誰しもこんな気持ちになったことがきっとあるんじゃないかな?
そんな恋の詩がぎっちり詰まった1冊です。
私、これ・・・結構、好きです。
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「片思いの守り方」
片思いは、かくしていた方がいい
だって今
私が彼のことを好きだと
みんなに言ってしまったら
私だけでなくみんなの心の中で
この恋が動き出してしまうもの
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「悲しい恋」
好きと言った次の瞬間には、もうその気持ちを支えきれないほど感
情があふれ出て、この恋はどこにも向かったり帰ったり寄ったりで
きない恋であるから、そのあふれた想いはその瞬間に行き場を失い、
そのことによって気持ちをふらつかせてしまうほどで、なんと純粋
で透きとおった恋であったろう。
好きという言葉がくちびるから命のように生まれてあの人へとまっ
すぐにとどいて、そしてそれはそれだけのことで、その先、そ
の言葉がどこへたどり着くのか見定めることを最初から諦めている、
孤独な恋でした。
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「愛のはじまりを予感する時」
あなたに守られているのに
あなたに忘れられているようで悲しい
あなたに愛されているのに
あなたに捨てられているようで悲しい
それは、愛の終りを内包しているものだからだ
愛のはじまりを予感する時は
愛の終りを覚悟する時
終りのない愛はない
愛が続いているようにみえても
それは形に変えただけ
だが、愛にもいろいろな種類があって
永遠の愛に生きるということも不可能ではない
瞬間が永遠であると自覚しているなら
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「あなたに会うまでは」
あなたに会うまでは
夕焼けは美しく
花々はかぐわしく
朝露は清らかで
微笑はやさしいものだった
今は
夕暮れは悲しく
やさしさは傲慢で
純潔は罪深いばかりだ
あなたは私をこんなに大人にしてしまった
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どれも共感するところがあるんじゃないかと・・・そう思います。
特に私は「片思いの守り方」に妙に納得してしまいました・・・。
恋の始まりはただ・・・ただ・・・幸せなもので、
つい誰かに言ってしまいたくなるもの・・・。
でも・・・
まわりにつつかれて走り出してしまう恋は、
自分の想いをつい・・・置き去りにしてしまったり・・・。
恋は密かに愉しむものなのかもしれません。
そぉ~っと、そぉ~っと・・・・・。
*書籍名・・・・・あの空は夏の中
*著者名・・・・・銀色夏生
*出版社・・・・・角川文庫
*発刊年・・・・・1988年