目からウロコ!?の九響おんがくアカデミー ~3月の定演編~ | Wunderbar ! なまいにち

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まだまだひよっこですがクラシック大好きです。知識は浅いがいいたか放題・・・!?

2024. 2. 6(火) 18 : 30 ~  アクロス福岡円形ホールにて

 

<目からウロコ!?の九響おんがくアカデミー>

「 涙と笑いの大活劇~R.シュトラウスの世界をさぐろう」(対象公演:第419回定期演奏会)

 

お話:堀 朋平(音楽美学 九州大学ほか非常勤講師/住友生命いずみホール音楽アドバイザー)

 

九響メンバーによる演奏:

ベートーヴェン:チェロ・ソナタ 第3番 第1楽章

 

チェロ:白水大地(九響 チェロ奏者)

ピアノ:白水風歌(賛助出演)

 

     

 

     左差し 今回の対象公演

 

講師の堀朋平先生より今回のお話について:

 

『 ベートヴェンの時代からおよそ100年。ヨーロッパ社会は混迷をきわめ、人々はまっすぐな英雄のイメージをすなおに信じられなくなっていました。そんな時代に、さまざまな外界に揺られる自分を「英雄」に見立てたシュトラウス。伴侶のささやきあり、いくさの轟音あり、にっくき批評家の戯言あり・・・・最後はなぜか”ほっこり”してしまう、そのユーモラスな世界をご紹介します。』

 

今回もひとりで参加。ほんとはオットとふたりで参加予定だったんですが、COVID-19に感染してしまい・・・不安

 

今回は小泉さんが音楽監督として最後の定演の演目となる「英雄の生涯」について。

作曲者のリヒャルト・シュトラウス (1864-1949) の生涯については、彼の命日の9月8日に書いたことがあります下差し

 

 

都響のサイト内にも小室敬幸氏による解説があります。詳しくて面白いです。

 

 

 

まずは堀先生のカラオケレクチャーコーナーカラオケ

以下当日もらった堀先生の資料を載せておきます。

 

 

ちなみに父親はミュンヘン宮廷歌劇場の首席ホルン奏者だったフランツ・シュトラウス (1822-1905) 、母親はプショール醸造所の娘のヨゼフィーネ (1837-1910)

前妻との間にもうけた二人の子どもと死別していたフランツは1863年にヨゼフィーネと結婚、翌年リヒャルトが誕生しました。

 

aya 母親のヨゼフィーネの実家のプショール家は、今でも「ハッカー・プショール」下差しのブランド名で知られるミュンヘンを代表するビール醸造所を営むブルジョワでした。ハッカー醸造所は1417年創業の名門で、1793年にハッカー家の娘婿が独立したのがプショール醸造所、その後に統合したのが「ハッカー・プショール」です。

 

 

 

ちなみに1898年当時1マルク=500円くらいだそう(堀先生より)

 

 

 

 

R.シュトラウスは全部で14曲の交響詩を書いている

 

 

この作品の大きな特徴は”コーダがとても長い”ということ。

”かけあがる英雄”:堀先生いわく、”躁的な始まり”

 

aya この作品はベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」と同じ変ホ長調を主調としています。

シュトラウスは日記に作曲の進捗を記していますが、その中で最終的なタイトルを "Ein Heldenleben" とするまでは、この曲のことを "Eroica" (エロイカ)と呼んでいるそう。楽譜にもエロイカと書いているそうです。 友人に宛てた手紙にも『近頃ベートヴェンの英雄交響曲は人気がなく、演奏されることも少ない』と冗談を言い、『そこで今、代わりとなる交響曲を作曲している』と述べているそうです(←えらそ~指差し 個人的感想w)この作品中には自分の作品からの引用の他、ベートヴェンの「英雄」のフレーズも断片的に引用されています(以上wikipediaより)

 

 

上の楽譜内の赤枠で囲んだ部分、チューバによる旋律は”うなだれる英雄”だそう

「禁則5度」⇒ ”間違ったことを言っている”という意味だそう
 

前述の小室氏によると、この122小節から5小節周期で繰り返される空虚5度の低音フレーズは「あくび」のようなものを表しており、評論家の「無関心」「無能さ」つまり英雄への無理解を暗示しているとのこと。

