ダンケルク | m-memo

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ネタバレだらけの映画メモ。

忘れ易いので自分用にメモしてます。
ネタバレ部分は詳細を記載することもあれば、
二言三言のこともあります。

 

■あらすじ

フランス北端ダンケルクに追い詰められた英仏連合軍40万人の兵士。背後は海。陸・空からは敵――そんな逃げ場なしの状況でも、生き抜くことを諦めないトミーとその仲間ら、若き兵士たち。一方、母国イギリスでは海を隔てた対岸の仲間を助けようと、民間船までもが動員された救出作戦が動き出そうとしていた。民間の船長は息子らと共に危険を顧みずダンケルクへと向かう。英空軍のパイロットも、数において形勢不利ながら、出撃。こうして、命をかけた史上最大の救出作戦が始まった。果たしてトミーと仲間たちは生き抜けるのか。勇気ある人々の作戦の行方は!?(公式サイトより)

 

■ネタバレ

*防波堤/1週間:仲間達とダンケルクの町を歩く英軍兵士のトミー。町には兵士以外の人の気配はなく、頭上からは降伏を呼び掛けるビラが降り注ぐ。トミーは用を足すのに使おうと、『包囲した、降伏せよ』と印刷されたビラを何枚か掴む。すると背後から銃撃され、仲間が次々に倒れる。1人になったトミーは同盟国である仏軍兵士が築くバリケードに救われる。互いに言葉は分からない。やがて彼は海岸に辿り着くが、そこは帰国のための列を作る兵士達で溢れ返っている。

*列に並ぶ前にひとまず用を足そうとしたトミーは、浜辺の人目に付かない場所で同じ英国の軍服を着た青年に出会う。裸足の遺体を埋めるのを手伝うと、青年は自分の靴紐を締め直す。その靴はそもそもこの遺体が履いていたのではないか。水を分け与えられ、追及はしないトミー。列に並ぼうとすると、最後尾に居た兵士に「近衛連隊の列だ」と言われてしまう。帰国の機会は平等ではなく、最優先されるのは重傷者だ。そんな中、敵軍の戦闘機が上空に現れる。一斉に伏せる兵士達。トミーの直ぐ傍に居た兵士が弾き飛ばされる。脅威が去って立ち上がるが、もう立ち上がれない兵士も多い。浜辺の兵士達は恰好の的だ。誰かが「空軍は何してるんだ」と叫ぶ。

*海/1日:兵士を運ぶため民間の船が1時間後に徴用される事になり、ウェイマス港には海軍兵士の姿が目立つ。ムーンストーン号の船長であるドーソンと息子のピーターは、小型船の中の食器類等を桟橋に運び出している。代わりに救命胴衣を積み込むためだ。「ダンケルクで何人か乗せる」とピーターは言うが、準備されている救命胴衣は何十もある。驚きながらも2人を手伝うジョージ。

*空/1時間:フォーティス隊の3機の戦闘機。ファリアの燃料は残り70ガロン、コリンズは68ガロン。隊長が「高度500フィートを維持、ダンケルクでの戦闘に備えろ」と無線で告げる。「敵機と交戦になっても帰投する燃料は残せ。敵は太陽から現れるぞ」3機の眼下にはドーソンの船が見える。

*浜辺では重傷者を運んでいた兵士達が再び桟橋を目指し始めるが、先刻の襲撃で命を落としてしまった者や途中で力尽きてしまった者はその場に取り残される。死んだと思われたのか運搬していた兵士の方が犠牲になったのか、まだ息のある兵士を発見するトミー。コートを脱ぎ捨て、青年と担架を担いで走り始める。英軍の船には仏兵は乗れず、防波堤では押し合いの諍いが起こっている。そんな中でも担架には双方が道を開けてくれる。

*ドーソンは海軍の確認を待たず出航、ジョージも船に乗り込む。今度はピーターが驚いて「何してる?行き先を知ってるのか?」と問い掛ける。「フランス」と答えるジョージに「戦争だぞ」と言うドーソン。「役に立ちます」とジョージは言う。もう港へ戻る事は困難で、ドーソンはそれ以上は何も言わず操船に戻る。

