱音がとても素晴らしかったし、第3楽章のオクターブの連打も圧巻。かてぃんさんすごいんだな~~♪

 

アンコールはチャイコのくるみ割り人形から。 かてぃんさんのことなのできっと途中からアレンジが入るだろうと思ったが、ちょこっと入ってきたかと思ったら広げずに終わっちゃったw

 

会場はかてぃんファンの女性だらけだったにやり またソロリサイタルとか聴いてみたい。

 

 

 

後半もチャイコフスキー交響曲第5番

これ聴くの久しぶりじゃないかな~。

これも率直な感想を書かせていただくと、佐渡さんの5番、独特なんだな~って思いましたw

テンポの揺らしが独特。もちろん意図的にされておられると思うが、ふとしたところで「え?ここでこんなにテンポ落とす?」ってなところが結構あった。

 

ただ、そのテンポをぐっと落とした次の場面ではが~っと盛り上げていくので、きっとその盛り上がり程度を増すための効果のためにわざとテンポや音量をぐっと絞ってるんだろうかな~。

まぁ確かにその演出効果は大きいとは思う。 

メリハリがあるっていえばそうだけどこのやり方は好みが分かれるかもしれないな~にやり

(たぶん小泉さんやコバケンさんならこういう5番ではないかも)

私的にはこれはこれで面白かったしありだと思います。

ただ最終楽章はゆっくり静かに・・・からの一気呵成にがーっとなるところが、肝心の”一気呵成”の部分が締まりきれずちょっとバラついていたのがもったいなかった。

 

でもオケは全体的によかったです。弦の一体感はすごかったし低弦もビンビン響いてきた。

木管もよかったけど正直いつも聴き慣れてる九響の方が木管全体のアンサンブルとしてはまとまってると思った。

この日の私的なMVPはクラリネットとティンパニ! クラリネットの方、めっちゃうまかったなぁ。弱音でずーっと伸ばすとこなんかめっちゃよかった。ティンパニの方はバンバン歯切れよく鳴らしててまるでロシアのオケみたい。めっちゃ好みでした♪

 

2週間に渡る全国ツアーはもうすでに終了しています。皆さんお疲れ様でした!

 

 

 

 

ところでこの第5番、佐渡さんもプレトークで(ベートーヴェンの第5番「運命」と同じで)”苦悩から歓喜へ”とおっしゃっていたが、ほんとにそうなのでしょうか。

ソ連時代の巨匠、エフゲニー・ムラヴィンスキーが交響曲第5番について語ったインタビューがあります下差し

 

 

この動画の5分50秒あたりからムラヴィンスキーのインタビューが始まり、11分20秒あたりからこの第5番のフィナーレについて語っています。以下彼の言葉です。長いですが載せておきます。

 

『 ところでフィナーレが克服すべき全てのものに対する勝利であるという解釈には私は全く賛成できません。主題が長調で謳いあげられるところ、この長調はむしろ不気味な恐ろしい長調です。これを下地にコーダではトランペットが主題を鳴らす。私は遅からぬ速さで華麗に演奏するので、偽りの印象が生まれるのかもしれない。荘厳な感じのね。しかし大団円ではないのだ。

主題のマーチ的要素は第1楽章冒頭でもクラリネットとファゴットで始まりますが、これが終盤にも残っています。これがフィナーレを速くする理由です。ですから私は決してこの曲を華麗な勝利の行進とはみなしていません。もちろんチャイコフスキーの曲は、特に交響曲第5番にはいい意味でのセンチメンタリズムがあります。しかしこれを作曲した時代はちょうど現代のような指揮者が現れ始めた頃で初演後にこの曲を指揮したニキシュも含めて、どういう訳かこの時代の指揮者は感傷的な部分、表面的な感情表現を重視していました。だから弦楽器のビブラートなども大げさでした。これが好き勝手にルパートをかけるような先ほど指摘のあった即興性に通じるような風潮になったのです。しかし私には許せませんね。特にこの曲には即興性は全く重要ではありません。この第5番において重要なのは、悲劇性と一定の拍動による統一感、そして厳格な動きとがっちり鍛え上げられた形式です。そう、がっちり鍛造された形式です。感受性や甘美さはまた別物なのです。もちろん涙もありますが、感動して流れる涙もあれば、いわゆる”血の涙”もあります。第5番に涙は多くないでしょうし、あるとしたらそれは”血の涙”ですね。

 

私はずっと前にこのインタビュー動画を観て以来、第5番が”苦悩から歓喜へ”という単純な構造とは思えなくなってしまいました。

このムラヴィンスキーのお話をふまえると今回の佐渡さんの第5番の演奏はムラヴィンスキーの考えとは対極をなすものかもしれません。

佐渡さんがこの談話を聞いたら彼の解釈についてはどう思われるだろうな。興味ありますにやり

 

 

それにしてもチャイコフスキーはやっぱすごいな、偉大やな!と思った公演でした。

 

「あったりまえやろ。だてにチャイコフスキーやっとらんけん」by ピョートル