■あらすじ
アメリカのウィスコンシン州。古い屋敷に引っ越して来た3人の大学生が、ふとしたきっかけで、その名前を知った者、口にした者に死をもたらすという「バイバイマン」を呼び起こしてしまう。それ以来、「バイバイマン」に取り憑かれた彼らはお互いに命を助け合うが、周囲の人間たちは次々と命を落としていく。追い詰められた若者たちは、死の運命から逃れることができるのか――(メーカーサイトより)
アメリカのウィスコンシン州。古い屋敷に引っ越して来た3人の大学生が、ふとしたきっかけで、その名前を知った者、口にした者に死をもたらすという「バイバイマン」を呼び起こしてしまう。それ以来、「バイバイマン」に取り憑かれた彼らはお互いに命を助け合うが、周囲の人間たちは次々と命を落としていく。追い詰められた若者たちは、死の運命から逃れることができるのか――(メーカーサイトより)
■ネタバレ
*1969年10月20日、ウィスコンシン州マディソン。ラリーと言う男が「[あの名前]を誰かに言ったか?」と友人に銃口を向けた。ラリーからジェーン、ジェーンからリック、ジゼルへとその名前が伝わったと知ると、ラリーは次々とその対象人物を射殺した。
*時は流れて現在、BW大学に通う3人の学生が家を借りる事になる。大学から20分の距離、賃貸物件としては初めての入居者になるらしい。最低限の家具はあるが人が長く住んでおらず、廃墟のような一軒家だ。エリオットと恋人サーシャだけでは家賃の支払いが厳しいため、友人ジョンも誘った。彼らは各々の仲間達や、エリオットの兄夫婦とその娘アリスも招いてパーティを開く。
*パーティの最中、何かに誘われるようにアリスは1人で2階へ。エリオット達の寝室で、収納スペースに繋がる小さな扉を覗き込む。そこはサーシャが何か奇妙な気配を感じた部屋だ。コインが床に転がり、その音に振り向くアリス。彼女は「持っているのが嫌だったの」とナイトテーブルにコインを置いた事をエリオットに報告する。
*エリオットが部屋を見てみると、件のコインはテーブルの上ではなく床に落ちている。抽斗に入れるが何故かまた床に落ちるコイン。穴でも開いているのかと抽斗を見てみると、中には『言うな、考えるな』との言葉で埋め尽くされた紙がある。剥ぎ取るとそこには[バイバイマン]と書かれている。
*パーティの後で霊感の強いキムがセージを焚いて、悪い気を祓う儀式のような事をする。この家を不気味に感じたサーシャが頼んだのだ。キムはエリオットの両親が事故で亡くなった事や、彼女の力を試そうとして鍵を鍋の中に隠した事を言い当てる。しかし、エリオットは彼女を信じられない。やがて彼女は「何かが近付いて来る」と怯えた様子になり、取り憑かれたように「言うな、考えるな」と繰り返し始める。状況が把握出来ないサーシャは「何の話なの?」と不安そうだ。エリオットが咄嗟に「バイバイマンだ」と呟くと、突然照明が落ちて真っ暗闇になる。ジョンが直ぐに電気を点けるが、不穏な空気になる。
*深夜にベッドで一緒に眠っていると、サーシャは風邪気味らしく咳き込んでいる。壁に掛けたフード付きのコートが人影のように見えるエリオット。目を覚ましてしまったサーシャに「愛してる」と囁くと彼女は「私も愛してるわ、ジョン」と言う。狼狽えるがサーシャはそのまま眠りに戻ってしまう。更に何か得体の知れない音がして階下に下りると、ジョンとキムがセックス中らしい。部屋に戻ろうとするが、やはり何かの音がする。壁を引っ掻くような音。窓の外を見ても正体は分からない。
*翌日、ジョンはキムを家まで送り届ける。彼女の髪に蛆虫が這っているのが見えた気がするが、一瞬の事だ。それでも追い出すようにキムを車から降ろすと、逃げ帰るジョン。一方エリオットは、レンガの壁に爪痕が残っているのを見付ける。昨晩聞こえた音はこれだったのかもしれないが、やはりその正体は不明だ。サーシャは全裸のジョンに言い寄られる幻覚を見て怯えるが、エリオットに言う訳にもいかない。