*トミーと青年は出航寸前の病院船に乗り込む事に成功するも、怪我人でも衛生兵でもないため船を降りるよう促される。トミーは仕方なく指示に従おうとするが、自分の前を歩いていた青年が桟橋の上ではなく支柱部分に身を潜めているのを見て、それに倣う。桟橋上からはボルトン海軍中佐の声が聞こえる。「負傷兵を何人乗せるか決めてくれ。担架が1つ減れば7人乗れる」ウィナント陸軍大佐と少将が会話の相手だ。「敵の戦車隊が停止した。空から攻める方が簡単だからだ」「政府は仏国降伏までの時間をどの程度だと?」「降伏?敵はここで止まる訳ではない。次は我が国、そして世界だ」ボルトン中佐は「見える程に近いのに」と呟く。「何がです?」「故国だ」表向きはチャーチル首相が、仏国に「共に撤退を」と呼び掛けている。現実には英軍のみ救う。救出の想定人数は、首相は3万人と言いラムゼー提督は4万5千人としている。実際には40万人の兵士が居る。最善を尽くすしかない。より多く救うには防波堤を死守する必要がある。遠浅のため浜からの乗船は不可能、駆逐艦まで兵士を運べるような小船もない。桟橋を砲撃されれば乗船出来なくなるため、防波堤が生命線だ。

*ムーンストーン号は、船の残骸の上で独り座り込んでいる英国兵を発見。大きな怪我はしていないらしく、呼び掛けると海に飛び込み、泳いで船に乗り込む。しかし毛布を掛けても問い掛けても反応せず、名前も分からない。「船の中で休む?風もないし温かいよ」とジョージが紅茶を差し出しても、無言でカップを払い除ける。「構うな、甲板が良いんだ。魚雷が怖いから」とドーソンが言うと、英国兵は初めて声を出す。「Uボート…Uボートだ」

*フォーティス隊は敵と遭遇。ファリアがコリンズに指示を出し旋回させ、追尾していた1機を叩き落す。一方で隊長機も墜落。落下傘もなく、脱出していないようだ。位置を記録して2機で飛行を続ける。コリンズの燃料は残り50ガロン。ファリアの方は計器が壊れてしまったため「逐一報告してくれ」と頼む。「戻るか?」と訊くコリンズに「いや、燃料計だけだ」と答えるファリア。目的地まで5分になると、ファリアは高度を2000フィートにするよう指示する。「燃料を食うぞ」「奇襲されるより良い。その高度なら上から攻撃出来る」

*防波堤はまた空爆され、病院船も沈没する。「船は諦めろ。沖へ出せ、ここでは沈めるな」と桟橋からボルトン中佐が叫ぶ。トミー達が運んだ負傷兵ももう動かない。制御を失った船は桟橋の方へ流れ、海へ逃れていた兵士が船と桟橋との間に挟まれる。桟橋の軋む音と断末魔。トミーは支柱から手を伸ばし、英国兵アレックスを引き寄せて圧死から救う。その後船は桟橋を離れて行き、残っていた兵士達が次々と海へ飛び込む。煙を上げて、やがて船は沈む。

*アレックスは高地連隊所属で、仲間と共に沈んだ船に乗っていたようだ。桟橋上からボルトン中佐が「ハイランダーズ、別の船に乗れ」と支柱の方へ向けて声を掛ける。便乗しようと、濡れていないトミー達は水に浸かる。その様子を見て笑うアレックス。彼等は揃って大型船へ運ばれる。毛布とジャムを塗ったパン、温かい紅茶。船倉には兵士が溢れ身動きも難しい程だが、皆安堵の表情を浮かべている。そんな中、青年は甲板に残ったままだ。「友達はどうした?」と訊くアレックス。周囲を見回して「沈むのが怖いから、逃げ易い場所に居る」と答えるトミー。2人もドアに近い場所に移動する。

*ムーンストーン号では幾らか落ち着いた英国兵が進行方向に気付いて「何処に向かってるんだ?」と尋ねる。ドーソンが「ダンケルクだ」と答えると「絶対に戻らない、行ったら全員死ぬぞ」と英国兵は言う。その必死な様子に「そうか、海図でルートを確認しよう。君は船室で休むと良い」と宥めるドーソン。ピーターは英国兵を部屋へ導いて、外からスライド錠を掛けるべきか逡巡する。ジョージが「彼は腰抜けなの?」とドーソンに尋ねると「砲弾ショックだ、自分を見失ってる」との答え。そして「もう取り戻せないかもしれない」と続ける。ピーターは英国兵に紅茶を淹れ直してやり、その後結局ドアに鍵を掛ける。

