2024. 5. 17 (金) 19 : 00~ ビーコンプラザ・フィルハーモニアホール(別府市)
<第24回別府アルゲリッチ音楽祭>~《未来を創る》
~ ベスト・オブ・ベストシリーズ Vol.9 ~
(アンコール)
シューマン:幻想小曲集 イ短調 op.88
シューベルト:君は我が憩い D776 op.59-3
ピアノ:マルタ・アルゲリッチ
ヴァイオリン:ギドン・クレーメル
チェロ:ミッシャ・マイスキー
今年もこの季節がやってきた~
私が2014年からこの音楽祭に通うようになって今年でちょうど10年目(ただしコロナ禍のため2020年~21年は音楽祭自体が中止になった)
そしてアルゲリッチが大分に初めて訪れて今年で30周年だそう。
この間に当然アルゲリッチは年々年を重ねていき、心臓の問題などで海外の公演では時々キャンセルもするようになってきた。 聴ける機会があるときにはぜひ聴いておきたい、毎年一期一会と思いながら大分まで馳せ参じている。
今年も無事に来日されてよかった!
通常はオケとの共演の公演と室内楽アンサンブルの公演の2種類を別府と大分の2か所で開催(毎年オケと室内楽は2か所のホールで交互に交代)されていたが、今年も昨年と同じく2か所とも室内楽のみとなった。だた今年は大分ではクレーメルとのデュオ、別府ではクレーメル、マイスキーのトリオ、と超大御所の出演、とあってチケットはあっという間に完売 私もなんとかギリギリとれました。
演目はショスタコーヴィチのみは前もって発表されていたが、他の曲は当日の発表。まぁこれもアルゲリッチならではなので想定内w
前半はマイスキーとのデュオで、ベートーヴェンのチェロ・ソナタ第5番、シューマンの幻想小曲集、ドビュッシーのチェロとピアノのソナタ。
シューマン以外は初めて聴いた(と思う)。
ベートーヴェンのチェロ・ソナタ第5番ニ長調は、第4番ハ長調と連作で1815年に書かれた。第4番とともにピアノの名手アンナ・マリア・エルデディー伯爵夫人と、彼女の家庭教師でチェリストのヨーゼフ・リンケのために書かれた作品。ベートーヴェン最後のチェロ作品で、5曲の中で唯一緩徐楽章がある。第1楽章ではピアノ左手のトレモロが多く、第2楽章から切れ目なく演奏される第3楽章ではバッハのフーガ技法(4声)を取り入れている。後のロマン派音楽ににつながる自由な創意が認められる。
シューマンの幻想小曲集 Op.73は1849年2月12日~13日の短期間で作曲、原曲はクラリネットとピアノのための作品だが出版に際してヴァイオリンやチェロ用に編曲譜も付けられ、現在はこれらの楽器で演奏される場合も多い。自筆譜では「夕べの小品集」 ("Soileestücke") と題されていたが、出版の際に「幻想小曲集」というタイトルになった。3つの小品から成り、各曲は間をおかずに演奏するように指示されている。指定のテンポが徐々に加速されていくように設計されているなど全曲の統一も図られている。
ドビュッシーの「チェロとピアノのためのソナタ ニ短調」はドビュッシーの最晩年の作品で1915年に作曲された。「さまざまな楽器のための6つのソナタ」の一部を成すものとして構想が練られたが、結果的には完成したのは「ヴァイオリン・ソナタ」と「フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ」と本作の3曲のみとなった。短いながらもチェロの幅広い技巧(ピチカート、巣ピッカート、フラウタンド奏法、ポルタメントなど)が駆使されている。
3つまとめて書くと、ベートーヴェンとシューマンはなんとなくアルゲリッチが主導権を握ったような雰囲気(?)で私はピアノばかりに耳がいってしまった。
でもベートーヴェンの第2楽章なんかはふたりが互いに寄り添うように後光が差すような穏やかな音色に魅了された。シューマンの幻想小曲集は前もおふたりのデュオで聴いたことがあるしオーボエでも聴いたことがある。アルゲリッチはこの曲好きみたいですね~ 私も大好き。シューマンはやっぱりアルゲリッチによく合っていると思う。
ドビュッシーになるとチェロの深~い音色にうっとりした。初めて聴いたがやっぱりドビュッシーぽい独特の雰囲気がある曲だった。最晩年の作品とは思えない。
当日の演奏の様子 ©脇屋 伸光
(画像は音楽祭の公式HP 「コンサートレポート」よりお借りしました)
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第5番(18分5秒:第2楽章;6分27秒~、第3楽章;13分57秒~)/ ロストロポーヴィチ (Vc), リヒテル (Pf) (1962年6月)
シューマン:幻想小曲集 Op.73 (10分58秒)
/ ミッシャ・マイスキー (Vc), リリー・マイスキー (Pf) (2017年9月12日, ソウル)
ドビュッシー:チェロとピアノのためのソナタ(13分22秒(演奏は11分18秒まで))
