『日本の誕生 皇室と日本人のルーツ』 | えにーの読書感想文

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読んだ本の説明や感想なんかを書いていきます。主にミステリーや歴史・皇室関係についてが多いと思います。
未読の本の内容を確認する際にも参考になれば幸いです。

『日本の誕生 皇室と日本人のルーツ』

長浜 浩明、WAC、2019年




古代史研究家でもある著者が、様々な科学の観点から日本人のルーツを解き明かしていく本作。



これまで、人のルーツを探る方法としてはミトコンドリアDNAを調べるのが主流でしたが、これは母系しか辿れないわけですね。それが近年の科学の発達により男性から男性へと受け継がれるY染色体の分析が可能になったとのこと。詳しくは知りませんでしたが、Y染色体を調べる方が難しかったらしいです。

ミトコンドリアイブとか一時期話題になったかな。あれは、たった一人の女性から現生人類が始まったという意味ではないらしいですが。



それによって日本人はアジア大陸とはまったく無縁の存在であることが証明されました。グラフや表でデータが示されているので、説得力が違いますね。なので日本人の祖先が中国大陸の方からやってきた事実はないのです。今って、こんなことまで分かってしまうんですね。



世界の歴史とは他民族への侵略であって、それによって特に男性のY染色体は他民族に混ざっていきます。その理由はここでは言えませんが…。結果的に民族の流れみたいなものが分かるようですが、面白い時代になったものだなと感じます。



さて、そんな中で話は日本の建国へ入っていきます。即ち、初代・神武天皇の御即位に関する内容です。

神武天皇は言わずと知れた初代天皇であり、その御即位は紀元前660年、つまり今から2679年前であると伝えられているのはご承知の通り。その神武天皇から数えて126代目に当たるのが本年5月1日に御即位され、先月22日には神々の祝福を受けながら即位礼正殿の儀を挙行された今上陛下で、これまで連綿として男系男子による皇統が受け継がれているわけですね。

そして今月10日には祝賀御列の儀、14日にはいよいよ大嘗祭の流れとなります。



その神武天皇(御即位前)が行なった神武東征の真偽や、特に闕史8代と呼ばれる歴代天皇の御実在について(その年齢や崩御の正確な数字)についても書物からだけでなく様々なデータを用いて算出されているのが実に面白い。

この辺りは実際に読んで確かめてください。



氏も本書で強調されていますが、古代史を知るには多方面からの検証が必要で、先述の分子人類学や年代測定法、史書、形態人類学、地理学、言語学…etcを分析・統合していくことで初めてその実像が見えてくるものなのですね。言われてみれば、そりゃそうだろって感じですが、やはり物事を学ぶには一種類の資料だけでは駄目ですよね。

やはり人に求められるのは総合力。



日本の歴史だけでなく、物事を学ぶ上での大切な作法も感じ取れる一冊となっているので、興味のある方は是非お手に取ってみてください。