*コリンズの燃料は残り40ガロン。前方には掃海艇を爆撃しようとしている敵機ハインケルが見える。護衛機はメッサーシュミット。ファリアがハインケルを退け、コリンズもメッサーシュミットを堕とす。しかし、もう1機にコリンズが撃たれてしまう。「墜落する」と言うコリンズに、ファリアは「援護する、脱出しろ」と促す。外を見たコリンズは「この波なら着水出来る」と判断する。

*青年は甲板で「乗せてくれ」「置いていくな」との声を聞く。夜の海を小さなボートが何艘か、こちらに向かって来る。波間にそれよりも早く進んでくる影が見えて、誰かが「魚雷だ」と叫ぶが、船倉にそれが伝わるのは着弾した後だ。青年は船を捨て逃げ出す前に、トミー達のために一番近いドアを開ける。トミーとアレックスは薄暗い水の中で足掻いていたが、開いたドアから差し込むライトの光に気付いてどうにか脱出する。

*「スピットファイアだ。我が軍が誇る戦闘機」機体の方には背を向けたまま、ロールスロイス製のエンジン音で言い当てるドーソン。一緒に甲板に居たジョージは驚く。飛び去ったのはフォーティス隊、まだ3機揃っている。一方で鍵を掛けられた事に気付いた英国兵が「ドアを開けろ」と騒ぎ始める。英国兵の声が次第に大きくなり、ピーターはドアを開けるのを躊躇う。やがて英国兵は天井の開口部から外へ。操舵室のドーソンに「何故針路を変えない?」と詰め寄る。「我々の使命だ」「使命?遊覧船に何が出来る?年を考えろ」「我々の世代が戦争を始め、子供を戦場へ送ってしまった」「国へ戻れ」「奴らが海峡を渡れば国もなくなる」

*ファリアは敵機を追うと言う。「幸運を。燃料の残りに気を付けろ、あと15ガロンだ」と伝えるコリンズ。「15ガロンだな、了解。幸運を」ファリアが返すが、コリンズからはもう反応がない。彼は着水に集中している。ファリアは最後までコリンズの着水を見届ける。救出に向かっているのだろう、背後からは小型船が接近している。天蓋からコリンズが手を振るのも確認し、漸くファリアは安堵する。陽はかなり傾いている。

*夜の海を泳ぎ、ボートに辿り着くトミーとアレックス。しかしボート上の兵士達に「駄目だ、これ以上乗れない」と拒まれてしまう。階級の高い士官らしき男が「もう2度も転覆してる、次を待て。海は荒れてない、冷たくもない」と落ち着いた声で言う。それはやがてドーソンの船に拾われる事になる英国兵だ。彼の号令でオールが動き、ボートが進んで行く。ボートの最後尾には青年が乗っており、密かにロープを寄越してくれる。それに掴まり、一緒に浜へと向かうトミーとアレックス。

*「戦争からは逃れられん」と言うドーソン。英国兵は「こんな船で何が出来る?」と言い募る。「召集に応じた船は我々だけではない」「銃はあるのか?」「君はどうだ?」「勿論、軍用ライフルがある」「爆撃機とUボートを追い払えたか?」ドーソンは決して聞き入れないと悟ったらしく、英国兵は腕尽くで舵を奪おうとする。ピーターやジョージが止めに入ろうとすると揉み合いになり、弾みでジョージが階段から転落してしまう。頭から血を流して呻くジョージに慌てて駆け寄るピーター。結果的に英国兵は冷静になり、騒ぎは収まる。

*ボートが浜辺に到着した頃には明け方になっていた。トミーと青年、アレックスは疲弊し、浜辺で濡れたまま眠りに落ちる。小さなボートで沖を目指そうとする者も居るが、今日は波が荒く悉く失敗に終わる。3人が目を覚ますと見知らぬ兵士が装備を外して海へ入って行き、そのまま姿を消すが誰も反応しない。そんな中、工兵隊が軍用トラック等を利用して新たな桟橋を作っている。水位が戻れば機能する筈だが、潮の流れが変わったらしい。水面に浮かんでいた遺体が浜へと押し戻されている。浜辺で待つしかない3人の前を、アレックスの仲間である高地連隊の兵士達が横切って行く。座礁している商船があるのだが、水位が戻れば浮くだろうと考えたのだ。3人は彼らに合流して浜辺を歩いて行く。