*夜にはエリオットが地下室の壁にも爪痕があるのを発見。何かの気配、床に転がるコイン。地上階へ出る扉が閉まってしまい思わず叫ぶと、直ぐにジョンとサーシャが駆け付けてくれる。地下室に行く前にはどうしても見付けられなかったのに、2人はずっと一緒にダイニングに居たと言う。
*サーシャが感じ取っていた不穏な気配を否定していたエリオットだが、自分にも幻聴や幻覚の症状が現れて困惑する。サーシャもノートにフード姿の男や『言うな、考えるな』との言葉を何頁も書き殴っているが、書いた記憶は全くないと言う。[あの名前]を知って以来、男が近付いているように感じる。そんなサーシャに「バイバイマンなんて妄想だ」と言うエリオット。しかしサーシャは「現実よ、概念は本物なの」と言う。「それとも3人同時に正気を失っているとでも言うの?」
*エリオットはその晩、夢を見る。型式[4241]の電車・線路に散らばる鞄や写真・血の跡・裸で立つ自分達3人の後ろ姿…。目を覚ますとクロゼットの陰に、こちらを窺う猟犬の双眸が見える。壁際からは、フード姿の男がこちらに手を伸ばす。慌ててベッドサイドのライトを点けると、コートが床に落ちていて猟犬の姿も消えている。
*何とか事態を打開しようと、大学の図書館で資料を調べるエリオット。[バイバイマン]ではヒットしないため、[言うな、考えるな]で検索してみる。するとラリー・レドモンと言う人物が残したファイルが見付かる。発行されなかった没原稿だと言う中身は、ただ『言うな、考えるな』と書き殴られた紙だった。ナイトテーブルの中の紙と同じだ。
*ラリーは10代の少年が家族と若者4人を殺害した事件を取材していた。少年は「バイバイマンがそうさせた」と語った。その後ラリーは散弾銃で、友人やその家族8人を殺害したのだ。やがてエリオットは、離れた席にフード姿のバイバイマンが居る事に気付く。次第に近付いて来る男の姿。エリオットは慌てて、調べていた書類の[バイバイマン]とタイプされた部分を塗り潰していく。「大事な原本なのに」と図書館の司書ワトキンスに咎められるが、幸いバイバイマンは姿を消した。しかしこの時、ワトキンスにバイバイマンの名前が伝わってしまう。
*エリオットはキムを訪ねて、また霊視して欲しいと頼む。彼女は了承し、エリオットの車で2人は家に向かう。彼女は「黙っていたかったのに、ルームメイトのケイティにバイバイマンの事を話してしまった」と言う。自分はワトキンスに言ってしまったと伝えると「彼女も訪ねないと…ガン細胞は切除しないといけないわ。どんどん被害が広がってしまう」と言う。
*やがて線路を越えるとキムは幻覚を見て「車を止めて」と叫ぶ。車の横転事故を起こした人々を助けようと、走り出すキム。彼女が車内に残した鞄には、血の付いたハンマーが入っている。思わずそのハンマーを掴んだまま、キムを追うエリオット。電車が近付くが構わず線路に飛び出し、キムは轢死してしまう。
*事故現場にサーシャとジョンが駆け付ける。エリオットは2人に「あの名前を別の誰かに言うな」と念押しするが、ジョンは命令口調のエリオットに反発する。エリオットとジョンの仲違いもサーシャの体調不良が続いているのも、バイバイマンの策略に違いない。
*エリオットがハンマーを握ってキムを追っていたとの証言のために、エリオットは一旦警察署へ連行される。キムがケイティを殺害した事・エリオット達を殺して自分も死ぬつもりである事を遺書に書き残していたため、幸い嫌疑は晴れる。兄ヴァージルも警察署に駆け付けてくれるが、バイバイマンについて話す事は決して出来ない。エリオットは頑なな態度でヴァージルを突っ撥ねる。
*エリオットが帰宅すると、ジョンとサーシャが全裸でセックスの最中だった。部屋にあったバットで思わずジョンを殴る。しかし我に返ると2人は服を着込んでいて、具合の悪いサーシャはこの騒ぎの中でもベッドで眠り込んでいる。全てバイバイマンの見せた幻覚だ。
