〓長文です!クルマ及びBMWに興味の薄い方は、どうぞスルーしてくださいね(^^ゞ〓
*写真は最後にまとめて掲載します。(短い動画(エンジン音)3本あり)
ディーラー入庫(車検)の際に代車でお借りした現行型X1(直4ディーゼル4WD)のレポートです。週末から次の週末までの一週間、100kmほど(市街地6:高速4)乗りました。
試乗した個体は、2020年式の18d xDrive xLineというグレードで、新車価格は、5,230,000円(税込)です。
ボディカラーはカシミアシルバー(メタリック)というオプションカラーで、若干ゴールド系が混じった品のいいシルバーでした。
【第一印象】
自宅まで乗ってきて、駐車場に入れてみての第一印象は、
でかっ!
X1といえば、初代はタワーパーキングにも入る、背が高すぎないちょっと小ぶりなSUV(BMWの呼称ではSAV)という印象があったのですが、現行型はどこから見ても堂々とした体躯のSUVそのもの。
初代(E84:2010年~)と現行型(F48:2015年~)のボディサイズを比較すると、全長は30mm短く(FF化でノーズが短くなった)、全幅は25mmワイドになっている一方で、全高は1545mmから1610mmへと65mmも高くなっていました。
このデカさ(あくまでも僕の印象です)で、BMWのXシリーズ7兄弟の末っ子なんだから、X7アニキの大きさとか想像もつかない。
【足回り・重量】
タイヤサイズは前後とも225/50R18、ブランドはHANKOOK(韓国)、銘柄はventus S1evo2(非ランフラット)と記されていました。
もちろんBMW純正である証の☆マーク付でしたが、コスト抑制の波がこんなところにも、と感じます。
サスペンション形式は、前ストラット・後マルチリンクのBMWお馴染みのコンベンショナルなタイプ。
車重は1,680kg(前軸940kg・後軸740kg)で、前後重量配分は56:44です。
やっぱりディーゼルは重いなあ・・と思いましたが、同じ直4ガソリンエンジン四駆のxDrive20i(現在は販売していない)と比較すると+30kgしか変わらなかった。
【エンジン・駆動系】
搭載されるエンジンは、B47C20B(2L直4シングル(ツインスクロール)ターボ)で、150PS・35.7kgmというディーゼルならではの力強いトルクを生み出してくれます。
組み合わされる変速機は8速トルコンAT。
BMWの8速ATといえば、F30以後「神AT」とも称されるZF製8HPを思い浮かべますが、運転してみた感覚がどうも違う。
変速ショックが明確で、制御も甘い。加速時も減速時も、エンジンがシャクる感じがつきまといます。
借りている一週間のあいだじゅう違和感が拭えなかったので、代車返却の際にサービス担当さんに変速機のサプライヤーを確認したところ、アイシン精機(日本)製でした。四駆とはいえFFベースなのとコスト面でZFは搭載できなかったんだろうと推察します。
【音振】
乗ってみて感心したのは、音振対策の優秀さ。
ボンネットフードを開けてエンジンをかけると、ディーゼル特有の「ガラガラ」音が結構大きいのですが、フードを閉じるとその音は文字通り半減され、さらに車内に乗り込んで窓を閉めた状態だと、ほとんど気にならないレベルになります。(下部動画参照)
さらに驚いたのは、アイドリング状態でシフトレバーを触っても全く振動が手に伝わってこないこと。
僕のM4は、理論上完全バランスのはずの直列6気筒だけど、ギアボックスに直結しているシフトレバーには、エンジンの振動が明確に伝わってきます。
BMW車のAT(DCT含む)はずいぶん前から電子制御になっているのは知っているけど、もしかしたら全モデルバイワイヤ(物理的に繋がず電気信号で制御)なのかな。
現行X1は2015年の登場で、ぼちぼちフルモデルチェンジの声が聞こえてきてもいい頃です。さすがに最新の安全・自動運転関連は装備されていないけれど、音振対策についてはおそらく年次改良で向上させているのだろうと思います。
【ステアリング・操舵感】
以前試乗したことがある、現行型FFの118i・118dとよく似たフィーリングで、よく言えばゲインも穏やかで安心して曲がれる。厳しく言えば、甘く茫洋としていてBMWらしさは感じられない凡庸な操舵感です。
50扁平のタイヤのおかげなのか、回した時に妙な反力(グニャグニャ)がないのは救い。
車検の往復の際に連続して代車X1と自分のM4を高速で走らせてみて明確に感じたのは、X1のほうは直線でもけっこうステアを真っすぐに保つのに力が要りました。M4のほうは軽く手を添えているだけでいいので、長距離だとX1は疲れるかな。