*ジョージは横たわったまま「君とドーソンさんの役に立てて良かった」と笑顔を見せる。ピーターは懸命に手当てしようとするが、大した医薬品もない。「父さんに言ったんだ。学校では落ちこぼれだけどいつか何かやってみせる、きっと新聞にも載るって」「少し休め、良くなったらまた手伝ってくれ」「無理だ」と首を横に振るジョージ。彼は「何も見えない」と言い、ピーターは言葉を失う。

*単身敵機を追っていたファリアはやがて標的を撃墜する。眼下には沈みかけた商船とそこから海へ飛び込む兵士達が、そして背後にはまた敵機が見える。恐らく燃料はもう残り僅かだろう。引き返すならそろそろ限界だ。ファリアは暫くの間思案するが、やがて目的地のダンケルクへ飛び続ける事を決意する。

*桟橋に立つボルトン中佐。周辺には昨日までのようには船がない。ウィナント大佐が「迎えの船は?」と訊くと「駆逐艦が1隻来る」と言う。「昨日の被害を受けて、1隻ずつになった」「戦場はここだぞ、何故出し惜しみするんだ?」「次の戦いは本土決戦だ。空軍も同様だ」昨日ボルトン中佐が言ったように、今度はウィナント大佐が「こんなに近いのに」と言う。「見えるのと辿り着くのとは別だ」と答えるボルトン中佐。「もっと輸送船を寄越すべきだ」「政府が小型船を手配してる。民間の船を徴用したそうだ。小型船なら浜から乗り込める」それを聞いて、工兵隊が桟橋を作ってる事を報告するウィナント大佐。「潮が満ちれば使えるだろう」「6時間後だな」「3時間後だろう?」ボルトン中佐は「私は海軍で、君は陸軍だ」と笑う。沖には駆逐艦ヴァンキッシャーが見える。

*トミー達は商船に辿り着く。そこは防衛線の外側で、至近距離に敵が居るかもしれない危険な場所だ。そのため船の持ち主は逃げ出してしまったのだろう。兵士等は船の中で3時間毎の満潮を待つ事にする。しかし潮の流れが変わっており、実際に満潮になるのはもっと後だ。

*止血して楽な姿勢にしたが、ジョージは重症だ。ピーターは彼の容態を父に報告するが、戻るには遅過ぎる。眼前には掃海艇とそれを狙うハインケルが見える。そこへ2機になったフォーティス隊が現れ、敵を撃墜。煙を上げて逃げ去るハインケルに喜ぶピーターだが、スピットファイアの1機からも煙が出ている。「パラシュートを見ていろ」と舵を握りながら父が言う。

*商船の中、アレックスが青年に「水位を見てこいよ」と言うが、彼は黙って首を振るだけだ。「口が達者な奴だな」と嫌味を言うアレックス。部外者であるトミーは代わりに水位を見に行くが、乗り込んだ頃と殆ど変化はない。3時間はもう過ぎている筈なのに。やがて甲板から人の気配がする。またも促され、トミーは現れた男の足を掴む。なるべく音を立てないように船底へ引き摺り込むと、それは商船の船員であるオランダ人だった。英軍兵を助けに来たが、やはり独軍兵を恐れて隠れていたらしい。満潮が近付いたため戻ったが、船が浮くにはまだ時間が掛かると船員は言う。船が重くなっているせいだ。その時、別の気配がして、銃声と共に船の壁に穴が開く。

*ファリアの声に返事が出来ないコリンズ。パラシュートで脱出する事なく不時着したスピットファイア。コリンズは僅かに開いた天蓋から腕を出す。それに反応したファリアが翼を揺らして飛び去るが、天蓋はそれ以上開かない。波を確認した時は難なく開いたが、着水の衝撃で壊れたのだろう。ドーソンは限界までスピードを上げてスピットファイアへ駆け付けようとする。「飛ばし過ぎだ、もうパイロットは死んでるかも」とピーターが制止しようとするが、父は「うるさいぞ、聞こえてる」と震える声で怒鳴る。「生きてるかもしれない、助けを待っている」ピーターはそれ以上は何も言えなくなる。

*商船では1つめの穴の近くに別の穴が開く。そしてまた1つ。堪らず反撃をしようとするのをトミーが止める。「撃つな、ここに居るのがバレる」「もうバレてるだろ」「穴の位置を見ろ、射撃訓練だ」中に人が居ると思っているなら、もっと闇雲に撃つだろう。しかし実際には穴の位置が集中している。兵士達はここは黙って遣り過ごそうとするが、やがて開いた穴から水が流れ込んでくる。海の水位が上がったのだ。

