2019. 11. 23 (土) 14 : 00 ~ サントリーホールにて
<プロムナードコンサート No. 384>
【五大陸音楽めぐり③ 「ロシア・グレイテスト・ヒッツ」】
ショスタコーヴィチ:祝典序曲 イ長調 Op.96
ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 Op.43
(ソリストアンコール)
プーランク:愛の小径 FP106
チャイコフスキー:幻想序曲 《ロメオとジュリエット》
チャイコフスキー:祝典序曲 《1812年》 Op.49
ピアノ:サスキア・ジョルジーニ
指揮:エリアフ・インバル
東京都交響楽団
(コンサートマスター:四方恭子)
前日のミューザでのRCOのチケットをとったときに、オットが「せっかくだから翌日も何かあったら聴いて帰りたい」と提案、この日の同時間帯には在京オケのコンサートが目白押しで、それにもびっくらしたんだけど、オットの希望でこの公演にした。席も残り少なかったようなので、とれてラッキー!
今回の都響の公演は「プロムナードコンサート」というらしい。九響の「名曲・午後」シリーズみたいなもんだろうか?”2019年度のプロムナードコンサートは、来る2020年の気運醸成の意味も込め、「五大陸音楽めぐり」というテーマのもと、いつにも増して多彩で親しみやすいプログラムをお届けします。”とパンフに書いてあった。
この日はその「五大陸音楽めぐり」の第3弾で、ロシアものだった。これもラッキー!
エリアフ・インバル (Eliahu Inbal: 1936~)さんを聴くのは2度目。今年都響の福岡公演でショスタコの5番などで初めて聴いた。インバルさんも今年83歳なんだなぁ。とすると、ズービン・メータと同じ年、小澤征爾さんのひとつ下ということだ。 ステージに登場したインバルさんは足取りもしっかりしてとてもお元気そう。カーテンコールのときなど小走り気味で出てきてた
70-80代くらいで大病をすると男は(女もそうだろうけど)ガクッと弱ってしまうのだろうか、この3人の中では一番お元気そうだ。
インバルさんは今年8月に台北市立響の首席指揮者に就任されたそうだ。
1曲目はドミトリー・ショスタコーヴィチ (1906-75)の祝典序曲。
これ6分くらいの曲。前もってyou tubeで予習したのだが、初めて聴いたとき 「なんだ~、ショスタコもこんな華やかで明るい曲も書けるんじゃん!」(←えらそー。)と思った。
もともとは1947年に10月革命30周年の記念演奏会に向け作曲されたが、当時はなぜか演奏されなかった。7年後の1954年11月にボリショイ劇場管の革命37周年記念演奏会に際して突然声がかかり、ショスタコーヴィチはわずか3日間で先の楽譜から指揮譜とパート譜が書き上げられ初演に至った。 スターリンの死の翌年に完成されたことから、スターリン体制からの解放を密かに祝って作曲されたのではないかと訝る説もある。
この曲はショスタコーヴィチが指揮を振った唯一の楽曲だそう(1962年11月 ゴーリキー・フィルハーモニー管弦楽団)。ショスタコーヴィチは、序奏のファンファーレに続く主部の速度について「速ければ速いほどいい」と度々語っていたという。1980年にはモスクワ・オリンピックでも演奏された。
この日の席はRA席に近いRB席。都響は福岡公演で2度聴いているが、2度ともステージからはるか遠くの3階席で聴いたので、都響全体をこんなに間近で聴いたのは初めて。
で、あらためてうまいな~と思った。特にこの曲で活躍する金管!輝くような華やかな音色でうっとりした。
演奏が終わってインバルさんが奏者を立たせるまで全く気付かなかったのだが P席の一番後ろにバンダの奏者たち(トランペット4、トロンボーン4)がいた!!
私の席からは演奏が終わって舞台袖に引っ込んだインバルさんがよく見えたのだが、引っ込むたびに水をごくごく飲んでいた。1回カーテンコールがあったあとに拍手が止んだ。インバルさんは舞台袖でまた出てくる用意はしていたようだが、拍手が止んだのを見て、「よし」と頷いて奥に去っていった。
前半最後はセルゲイ・ラフマニノフ (1873-1943)のパガニーニの主題による狂詩曲。
ソリストはイタリア出身のサスキア・ジョルジーニ (Saskia Giorgini)さん。2016年のモーツァルト国際コンクール優勝者らしい。
ポニーテールにして金色のようなラメ入りのノースリーブの細身のドレスを着ていらしたが、スタイルもよくてとってもかわいい
サスキア・ジョルジーニ
パガ狂を聴くのは3度目。前2回はゴルラッチ、横山幸雄両氏で聴いた(オケはいずれも九響)。女性ピアニストで聴くのは初めてだったが、女性らしいきめ細やかなパガ狂だったと思う。ただ力強い変奏のところは若干の物足りなさも感じたかも。(ただし自席の位置からしたらピアノの音がきちんと判断できたかは疑問)
アンコールのプーランクの「愛の小径」が彼女らしさが出ていてとってもよかった!
