『ロシア紅茶の謎』 | えにーの読書感想文

えにーの読書感想文

読んだ本の説明や感想なんかを書いていきます。主にミステリーや歴史・皇室関係についてが多いと思います。
未読の本の内容を確認する際にも参考になれば幸いです。


『ロシア紅茶の謎』

有栖川 有栖、講談社文庫、1997年



「証拠?こんないきあたりばったりで杜撰な犯罪が証拠を遺さないと信じているんじゃないでしょうね」


アパートの管理人が殺害された。彼は屋根裏を徘徊して、住人の生活を覗く趣味があったようで、その住人のなかに髪の長い若い女性を狙う連続殺人犯がいることを知り口封じのために殺されたとみられた。(『屋根裏の散歩者』)

マンションのベランダから転落した外国人女性。目撃者によると争っているようなもう1人の人影があったが、部屋のドアチェーンはかけられ密室状態だった。さらにこの女性の愛人の妻が20分後に電車にひかれ死亡していた。(『赤い稲妻』)

新進気鋭の作詞家が自宅での忘年会の席で毒入りのロシア紅茶を口にして死んだ。被害者を含めた6人が紅茶を飲んだが、毒が入っていたのは被害者のカップだけだった。しかも、容疑者たちからは毒を入れていたであろう容器も見つからず、いつ、どのタイミングで毒が混入されたのかも謎のまま。この奇怪な事件に、臨床犯罪学者・火村が召喚される。(表題作)

アリス原作の舞台のゲネプロ中に起こった殺人。呪術などに用いられるルーン文字が刻まれた占い用の小石を4つ握り締めて絶命していた被害者。動物園の犯行現場に残された暗号文の謎。
臨床犯罪学者・火村とミステリ作家・アリスが挑む国名シリーズ短編秋季。


   


有栖川版・国名シリーズ第1弾。まずはロシアから。それも含めた全6作の短編集。


日本のエラリー・クイーン
の面目躍如たる一冊ですが、表題作以外にも動物園での暗号や乱歩のような屋根裏の徘徊者が絡む事件などなど、ほかにも粒揃いの作品が。
後書きによると、このロシア紅茶のトリックが思い浮かんだことがキッカケで後続の国名シリーズを作ることを決めたのだとか。

火村は警察からの連絡で現場に出向くので、もはや現場はどこでもアリ。動物園からアパートからゲルマンのルーン文字が絡むものまで。巻き込まれ型の探偵では現場のバリエーションも限度がありますが、警察とニアリーイコールの火村ならではのバリエーションです。
短編ながら「読者への挑戦」もされていたり、キラリと光る作品集ですかね。