*そこへワトキンスから着信がある。彼女は「奇妙で生々しい妄想を考えてしまう」と話す。家を訪ねたいと言うワトキンスに、謝罪の言葉を繰り返すエリオット。その時、サーシャが書き残したメモに気付く。彼女は不気味な家を嫌い、別の物件がないかと大家のデイジーを訪ねたが「もう契約済みだから」と取り合ってもらえなかった。それならせめてとナイトテーブルの持ち主を教えてもらったのだ。書かれていたのはラリー・レドモンの名前。妻は健在らしい。
*エリオットはワトキンスとの会話を切り上げて、ラリーの妻を訪ねる事にする。今の状態ではバイバイマンの事を他人に話してしまうと判断し、救急車は呼ばずに意識のないジョンを地下室に押し込む。ナイトテーブルは家の裏の林へと放り投げる。
*夜遅く訪ねたが、必死なエリオットに対しレドモン夫人が事件の話をしてくれる。彼女が仕事から帰宅すると、家の壁が『言うな、考えるな』との言葉で埋め尽くされていた。ナイトテーブルの抽斗の中でさえ。「[あの名前]を言ったり考えたりしてはいけない。頭の中に入り込んで、恐ろしい事をさせるんだ。猟犬が見えてコインの音がしたら奴が近くに居る。奴は誰がその名前を言うか聞いている」そんな話をした後、散弾銃を持ち出したラリー。驚いて必死に制止したが、彼は「自分がやりたくてこうしているんじゃない、奴の仕業だ。…愛してるよ」と言い置いて家を出ると友人達を射殺、最後には自殺した。
*「彼は結局のところ英雄だったわ。名前を知る者を皆殺しにして、奴を消滅させたの」そう話すレドモン夫人に生き残る方法を尋ねると「名前を知らないだけよ」と答える。ラリーは自分を制御し、妻にはあの名前を教えなかったのだ。一方エリオットは、ラリーが書き残したナイトテーブルと記事のせいで理不尽にも名前を知ってしまった。「名前を知った全員を殺して、自殺するしかない」と未亡人から銃を手渡されるが、他に手段がある筈だと考える。
*幻聴や幻覚は怖がらせるための演出で、恐れる程に現実感が増す。恐怖心がバイバイマンを強くするのだ。自分達が力を与えて呼び寄せている。恐れなければ力を奪い、無力化出来る。エリオットがその考えに到ると、レドモン夫人に暖炉の炎が燃え移り火達磨になる。これもバイバイマンの企みだろう。エリオットが深呼吸するとやはりラリーの妻は燃えてはおらず、列車や猟犬の気配は完全に消え失せる。
*エリオットの前からは姿を消したが、サーシャ達はこの事を知らない。慌てて家に戻ろうとするエリオット。まだ眠っているのか電話に出ないサーシャに「何も信じるな」とメッセージを残す。進行方向の路上に人影が浮かぶが、そのまま走り抜けるとこれも幻覚だった。続けてワトキンスの姿が見えて咄嗟にハンドルを切るが間に合わず、彼女を跳ね飛ばしてしまう。車が横転し負傷したエリオット。ワトキンスも幻覚だと思い込もうとするが、彼女は包丁を握っている。家族を殺し、キムと同様にエリオット達も殺すために家へ向かっていたのだ。息絶えたワトキンスと壊れた車を残して、エリオットは家路を急ぐ。
*家ではサーシャが覚醒、殴られたジョンも意識を取り戻していた。サーシャにはジョンがエリオットに見えるが、彼は自分を拒絶し怯えた様子だ。ジョンにはサーシャが血塗れのキムに見えているため、どうにか逃げ出そうとする。互いにバイバイマンに幻覚を見せられているのだ。ジョンはハサミを掴むとサーシャに襲い掛かる。漸くエリオットが家に辿り着くと、ジョンに組み伏せられたサーシャが「撃って」と叫ぶ。ジョンと揉み合いになり発砲するエリオット。しかし倒れたのはサーシャだった。
*動かなくなったサーシャの身体を抱えて泣き崩れていると、そこに猟犬とバイバイマンが現れる。「早く殺せ、お前の勝ちだ」と観念したエリオットを揶揄うように、バイバイマンが指先を額に押し付けてくる。それに合わせて玄関のベルが鳴る。エリオットを心配し、兄ヴァージルと姪のアリスがやって来たのだ。「彼らに手を出すな」とバイバイマンに向かって叫ぶと、エリオットは玄関扉へ。ドアを開けずに「帰れ」と繰り返すが、ヴァージルも引き下がらない。エリオットは何度も[あの名前]を言いそうになり「バイバイ…」と言い掛けては口を手で塞ぐ。エリオットに近付くバイバイマン。兄とその家族を守るため、エリオットは銃口を自分の頭部に向けると引き金を引く。家が燃え上がり、列車が走り去るかのように窓が照らし出される。