*スピットファイアの操縦席では、コリンズが窓を破ろうと必死になっていた。水が流れ込んで次第に機内の水位が上がってくる。信号拳銃で叩いてみても変化はなく、このままでは溺死する羽目になる。

*商船では穴を塞ごうと近寄った兵士が、更に撃ち込まれた際に被弾してしまう。思わず叫び声が出るのを、仲間達が必死に押さえ込む。しかし流石に気配が伝わったのか、続け様に発砲される。壁を揺らして砂に埋まった船体を浮かせようとしても、船底が重くなり過ぎている。アレックスが「誰かが降りないと」と言うと仲間は「志願しろよ」と言う。「その必要はない、降りる奴は決まってる。こいつだ」アレックスは青年を指差す。「独軍のスパイだろ。一言も話してない」彼に命を救われたトミーは擁護しようとするが、トミーも彼の名前すら知らなかった。アレックスはドッグタグの名前を確認して「話せよ、ギブソン」と銃口を向ける。青年が発したのはドイツ語ではなくフランス語だった。「仏軍か?救出の列を飛び越えやがった」と罵るアレックス。トミーは驚くが、彼に助けられた事は間違いない。「本物のギブソンは砂浜で死んでた英国兵か?埋葬はしてやったのか?」「埋めてたよ、僕も手伝った。友達かと思ったんだ」「殺したのかもしれない」「浜は死体だらけだ、殺す必要はない。逃げたかっただけだ」そこへまた外から発砲される。水が更に増えるが船員は「軽くなれば浮く」と言う。「1人降りても変わらないだろ」とトミーが指摘すると、高地連隊の兵士が「祈ってろよ、次はお前だからな」と言う。他の兵士達は同じ高地連隊、トミーは違う。動揺しているとまた銃声が聞こえ、そのタイミングで[ギブソン]が自分へ向けられていた銃口を掴む。揉み合いになり、それが幸いしてか遂に船が浮き上がる。しかしエンジンを掛けるとまた発砲され、水が多量に流れ込み続ける。

*機体が完全に水中に沈み、コリンズにはもう為す術がない。水中でもがいているとムーンストーン号が駆け付け、ピーターがスピットファイアの天蓋を壊す。割れた窓から抜け出したコリンズは、直ぐには事態が飲み込めない。礼を言うより先に「やあ、どうも」と挨拶する。

*ハインケルを追うファリアだが間に合わず、駆逐艦を攻撃される。致命傷を負い瞬く間に傾く船、流れ出た重油で黒くなる水面、逃げ惑う兵士達。

*ムーンストーン号に救助されたコリンズは、ピーターからジョージについて相談される。しかしコリンズにもピーター以上の手当ては出来ない。「正しい処置だ、君はよくやったよ」と言われ、僅かに頷くピーター。しかしこれ以上何も出来る事がないのは、絶望的でもあった。甲板に出ると英国兵から「あの子は大丈夫か」と尋ねられる。ピーターは「大丈夫じゃない」と強い調子で返事をする。その時爆音が聞こえ、駆逐艦が攻撃されたのが見える。その近くでは商船が沈みかけている。

*桟橋からボルトン中佐が双眼鏡を覗くと、商船が攻撃されているのが見える。別の方向を見て表情を変えたボルトン中佐にウィナント大佐が「何が見える?」と訊くと「故国だ」と笑みを浮かべる。徴用に応じた多くの民間船が、ダンケルクに到着したのだ。

*商船内では兵士達がどうにか穴を塞ごうと必死になるが、もう手の施しようがない。結局船は諦める事になる。「船は捨てろ」と声が響く中、最後まで残っていたアレックスは「逃げろ」とギブソンの肩を叩いてやる。アレックスは船から脱出するが、ギブソンは僅かに及ばず水中で力尽きてしまう。

