ゲルハルト・オピッツ ピアノ・リサイタル: ベートーヴェン、バッハ、ブラームス | Wunderbar ! なまいにち

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まだまだひよっこですがクラシック大好きです。知識は浅いがいいたか放題・・・!?

2018. 12. 9 (日)  14 : 00 ~     福岡シンフォニーホールにて

 

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 Op.27-2 「月光」

 

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第23番 へ短調 Op.57 「熱情」

 

J.S. バッハ:パルティータ 第5番 ト長調 BWV 829

 

ブラームス:ピアノ・ソナタ 第2番 嬰へ短調 Op.2

 

(アンコール)

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第17番 二短調 Op.31-2 「テンペスト」より 第3楽章

 

ピアノ:ゲルハルト・オピッツ

 

 

また1週間前のコンサートの話です。

オピッツさんを聴くのは2回目。前回はちょうど1年前の九響の定演で(指揮は小泉和裕氏)ベートーヴェンの「皇帝」を聴いた(そのときの記事はコチラ)。

今回は初めてソロ・リサイタルを聴いたのだけど、率直に言って・・・

 

ほんっとにすんばらしかった!!!!泣く泣く

 

ゲルハルト・オピッツさんは1953年バイエルン州生まれドイツ ヴィルヘルム・ケンプに師事し、1977年第2回アルトゥール・ルービンシュタイン・コンクールで第1位となる。日本では1994年にNHKテレビのベートーヴェン・ソナタの演奏&レッスンが人気を博した。(私は観ていない。残念!!)最近では2016年にザルツブルク音楽祭でムーティ指揮のウィーン・フィルと共演。2015年からスタートした「シューマンxブラームス連続演奏会」も好評だそう。親日家であり、1年のうちの4分の1は鎌倉で過ごしているのだそうだ。ブタ

 

ステージに登場したオピッツさんは黒の背広に黒のシャツと全身黒のいでたち。ちょっとお腹が出たふくよかなお身体とおひげ、そして優しそうな笑顔がカーネルサンダースカーネルおじさんかサンタさんサンタみたいふふっ

 

 

1曲目はベートーヴェンのピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」 ・・・・・ のはずだったが、

弾き始めたのは第14番「月光」。 あれっ?と一瞬思ったが、”そっか、テンペストと思ってたけど私の思い違いだったかも”と思い直して演奏に集中することにした。

 

この「月光」、素晴らしかった! ここ最近は若手の方々でこの曲を聴く機会が多かったが、個人的にはオピッツさんの「月光」が一番好きかも。

第1楽章の深淵な音、そして第2楽章のなんて美しい音!もうここまででウルウルとなってしまった泣く オピッツさんは各楽章の最後の音をポーーーンとのばしたまま間をおかずに次の楽章へ入る。このやり方私はいいなと思った。聴いているこちらも集中力が途切れなくていい。

激しい第3楽章も、例えばテクニック的にいえばお若い反田恭平さんの方がスピードや切れ味の鋭さはあるかもしれない。ただ技術的なもの以上のこちらにたたみかけてくるものがオピッツさんにはあると思う。私はどちらの演奏も大好きだ。

 

「月光」が終わって一旦舞台袖に去られてまた出てこられたときには、なぜか女性の方を伴っていた。??? そして、オピッツさんはお辞儀をしたあと話し始めた。

「Ladys and gentlemen, I'm so sorry...」と話し始めたので、私は「ええっ!?まさか体調不良か何かでこれでコンサート終わるんじゃあ!?ええまさかsei焦」と思ったら、 1曲目が予定されていたテンペストじゃなくて月光を弾いたことを謝罪されていた。for some reasons とおっしゃっていたが、どうやらうっかり間違いだったみたいだシュミ 女性の方は通訳の人で日本語で「これからは予定通りの曲を弾きますので引き続きお楽しみください」とおっしゃった。

「もお~~いいんですよぉ~。こっちだって月光が聴けるなんて儲けもんですわよ!謝るだなんて何をおっしゃいますやら!aya」と心の中で(うっかり声に出しそうになったかお)オピッツさんに語りかけた。

 

 

そしてそのまま2曲目の「熱情」。 これも8月に反田さんの演奏を聴いた。

これも本当に素晴らしかったビックリマーク この曲も楽章間の間をおかずに最後の音をのばしたまんま次の楽章へ入っていた。 一番感動したのが月光の第2楽章と同じく、やっぱり第2楽章。

的確な単語が見当たらないほどのただただ美しい音色なのですキラキラ 元々この第2楽章が好きというのもあるが、聴いているとなんだか励まされるような、エールをもらっているような気持ちになった。 打って変わっての第3楽章も素晴らしい。失礼だが、このお年でこんなに指が回るなんてすごい。 