*ドア越しに起こった事に驚愕するヴァージル。茫然とするが、アリスの姿が見えなくなった事に気付いて必死に探す。娘は「寒かったから」と車に戻っていた。彼女は家が燃えている事に気付いて「エリオット叔父さん」と懸命に呼ぶ。「大丈夫だよ、もう苦しんでない」と宥める父。
*自分達の家へ帰る車の中、アリスは「さよならを言いたかった」と寂しそうだ。「でもコインをくれたの。私のために外に置いたのよ」アリスは、先刻1人になった時に見付けたコインを握っている。外のゴミ箱の横にナイトテーブルがあって、その中に入っていたと言う。エリオットが投げ捨てたのに、アリスの目に入る場所に戻っていたのだ。「他にも何か入ってた?」「何も、文字が書かれてただけ」「何が書いてあった?」「暗くて読める筈ないでしょ。私がピカッて光ると思う?」まだその名前を知らない親子は笑い合うが、背後には闇が広がっている。
*拘束していた男が図書館員を轢き殺し、恋人とルームメイトを殺して自殺した。その男を釈放した事で、女性刑事ショーが責められている。しかし彼女は、エリオットの釈放自体は間違っていた訳ではないと考えている。ただ何かが起こっていて、エリオットを拘束した時にはそれを突き止める事が出来なかった。ショーの前を、唯一の生き残りであるジョンがストレッチャーで運ばれていく。重傷だが何かを伝えようとしているように見えるジョンの姿に刑事が耳を寄せると、微かな声で[あの名前]を呟いた。
■雑感・メモ等
*映画『バイバイマン』
*レンタルにて鑑賞
*都市伝説系ホラー
*都市伝説系ホラー
*これはこれで[名前を言ってはいけないあの人]て感じ。ロバート・デイモン・シュネックが2004年に発表したノンフィクション『The President's Vampire』を原作としているとの事。Strange-but-True Tales of the United States of America と記載されていたので、都市伝説とかの類いの本かなと思ったけどどうだろ?
*エンドロールの導入部分、列車の動きのような光りの中に一瞬バイバイマンのシルエットが浮かぶ…と言うのは良いんだけど、結局バイバイマンと列車の関係は何だったんだろか。
*後々野球のバットを使う場面があるからと言うのは分かるけど、わざわざパーティの時に野球を始める描写を入れるのが律儀だなと思った。(ネタバレでは端折った。)
*恐怖心が敵を強くする・対象者のみに見える虚構・と言う辺りは最近だとこの作品と構造が近い。
*恐怖心が糧であるなら多少はその名前が噂になる方が良さそうなのに、バイバイマンの場合は噂が封じられる傾向にある。バイバイマンの秘密(本名とか)を知ると死ぬ…と言うくらいの方が合理的では。バイバイマンを知った人達がその名前を漏らそうとする一方で、自分も含めて名前を知っている人達を殺そうとするのも謎。バイバイマンがやらせているなら、それなりに拡散もさせた方が良くない?
*攻撃方法が幻聴・幻覚と言うのは、何でもアリ感が強くて些か気持ちが萎える。
*主人公の兄と姪が名前を知らずに終わって良かったなと安堵したんだけど、終盤で走る車の背後が不自然に暗くなっている。最初は嫌がっていたアリスが最後にはコインを握っている点も考えると、先行きは不穏。ショー刑事から名前を聞かされそうだよなと言う気もするし。
*攻撃方法が幻聴・幻覚と言うのは、何でもアリ感が強くて些か気持ちが萎える。
*主人公の兄と姪が名前を知らずに終わって良かったなと安堵したんだけど、終盤で走る車の背後が不自然に暗くなっている。最初は嫌がっていたアリスが最後にはコインを握っている点も考えると、先行きは不穏。ショー刑事から名前を聞かされそうだよなと言う気もするし。