*浜辺から民間船に乗り込む兵士達。工兵隊が作った桟橋も機能しており、担当者は満足気に頷く。沖ではムーンストーン号が重油で黒く汚れた兵士達の救出を始める。力なく座り込んでいた英国兵も立ち上がり、手を貸している。多くは嫌がるが、ドーソンは乗り込んできた兵士達を甲板より下の船室へと促す。「少しでも多く救うためだ、嫌なら船を降りろ」と。ピーターは「気を付けろ、怪我人が居る」と声を掛けるが、振り向いた重油塗れのアレックスが「死んでるぞ」と言う。ピーターは感情を抑えながら「だから、丁重に」と声を絞り出す。アレックスがジョージの遺体に毛布を掛ける。親子が無言で目を合わせていると、英国兵がまた「あの子は大丈夫か」と訊いてくる。間をおいて「大丈夫だ」と返事をしたピーターに、父は無言のまま頷く。英国兵は幾らか良い状態に見え、救出作業に戻って行く。同じく救出作業を続けつつ、ファリアと敵機の攻防を見守るコリンズ。「ファリア、頼むぞ」と繰り返している。

*沈む商船から駆逐艦を目指していたトミーだが、こちらの船も傾き重油が漏れ出している。更に追い討ちを掛けようと敵機が旋回。「船から離れろ」と叫ぶ船員。その時、ファリアが遂に敵機を捉えて撃墜する。喜ぶ間もなく、重油の中に墜落する事を察したコリンズが「船を出せ」と叫ぶ。水面にはまだ兵士達が居るが、この場を離れなければムーンストーン号も炎に包まれるだろう。船が速力を上げる中、ピーターはその時握っていた兵士の手を離すまいと必死になる。やがて敵機が墜落、海上を炎が走る。高地連隊の兵士達は咄嗟に水中に逃れるが、息が続かずに浮上して結局燃えてしまう。炎から十分に距離を取りムーンストーン号が速度を落とした頃、漸く引き上げられた兵士はトミーだった。長く水中に居た事を気遣い、ピーターが「大丈夫か」と声を掛けると、トミーは「国に帰る」と呟く。

*ダンケルクの浜辺を飛ぶファリア。燃料が切れてプロペラが止まり風任せの飛行になるが、着地は問題なく出来るだろう。ボルトン中佐は民間船に声を掛けて彼らを労っている。ムーンストーン号は満員の状態で帰路に就く。そこへまた敵機メッサーシュミットが来襲。ピーターに舵を取らせて指示を出すドーソン。敵機が来る南へ向けて全速で進む。攻撃の前に急降下する戦闘機の動きを見抜き、合図を出して攻撃をかわす。「戦闘機に詳しいんですね」と言うコリンズに、ドーソンは「息子が空軍に所属していてね。英空軍は優秀だ」と答える。回復の兆しが見えた英国兵は、襲撃によってまた怯えた様子だ。ドーソンは彼を抱えて、操舵室へと連れて行ってやる。コリンズが「君の事かい?」とピーターに訊くと「兄です。ハリケーンで出撃して、3週目に戦死した」との返事。それがドーソンを戦場に駆り立てた理由なのだろう。一方防波堤にも敵機が迫っていたが、反転したファリアがこれを撃ち落とす。歓声を上げる兵士達。また多くの犠牲が出る事を覚悟して身構えていたボルトン中佐も喜び、空を見上げる。しかし方向を変えた事で、ファリアが着地出来るのは防衛線の外になってしまう。再度反転すれば、地上の兵士達に危険が及ぶからだ。天蓋を開けて、風を受けるファリア。

*ピーターはムーンストーン号の中でアレックスと再会。2人が甲板へ出ようとすると、操船を任されていたピーターが「下に居てください」と声を掛ける。「陸地を見たいんだ」と言われて了承するピーター。「ドーバーか?」「いいえ、ドーセットです。でも英国だ」アレックスは項垂れ「英国民を失望させた」と言うが、ピーターは何も答えられない。

*夜になり帰港するムーンストーン号。下船する兵士を数えながら「凄いな、一体何人乗ってるんだ?」と海軍兵が驚いた声を出す。結局名前も知らないままの英国兵も、船を離れて行く。ジョージの遺体も運び出され、ピーターは英国兵を振り返るが、その時にはもう彼の姿は消えている。空軍の制服を見た陸軍兵士が「空軍は何してたんだ?」と毒吐くと、ドーソンはコリンズの肩を叩き「我々は知っている」と声を掛ける。2人は握手を交わして別れる。