”空虚5度”(:三和音の3度の音を省いた完全5度のみの和音。長調・短調いずれの性格も持たず空虚な印象を与える。ベートヴェンが交響曲第6番「田園」や第9番の冒頭で使用したことでも有名)、しかも連続5度を用いることによってさらに効果的に表現されています。連続5度は和声学では厳密には「禁則」とされており、これを無理解の表現に用いたシュトラウス、すごし。

 

 

 

 

第3部「英雄の伴侶」では妻パウリーネを表すとされるヴァイオリン・ソロが登場しますが、このスライドのように、そのソロに対する多彩な指示(←しつこいともいえる指差し あくまで個人的感想w)が楽譜には記されている。

 

 

第4部「英修の戦場」は「展開部+再現部」に相当する

 

突如舞台裏からバンダのトランペット🎺が鳴り響き、敵との戦いが始まります。

敵を表す金管群、木管群が鋭く英雄を非難しますが、英雄(=低弦とホルン)は雄々しく戦います(ホルンが英雄のテーマを吹く)。伴侶(ヴァイオリン)も英雄を支えます。

これまでのテーマ、動機が現れ展開され、ティンパニ、バスドラム、テナードラムの乱打も加わり激しい戦いのシーンが繰り広げられます。敵は圧倒され、英雄の一撃で敵は総崩れとなり、英雄の華々しい勝利が謳い上げられ、英雄と伴侶は手を携えて登場します。(前述のwikipediaより)

 

aya スライド左上の絵画について:

 

「ドイツ皇帝即位宣言式」アントン・フォン・ヴェルナー画

 

aya 19世紀に入り、プロイセン王国が勢力を拡大していき、1864年のデンマーク戦争、66年の普墺戦争に勝利してプロイセン盟主の北ドイツ連邦が成立、普仏戦争に勝利すると、1871年1月18日ドイツ帝国が成立しました(第2帝国といわれる)。 

この絵はプロイセンのヴィルヘルム1世がベルサイユ宮殿の鏡の間で統一ドイツ帝国の樹立を宣言したときの様子が描かれています。

中央の白い軍服を着た男性がビスマルク、その隣で帽子を掲げている人物が近代ドイツ陸軍の父と呼ばれるモルトケ、壇上にはドイツ諸侯が並び、その前にはヴィルヘルム1世がいる。その隣がバーデン公。

 

 

第5部「英雄の業績」と第6部「英雄の引退と完成」は再現部~コーダにあたるが、これが全体の約4割を占める(コーダがこんなに長いのは他ではあまりない)

 

第5部は再現部~コーダ前半に相当、ホルンにより交響詩「ドン・ファン」から憧れのテーマが、弦により交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」のテーマが、続いて「死と変容」「ディル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」「マクベス」「ドン・キホーテ」など自作が次々の回想されます。

 

第6部ではイングリッシュホルンによる牧童の笛が鳴り響き、田園の情景が描かれます。

堀先生によると、イングリッシュホルンは時間的に隔たったものを回顧するときによく使われるそう。「ドン・キホーテ」の終曲のテーマが引用され年老いた英雄の諦念が表現されます。英雄は田舎に隠棲、過去の戦いを苦々しく振り返ったりもしながら自己の内部に沈潜していき、やがて年老いた伴侶に看取られながら静かに世を去ります。

 

aya なお、曲の終わり方にはいくつかのヴァージョンがあるそう。

ヴァイオリンとホルンのソロが静かに消え入るように終わる第1稿、一度金管群の和音で雄大に盛り上がってから終わる第2稿があるそう。wikipediaには第1稿による演奏は珍しいと書いてありましたが、私は第1稿の終わり方しか聴いたことないかも。

 

 

 

 

 

 

 

次は九響団員さんによる音譜演奏コーナー音譜

 

この日は白水風歌さん (ピアノ)、九響団員の弟の大地さん(チェロ)によるベートヴェンのチェロ・ソナタ第3番の第1楽章でした。

この曲生で聴いたのは初めて。突然ガッとくるようなとこがベートヴェンらしいな~と思いました。細かいとこを言えば若干音程が不安定になるところがたまにあったような気がしますがおふたりの演奏に聴き入りました。