/ ギヨーム・マルティニェ (Vc), マルタ・アルゲリッチ (Pf)(2020年8月)
後半はギドン・クレーメルが加わって、いよいよゴールデントリオの演奏 3人での日本での演奏は26年ぶりだそう。
曲はショスタコーヴィチのピアノ三重奏曲第2番。3人は同曲の録音もしている
ショスタコーヴィチ:ピアノ三重奏曲第2番、チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲
/ マルタ・アルゲリッチ、ギドン・クレーメル、ミッシャ・マイスキー
(1998.5 東京ライブ) (UCCG2025)
私はこの曲の実演を聴くのは3度目。2022年6月にアルゲリッチ、クレーメル、ギードレ・ディルヴァナウスカイテで2日連続で聴いている。
アルゲリッチはよくショスタコを採り上げるからお好きなんだろうな。私もこの曲大好き
この作品はショスタコーヴィチが親友のイワン・ソレルチンスキーの追悼音楽として第二次世界大戦中の1944年に作曲された。彼のピアノ三重奏曲は17歳時に書かれた第1番とこの第2番の2曲がある。ロシアではその昔チャイコフスキーが故ニコライ・ルービンシテインを偲んでピアノ三重奏曲「ある偉大な芸術家の思い出に」を書いて以来、音楽関係者の死去に際してピアノ三重奏曲が書かれる慣習があるのだそう。
第1楽章は面白いことにチェロがより高い音域を(弱音器をつけたハーモニクスによる挽歌)、ヴァイオリンは6小節遅れで低い音域で同じ旋律を奏でる。第2楽章はスケルツォ楽章できびきびとしているが、第3楽章は哀悼の念を含んだ緩徐楽章、第4楽章は第3楽章から切れ目なく演奏され、「ユダヤの旋律」を中心主題としている(弦のピチカートに導かれてピアノがユダヤ民謡風のシニカルな旋律を奏し、執拗に繰り返される)。終楽章については、墓場を歩き回るというイメージで作曲されたという説もあり、ヴァイオリンがピチカートで呈示する主題が、墓場に眠る遺骨の上をうろつく男を描写しているとも言われた。
この演奏、ほんっとに素晴らしかった
長年の付き合いのお三人だからこそだと思うが、互いに互いを気を遣うこともなく自分が好きなように自由に弾いているようで各自のよさが出ているし3人のブレンドされた音楽がもう表現のしようがないくらい素晴らしい~~
これはあくまで個人的な所感なんだけど、この音楽祭ではアルゲリッチはよく日本人の演奏家とも共演することも多いが、その場合アルゲリッチは頻繁に弦たちの方を向いて結構気を配りながら弾いているように見えることが多い。そして自分が先導しながら皆を導いているような感じがする。 でもこういうヴィルトゥオーゾ同士だとそこまで気配りする必要もなく、好きに自分の音楽に没頭できている気がした。
第2楽章の冒頭、ピアノの繰り返される和音の強打、アルゲリッチは非常にゆっくりと”ため”を作って弾いた。まるでなにか”鉄槌を下す”かのよう。客席も波を打ったように静まり返っていた。 クレーメルも2021年以来3年ぶりに聴いたがまったく衰えていない。彼の奏でる音はほんとに素晴らしくてたまらん 若いときのとんがったキレキレの音とはまた違って年齢を重ねて温かみも帯びたなんともいえない音。
曲の最後、消え入るように終わると同時にどっかで鳴った携帯のジリリリという音・・(電源切ってない奴、アホか!)
ただね、もうその音さえも音楽に吸収されて曲の一部になったかのようで、3人の音楽が打ち消していた。 この3人でこの作品を聴けて本当によかった
ショスタコ天才!!最高!!
当日の演奏の様子 ©脇屋 伸光
(画像は音楽祭の公式HP 「コンサートレポート」よりお借りしました)
こちらの演奏もとっても素晴らしいです
ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第2番(30分40秒)
/ ルノー・カプソン (Vn), エドガー・モロー (Vc), マルタ・アルゲリッチ (Pf) (2016年10月)
アンコールは2曲。
シューマンの幻想小曲集 イ短調 op.88とシューベルトの「君はわが憩い」 D776 op.59-3。
2曲目の「君はわが憩い」は3年前のサントリーホールでも演奏された。
原曲は歌曲なんですが、本当に素敵な旋律でこれ聴くとなんだか泣けてしまう
この日も流涙・・・ なんて美しい旋律なんでしょうね。
こちらはマイスキーのチェロ(ピアノ伴奏)のみですが、この日は3年前と同じくヴァイオリンとチェロが交互に主旋律を弾きました。この曲知らない方はぜひ聴いてほしいです。
シューベルト:「君はわが憩い」 D776 op.59-3(4分)
この日の私の席は4階だったけど、音響も視界もまったく問題なく、とにかく3人の演奏が聴けて大、大満足でした
これは当日配布された無料パンフですが、帰りにあまったポスターも無料で持って行っていいよ~ってことで(これ毎年別府ではそうだと思う)持ち帰りました
2日後はクレーメルとのデュオ・リサイタルを聴いたのでそれについてはまた後日。