6月5日 ~ マルタ・アルゲリッチ 誕生 | Wunderbar ! なまいにち

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まだまだひよっこですがクラシック大好きです。知識は浅いがいいたか放題・・・!?

皆さま、今日もお元気でお過ごしでしょうかあじさい

 

「今日はなんの日」のコーナーです。

出典は、近藤憲一氏著「1日1曲365日のクラシック」という本で、それにプラスαで書いています。

 

今日、6月5日は・・・私の最愛のピアニスト 「マルタ・アルゲリッチのお誕生日」バースデーケーキ です。

 

 

Maria Martha Argerich : 1941.6.5 ~; アルゼンチン ブエノスアイレス出身のピアニスト

 

今日はアルゲリッチの79歳のお誕生日~!! クラッカークラッカー

いや~めでたい、めでたい、めでたいです~~笑い泣き

 

私はアルゲリッチが大好きです。

彼女のピアノはもちろん、アルゲリッチというひとそのものが大・大好きです。

 

彼女の歩んできた人生を詳しく知りたい方は、この本をどうぞ下差し

 

オリヴィエ・ベラミー著  藤本優子訳 「マルタ・アルゲリッチ 子供と魔法」 (音楽之友社)

 

この本についてはこのブログでも今まで何度か紹介したかも。

 

よく言われるアルゲリッチのイメージとしては、本能の赴くままな演奏スタイル、自由奔放な人生と演奏、キャンセル魔、恋多き女、などなどだと思いますが、決してその言葉のまんまな人間ではない、ということがこの本でもよく分かるのではないかと思います。

 

アルゲリッチの打鍵の強靭さ、しなやかさ。鍵盤上を疾走する彼女の手は緊張とリラックス、そして正確さとすばやいスピード、これらを同時に併せ持っています。そして極上の音色・・・キラキラ

これらはブエノスアイレス時代に5歳から習った老教師ヴィンチェンツォ・スカラムッツァが、彼女に 肩、腕から手首、指にいたる解剖学的な知識からその奏法まで徹底的に叩き込んだものが基礎になっています。

ただ才能に任せて自由奔放に弾いているのではなく、”厳密な理論に基づいて”の魔法のような打鍵なのだと思います。

 

そして、ぷいとステージに出てきていとも簡単に難曲を弾いているように見える彼女も、日々ものすごく練習をしています。

それがどんなに弾きなれている曲であろうと、最初はたどたどしいくらいのテンポで、まるでカタツムリの歩みのようにひとつひとつリズムを確認し、難しいパッセージを滑らかに弾けるよう練習するそうです。(この練習法、前に書いたルドルフ・ゼルキンと似てますね)

初めての曲に取り組むときも、”ただごとではないくらい”練習するそうです。

和音の鳴らし方、指使い、和声と旋律のバランス、響かせ方などなど、本番の直前までもずっと模索しているそう。

どんなに”天才”といわれる演奏家でもその裏での絶え間ない普段の積み重ねがあるのだなと思います。 

『少しでも努力を怠ると聴衆に気づかれてしまうのよ』 とマルタ本人も語っています。

 

 

そんなアルゲリッチですが、過去に大病をしたことがあるのをご存知ない方も多いのではないかと思います。

 

1992年に臀部にできた皮膚癌(悪性黒色腫(メラノーマ))を切除しますが、3年後の1995年に同じところに再発、再度手術をして、その後インターフェロンの治療も受けました。

ところが翌1996年に、今度は肺に転移していることが分かり、完治の可能性はわずか(余命6か月~9か月)と言われました。当時は肺に転移した場合は手術をためらうことが多かったそうですが、1997年にマルタはロサンゼルスで肺の転移巣の切除を受けました。

(このとき入院に付き添ったのがピアニストの海老彰子さんだそうです)

 

ただ当時は今のように胸腔鏡のような侵襲の少ない手術法がなく、肺の切除のためには胸郭までばっさり切開しなければならず、筋肉の一部も切り取ることになるため、マルタは今後の演奏に支障が出るのでは、という不安を手術前日に申し出たそうです(その際前述した恩師スカラムッツァの解剖学の絵が思い浮かんだそう。さすがです)。

そしてマルタは医師の前で、テーブルの上でピアノを弾くシュミレーションを行い、医師たちは広背筋が重要な役割を果たしていること、それを傷つけないようにと電気メスを使わずに手術をしてくれたそうです。 (上記の本より)

完治は難しいと当時いわれたマルタが、その後23年経った今でも再発もなく今に至り、演奏も以前のように支障なくできるのもこのときの医師ドナルド・モートン氏たちのおかげなんですよね~。本当に感謝です泣く

 

余談ですが、術後3日目に真紅のバラの巨大な花束ブーケ1を抱えてお見舞いに来たのが幼なじみのバレンボイム、そしてメータだったそう。

 

バレンボイムとは今も仲良し。

(というか、バレンボイムがアルゲリッチをあちこち引っ張り回してる気がします・・・)

これは2017年11月にウィーン・フィルと共演をしたときの写真です。

 

なんとアルゲリッチはこのときがウィーン・フィルと初共演だったのです。

なぜウィーン・フィルと今まで共演しなかったかというと、ウィーン・フィルが今までは女性団員の入団を許していなかったからだそうです(まあ入団するようになってだいぶ経ちますけどね)。ウィーン・フィルが女性団員を忌避する以上、女性である自分もソリストとして共演しない、といういかにもアルゲリッチらしい理由だと思います。