 

渡邊主幹によると、この曲は作品番号69番、ちなみに67番は交響曲第5番「運命」で68番は第6番「田園」。主調はイ長調でピアノとチェロが対等に書かれており、チェロにとっても重要な作品とのことでした。

 

渡邊主幹より大地さんへ、「チェロ台がない状態で弾くのはだいぶ違いはある?」と質問、白水さんも「床に直接ピンを立てて弾くのは音量もだいぶ変わる」とのことでした。

 

 

最後にはてなマーク質問コーナーはてなマーク

 

渡邊主幹はこの「英雄の生涯」という作品が大好きだそう。N響時代に20回くらいは演奏したそうですが、最初のかけあがるテーマを吹くと武者震いするほどだそうw サヴァリッシュもホルンはリヒャルト自身でヴァイオリンが妻パウリーネだと仰っていたそう。

リヒャルトの父のフランツはバイロイトでも首席ホルン奏者として活躍した人物だったので、リヒャルトはホルンに詳しい。英雄のテーマは2オクターブくらいをホルンに吹かせる+チェロも同じ旋律を弾くが、これはチェロが音が外れやすいのでチェロに補ってもらおうというリヒャルトの意図なのでは?と仰っていたww

 

あとリヒャルトは子孫に財産が残るように色々とやっていたという話から、イギリスに持っていかれた楽譜とドイツにそのままおきざりにされた楽譜とでは著作権の関係で楽譜の借用料コインたちも随分違う、と仰っていました。

 

 

・シュトラウスはマーラーとの交友関係はあったのか。交響詩の作曲にあたってリストを意識したか。

➡堀先生より:マーラーとは書簡を交わしていた。交響詩を書くにあたってリストを意識したのは「歴史の必然」としてあったと思われる。

 

・今回小泉さんの勇退と「英雄の生涯」の選曲とは関係があるか。

➡渡邊主幹より:元々4年前に予定されていた東京公演もこの演目だった(カップリングは4年前はベートーヴェンの第4番だったが今回は第2番だが)が、4年前の当時と今年とはやはり音楽監督の集大成としてこの作品をやりたかったのだと思います、とのこと。

 

・白水大地さんの入団は2022年11月ですが、入団してどうですか。ご両親、お姉さまと音楽一家(堀先生がメンデルスゾーン一家みたい、と仰っていたw)だが、ご自身が音楽家になったのも家庭環境が影響しているのか。音楽家になってなかったらどんな職業に就いていたか。

➡白水大地さんより:両親が管楽器奏者だったので、自宅に防音室があったのは大きい。もし音楽家になっていなかったら・・・う~ん、想像できないです。 入団以来山本首席他たくさんの人にアドバイスをもらっていてとてもありがたい。いつも山本さんの横で弾いていて、迷惑をかけているかと思うと胃が痛くなると同時に嬉しい気持ちも大きい。

 

・「音楽主幹」というのはどんな仕事をするのか。

➡渡邊主幹より:主催公演のプログラムを決めたり、ソリストや指揮者も決める。もちろん九響の将来について考えており、新シーズンにマロさんをアドバイザーとして推薦したのも自分(渡邊さん)で、マロさんとの交渉もやりました。九響の向上のためによりよい指揮者を呼んだり、奏者のオーディションにも立ち会う。「聴衆とオケがコラボして一緒に成長していく」というのが目標、理想、と仰っていた。

 

 

客席にはチェロ奏者の宇野さんやヴァイオリンの山下大樹さんなども来てらっしゃいました。

 

左から2番目が白水大地さんのお姉様の風歌さん。

 

 

私は来週15日の定期演奏会と再来週20日の東京公演の両方に参戦します飛び出すハート

いつもアクロスで聴いている九響の音色がサントリーホールではどんな風に聴こえるのか、とても楽しみプードル それまで気を緩めずに元気で過ごさなければ。

 

 

ところでさ、あのさ、演奏会に行くひとたち~、マスクくらいしろよ! このレクチャーに参加するひとたちもマスクしろっつってんだよ!むかっ お前はいいけど周囲にうつす可能性もあることを忘れんなっつってんだよ!パンチ!

あ、あら、取り乱してしまいましたわね指差しオホホホ