*トミーとアレックスも兵士達の列に混じり、線路上を歩き駅を目指している。線路沿いには兵士達を出迎え、紅茶やパンを振る舞う人々が居る。ある老人は兵士達の顔は見ずに「皆よくやった」と言いながら毛布を手渡している。「生き残っただけだ」と言うアレックスに老人は「充分だ」と答える。次に毛布を受け取ったトミーの顔を撫でて微笑む老人。彼は目が見えないのだ。その後も「よくやった」と言い続けて毛布を手渡している。列車に乗り込みアレックスの向かいの席に座るトミー。アレックスは「目も合わさずに毛布を寄越した」と不満そうに言うが、それについてトミーは説明出来ない。渡された毛布を枕にして、直ぐに眠りに落ちたからだ。

*桟橋では最後の船が出るところで、ウィナント大佐も乗り込もうとしている。「チャーチルの言った3万人は救った」「もっと救った。30万人だ。今のところは」ボルトン中佐はその船には乗らず、ウィナント大佐は言葉の意味を訊き返す。「今のところ?」「私は残る。まだ仏兵が居る」ウィナント大佐は頷き、船上からボルトン中佐に敬礼をする。

*夜が明け列車が停まる。まだ駅ではなく待避線に入ったらしい。近くに居た少年達に尋ねると、もう間もなくウォーキング駅に着くようだ。積まれた新聞を1部貰って、それをトミーに渡すアレックス。『33万5千人救出』の見出しと『首相がダンケルクについて下院で演説』との囲み記事があるのを見たが、それ以上は「耐えられない、お前が読め」と言う。「町で唾を吐き掛けられるぞ。町に人が居ればだけどな」アレックスは人々が兵士に失望していると思っている。やがて列車が駅に入りホームで窓を叩かれても、決して外を見ようとはしない。トミーは新聞に掲載された演説の内容を読み上げる。「戦争で撤退による勝利はない。だがこの救出劇は1つの勝利だ」瓶でガラスを叩かれても寝た振りをしていたアレックスだが、それが差し出されたビールである事、多くの人に拍手で出迎えられている事に気付いて漸く顔を上げる。

*ピーターはジョージの写真を持参し、ウェイマス・ヘラルド新聞社を訪ねる。後日新聞には『ジョージ・ミルズ17歳、ダンケルクの英雄』との記事が掲載される。

*防衛線の外で着陸したファリア。操縦席に信号弾を撃ち込み、機体が敵の手に落ちないように燃やしてしまう。燃え上がる愛機を見詰めていると、やがてドイツ兵が現れて捕虜として拘束される。

*アレックスはもう聞いていないようだが、トミーは演説を読み続ける。「決して降伏しない。たとえこの島が征服され飢え苦しんでも、大英帝国は海を越え、我らが戦艦に守られ戦い続ける。新世界の大きな力が古き世界を救済し、解放するその時まで」

 

■雑感・メモ等

*映画『ダンケルク』

*劇場にて鑑賞(ソフト購入済)

*クリストファー・ノーラン監督初の戦争映画

*劇場で観た映画については(記憶だけで書くのは正直限界があるので)全然記事に出来ていないんだけど、2017年に観た中で一番好きだったのでせめてこれだけでもと。

*劇場で5回観て満足したつもりが、再上映の際にEXPOCITYまで出掛けて更に2回観た。映画のためだけに行くような距離には住んでないけど、日本で唯一のスクリーンで再上映とか言われて我慢が出来なかった。臨場感が半端なくて、行く価値はとんでもなくあった。

*生身の敵の姿が描写されないのが特徴的。防波堤の1週間・海の1日・空の1時間が描かれる。別のタイミングで起こった出来事が重なって、時間軸が交錯してまた離れて行くのがとても好き。

*厳密に言えば新聞掲載とか海の人は1日以上の事も描かれてるけど、空の人は夜を越えてないのがどうにもしんどい。

*考察の類いを読んでいなくて特典映像もまだ見れてないから、後から間違い等が判明したら修正するかも。終盤のファリアの行動とか、そう言う事かなと思って書いてるけど全然的外れかもしれない。戦闘機の事とか色々分からないしファリアは恰好良過ぎて意味が分からないし。

*キリアン・マーフィ大好きで、初見時にはこの役は如何なものかと思ったんだけど、見れば見る程大事だった。『マスター・アンド・コマンダー』も大好きで、この映画でジェームズ・ダーシー見れたのも嬉しい。

*上映は字幕版のみだったのかなと思うんだけど、吹替版で初めて分かった事もあって良かった。コリンズが不時着を選ぶ場面とか。(高度の問題なのかなと思ってた。)