(アンコールの間、インバルさんは舞台袖奥に置かれた椅子に座って聴いていたみたい。)
後半最初はピョートル・イリイチ・チャイコフスキー (1840-93)の幻想序曲「ロメオとジュリエット」。
この曲の実演は4度目くらいなのだが、今年2月に聴いたクルレンツィス&ムジカエテルナの演奏がなんといっても強烈なインパクトがあった(そのときの記事はコチラ)。このコンビはこのときの公演の前公演でもアンコールにこの曲を演奏、そのときもぶっ飛んだ。
視覚的にもクルレンツィスの激しい指揮振りの様子が強烈な印象で、私は以後この曲をCDなどで聴くたびに、あのときの演奏と指揮の様子がまざまざと思い浮かぶくらいなのだ・・・
この作品は、チャイコフスキーが先輩であるミリイ・バラキレフ (1837-1910)の提案を受け、1869年に完成させた。翌1870年の初演後に第2稿を、その10年後に第3稿(決定稿)、と改訂している。
都響の演奏は、キャプレット家とモンタギュー家の両家の対立など激しくドラマティックな場面では、やはりムジカエテルナに比べるとやや大人しめ、もっと劇的な、キレのある演奏だったらいいなと思ったが、一方でロメオとジュリエットの甘美な恋を描く場面や暗く悲しげな場面などでは弦の美しさが光っていた。
ただ全くの余談だが、今月9日の九響以来ずうっと外来オケを聴いてきたせいもあるのか、RB席から第1ヴァイオリンの弾くさまを見ていると、(テルマエ・ロマエ風に言うと)大勢の”平たい顔族”がきれ~いに揃ったボウイングをしているのは、なんだか一種の宗教儀式のように思えてきた・・・ 日本のオケって感じがした。
最後は同じくチャイコフスキーの祝典序曲「1812年」。
この曲は1881年に開催される予定だったロシア芸術産業博覧会のために書かれた(が、皇帝アレクサンドル2世の暗殺により翌年に延期された)。依頼したのはニコライ・ルビンシテイン (1835-81)。チャイコフスキーはこの種のテーマで作曲することが好きではなく、乗り気でなかった。完成後もパトロンのフォン・メック夫人 (1831-94)への手紙の中で、「たいした熱意も愛着もなしに書いたものです」と記しているそうだ。
この曲、映画「のだめカンタービレ」でも使われていたのを思い出すが、私はクラシックを聴き始めたころにこの覚えやすいメロディーが大好きで、しょっちゅう聴いていた。
「いつか生で聴いてみたい」とずうっと思っていて、一昨年11月にフェドセーエフ&TSO (チャイコフスキー・シンフォニーオーケストラ)で初めて聴いたのだが、正直若干緩かった。
この日は生で2回目に聴く「1812年」。
この演奏、めちゃめちゃよかったー 私的にはこの日一番の演奏だった!
これこそ私がずっと聴いてみたかった1812年!
まず冒頭のチェロと2本のヴィオラ(なんで2本だけなんでしょうね)が弾くロシア正教の聖歌「主よ、民を守り給え」。チェロは第1ヴァイオリンの対面だったので、自席から見たら全くの背中を向けて弾いていたのに、めちゃめちゃ響いてきて(チェロの後ろのコントラバスも同様)、これにはびっくりした。
オーボエなどの木管群、すべてうまい!
そして煌びやかな金管!今度はバンダの方々の演奏も見逃がさずにしっかりと見届けた。
最後鐘(チューブラーベルと大きな3つ?くらいの鐘が舞台の両端に配置)が鳴り響き始めるあたりからは、感動で涙が出た やっぱこの曲って聴くと気分が高揚しますよね~。
インバルさん、最後バンダにキュー出しするとき、顔が真っ赤になっててあまりに勢いよくキュー出ししたもんだからちょっと前のめりになって足元が一瞬ふらっとなったくらい、熱くなっていた。
カーテンコールではインバルさんが各奏者を立たせていたが、最後コンミスの四方恭子さんが何やらインバルさんに仰って、そのあとチェロとヴィオラのおふたり(おひとりは店村眞積氏)を立たせていた。四方さんがきっとインバルさんに立たせるように指示したんですね。さすがPTA会長(のように見えたw)。
都響はうまいなぁ。今回特に木管と金管のうまさに驚嘆した。
それから第2ヴァイオリン首席の遠藤香奈子さんはこないだ九響の客演もされてた方だと思う。
終演後にインバルさんとジョルジーニさんのサイン会があったので参加した(CDでもパンフでも何でもOK)。
私の前に並んでた方はインバルさんに英語以外でヘブライ文字でもサインを書かせていた(しかも2か所、計4つのサイン・・)。
今度はインバルさんのショスタコーヴィチ、マーラーやブルックナーを聴いてみたい。