アルゲリッチはその突飛な行動や発言の言葉尻ばかりがとらえられ、注目されがちですが、ちゃんと彼女なりの論理的な理由があるんだと思います。

 

 

アルゲリッチは1983年頃(41歳ころ)を境にソロ・リサイタルを行わなくなりました。

リサイタルでの極度の緊張を強いられるのに耐えられなかったようです。

『 ピアノを弾く機械にはなりたくないのです 』 と当時語っています。

 

今でも本番のステージ前の緊張具合は変わりないみたいで、この下差しドキュメンタリー映画の中でも別府音楽祭のステージの前に、やたら不機嫌でいら立ち、「私熱があるのよ」などと愚痴っている様子が映っています。(でもプロデューサーの伊藤京子さんが「はいはい、わかったわかった」となだめすかしているぷ

 

「アルゲリッチ 私こそ、音楽!」 (DVD) (2014年)

(これは三女のステファニー・アルゲリッチが監督を務め撮ったものです。私は映画館で観ました(記事はこちら))

 

盟友のクラウディオ・アバドはステージに出ていくのを怯える彼女に、「さあ、マルタ、美しい音楽を奏でに行こう。」と促したりしていたそうです。

 

若いころのアバドとアルゲリッチ(1968年頃かな?) セクスィ~~ラブ

 

 

モーツァルトのピアノ協奏曲第25番と第20番

昨日の記事にもこのCDのyou tubeを載せました。

 

これは2013年3月のルツェルン音楽祭でのライブ録音盤です。翌年の1月にアバドは逝去したので、これが二人の最後の共演となりました。

アルゲリッチといえばあまりモーツァルトのイメージがない方も多いかもしれませんが、私はこの演奏大好きです。アルゲリッチのモーツァルトは実にキュートハート、コロコロと転がる音色が私にはなんだか可愛らしく思えますうっとり顔・ネコ恋

 

 

今ではソロではアンコールですらほとんど弾かない彼女ですが、別府音楽祭でマラソンコンサートといって彼女の3人の娘たちと一緒に共演したことがありましたが、そのときは娘たちがピアノのそばにいる状態だと結構ソロで弾いていました。安心できる存在がそばにいると心が落ち着くのかな。 そして娘たちへの彼女の視線の優しいこと。やっぱりお母さんなんだなと思いました。

 

前述したドキュメンタリー映画の中でのシーン。3人の娘たちと。

 

 

映画「アルゲリッチ私こそ、音楽!」予告編  (2分9秒)

 

 

協奏曲や室内楽でも十分に彼女の魅力が堪能できます。

いつ聴いても驚かされるのは、彼女がいつも共演者たちの持っている実力以上のものを引き出すことです。まるで彼女の魔法にかかったかのよう。そして結果としてとても素晴らしい演奏になるのです。彼女は室内楽奏者としてもものすごい演奏家だと思います。

昨年の別府音楽祭でピアニストだけ変わってあとのメンバーは一緒、という場面がありましたが明らかに演奏濃度が違った気がしました。彼女がピアノだと共演者の方たちはすごく演奏しやすいのではないかと思いました。

 

彼女の魅力を語りだすともぉ~止まりませんのでにやり 今日の曲にいきたいと思います。

近藤氏が選んだ今日の1曲は、ショパンのスケルツォ第3番です。

実際の演奏動画があったのでそれを載せます。

 

ショパン:スケルツォ第3番 嬰ハ短調 Op.39   (6分59秒)

/ マルタ・アルゲリッチ

1965年のショパン・コンクールの2次審査から~と書いてありましたが、コンクールのときのものではないのでは?と思います(スタジオみたいだし・・)

 

20代のアルゲリッチの演奏は瑞々しいです。とても慎重に弾いている気もします。

 

 

ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調 (23分39秒:第2楽章;8分40秒~、第3楽章;18分44秒~)

/ マルタ・アルゲリッチ (Pf), ユーリ・テミルカーノフ&ロイヤル・ストックホルム・フィル

(2009年 Nobel Prize Concertより ライブ)

 

テミルカーノフと共演したこともあるんですね~!

第3楽章など圧巻の弾きっぷりです音譜

 

 

毎年楽しみにしている別府アルゲリッチ音楽祭は今年は中止になってしまいました。

1998年に始まったこの音楽祭だけは毎年欠かさず来ていたアルゲリッチ。熊本地震があったときも、「今こそ来ないと」と言って来てくれました。

今年は来られなくなって彼女自身もさぞかし残念だろうと思います。

来年お元気なお姿を拝見できるのを楽しみにしています!

 

そして、過去に別府音楽祭で演奏したギトリスとのフランクのヴァイオリン・ソナタが6月10日まで現在無料配信中です。下記をクリックするとアルゲリッチのメッセージなども見れます。下差し

 

◆    【アルゲリッチからあなたへ】
(Vol.2)C. フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調 
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)、イヴリー・ギトリス(ヴァイオリン)
無料公開期間:2020年5月20日(水)〜6月10日(水)
動画はこちら → https://www.argerich-mf.jp/to_you.shtml

 

年と取っても、本当に可愛らしいアルゲリッチ、大好きですはーと