そういえば反田さんのこの第3楽章も鳥肌が立つくらいすごくて感動したのだが、あとでのスピーチでご本人が「最後の1分でお客さんが最高潮に達するように構成を考えて弾いた」というようなことをおっしゃっていたが、その言葉のように反田さんの演奏は観客を意識した(もちろんそれだけではないだろうが)ものなのだろう。 一方オピッツさんの演奏(意識)はそれとは相反するところにあるのではないだろうか。曲にひたすら忠実に真摯に向き合っている、というような、曲と自分との対話、それを私たちが耳を傾ける、というような気がした。

で、やっぱりどちらの演奏もいいなと思う。

 

 

休憩後の後半最初はバッハのパルティータ第5番。

オピッツさんはご自分で楽譜を持ってきて眼鏡をかけてご自身でめくりながらの演奏だった。

(ちなみに私自身は楽譜をみながらの演奏には全く違和感はない。かつては後年のリヒテルも前に聴いたツィメルマンも楽譜をみながら演奏していた。楽譜を見ようが見まいが生み出される音楽がよければそれでいいかもと思う。)

この曲は聴き流したことがあるくらいで、ちゃんと聴いたことがなかった。今回予習もできなかたのでほとんど初聴きに近かった。 だけどすごくよかったです!

 

メモカキコ ここでちょっと自分の備忘録のためにパンフに書いてある解説をメモっておきます。

バッハが残した組曲形式によるクラヴィーアのための3つの曲集が「フランス組曲」「イギリス組曲」とこの「パルティータ」。「パルティータ」はそれまでの組曲の形式の崩壊を告げる作品と評され、それまでにない自由なアイディアが盛り込まれている。今回の第5番は7曲構成で、特にその傾向が顕著な一曲。

1.プレアンブルム(前奏曲);トッカータとイタリア風協奏曲をミックスしたような曲。2.アルマンド 3.コレンテ;イタリア風コレンテにみられる大胆なシンコペーションのリズム 4.サラバンド 5.テンポ・ディ・ミヌエッタ;「メヌエットのテンポ」でと題されているが楽想はおよそメヌエットではない 6.パスピエ 7.ジーグ:フーガの技法が駆使され本来のジーグのテンポ感とは異なる6/8拍子となっている。

 

たしかに、まさにバッハなんだけどちょっと斬新な曲風にも聴こえたような。オピッツさんの演奏は前半のベートーヴェンのピアノ・ソナタとはまた違って、軽やかだけど凛としたとてもクリアな音だった。そしてすべての指が全く均等な音。バッハを弾くとますますその美音が発揮されている気がした。

オピッツさんは楽譜を見ているときはほとんど手元を見てない。でもミスタッチが全然ない。

くそ難しいバッハ(私は昔大嫌いだったw)をこんなに簡単そうに楽しそうに弾けるなんてそれだけでもすごい・・・

 

 

最後はブラームスのピアノ・ソナタ第2番。 念願のブラームスのピアノ・ソナタ初聴き!泣き1  ほんとは1番が最も好きなんだけど、2番も3番もいいなと思う。

2番は3曲のピアノ・ソナタの中で一番最初に作曲されたもので、ブラームスが19歳という若いときに作られた作品。第1楽章最初から力強いオクターブの連打など、若いブラームスのほとばしる情熱が感じられるような気がするし、一方第3楽章の中間部の美しい旋律を聴くと、郷愁の念のようなものが胸いっぱいに広がってじーんとなる感動 私が一番好きなこの部分、それはそれは美しい音色だったきらきらキラキラ

う~ん、他のピアノ・ソナタも聴いてみたい!

 

 

アンコールは、本当は弾くはずだったベートーヴェンのピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」の第3楽章プードルわーい

オピッツさんは、「テンペストの第3楽章」と流暢な日本語で紹介された。

このアンコールが、またまたもぉ~もぉ~~~素晴らしくってビックリマーク泣く

最後は「あ~終わっちゃう。この音色をずっとこのまま聴いていたい!」と思いながら聴いていた。

 

 

オピッツさんのソロ・リサイタルを初めて聴いたが、本当に素晴らしかった。

この日は3列目の左側で手元が十分見ることができたが、オピッツさんの手は大きくない。むしろ小さい方?肉厚で指も短いような気がする(バレンボイムの手と似ている)。でもこんなに指が回るなんてほんとにすごい。

 

特に感動したのが、第一はその美しすぎる音色キラキラ そしてその限りない美音から生まれる慈愛にあふれた音楽オンプ このふたつに尽きる。

そして何の策も弄することなく真摯に曲に向き合う姿を見ている(聴いている)と、何だかホッとする。

昨年聴いたダン・タイ・ソン、そして前に聴いたペーター・レーゼルに相通じるものがあった。

このくらい人生経験を経た方を聴くととても味わい深くて、ピアノを聴くというよりその方々の人生を垣間見るような気もする。そして力が抜けてホッとする。こういうところが若手の方々とは違う魅力かもしれない(あくまで個人の主観)。

多分私の年齢も大きいと思う。私がもっと若ければこうは感じられないかもしれない。

またぜひ聴きたい!うっとり顔・ネコ恋