Mとエントリーグレードを比べるなよ、とも言われそうですが、「駆け抜ける歓び」を標榜していた(過去形で書かないといけないのが悲しい)メーカーならば、エントリー車でももう少しがんばれるはず。
アイシン製の8ATは、せっかくの豊かなトルクバンド(1750-2500rpm)を積極的に使おうとせず、燃費を気にしてか懸命に低回転を保とうと早めにシフトアップしてしまう。
モードをSPORTにしてようやく3000rpmくらいまで引っ張ってくれるけど、巡航に入ると速攻で1500rpm以下に落とされてしまいます。
100km/h巡航時のエンジン回転数(8速)は、メーター読みで1,700rpm。瞬間燃費計の数字は23〜25km/Lを示していました。
燃タン容量が61リットルなので、計算上は高速だけなら無給油で1,300km以上走れることになります。
軽油はガソリンより安いので、距離を乗れば乗るほどメリットは大きくなる。
パドルシフトを装備していないのは正解だと思います。もし付いていてもまず使わない。シフトレバーでのマニュアルシフト(シーケンシャル)は可能です。
唯一、BMWらしさを感じられたのは、速度が上がれば上がるほど路面に張り付くような安定感が強まり、なぜかステアリングも落ち着きを取り戻したようにどっしりと豹変すること。
速度が上がるほど不安定さが大きくなる国産車との違いは明確で、車高が高いSAVでもちゃんと辻褄を合わせてくるところは、さすがBMW、と思わせられます。
ただし、この感覚が試乗したxDriveだけでなく同じX1のFFモデルでも同様に感じられるのかどうかは分かりません。
【ブレーキ】
ブレーキに関しては、これも1シリーズと同様、コスト要件が厳しいのかあまり力を入れていないなと思わせる凡庸なタッチで、エネルギー回生の減速Gが強いことと相まって、意図通りに気持ちよく止まれる類のものではありませんでした。期待はしていなかったけどやっぱり残念。
【ポジションなど】
シートは電動でメモリー付。ドライビングポジションは、同じFFの1シリーズとシャシーを共用していると思われ、低く設定しようとするとステアと座面の辻褄は合うけれどメーターパネルの下部がステアのセンター部分で隠れて見えない。
シートポジション調整は、最初にパネル全体が見通せる位置まで座面を上げてから、ペダル・ステアとバックレストを順番に合わせていく感じになります。
かなり座面を上げたはずだけど、それでもボンネットの先端は見えない。
僕は代車など馴れない車を運転する際は、タイヤの実際の接地面と自分の感覚のズレをできるだけ確認するようにしています。
やり方はとても簡単で、駐車場などラインが引いてある場所で、前進で平行と垂直のラインぎりぎり(と感じるまで)に寄せてみて、車を降りて確認するだけです。
今回のX1では、前はほぼピッタリ、助手席側は+3cm(あと3cm寄れた)でした。ガタイが大きく目線も高いクルマとしては、車体感覚が掴みやすい(といわれる)BMWの面目躍如といったところです。
【居住性・内装・ユーティリティー】
シートはファブリックとレザーのハイブリッドタイプで、硬さは適度ですが座面の厚みがもう少し欲しいかなと思いました。サイドサポートはあまり張り出しておらず、当然ですがスポーツ走行には向いていません。
後席は前席より硬めの感触ですが座面後傾角が深すぎず、バックレストのトルソ角も適正で、座面長(奥行)は十分とは言えませんがフロアから座面前端までが高いので膝裏が浮くことはありませんでした。
FF化のメリットを生かし、後席のフットスペースは広く、前席の下に足を入れることもできるので5人乗車でも真ん中の人が極端に窮屈な思いをしなくて済みそうです。
操作系はひとつ前の世代のデザインなので、現行のやたらと多いスイッチ類&ガンダム系メーターパネルより安心感があります。
後席センターにUSB(TypeC)ソケットが二つあるのはファミリーユースには何気に嬉しい装備かも。
オプション装備(コンフォートパッケージ)に含まれる電動リアゲートは、運転席からもリアゲートでもボタン一つで開閉できるので超便利。
リアトランク内には、大きめのサブトランク(深さ20cm)も装備されていて、荷物と洗車道具を分けるなど使い勝手は良さそう。分割式のリアシートを前に倒せば広大な荷室が出現します。
僕の苦手な実用性皆無の室内LEDイルミネーションですが、設定で完全OFFにもできるので(評価は)スルーします。
駐車した時(夜でないと分からないけど)路面に浮かぶX1のロゴは、売上No.1の某国の人たちに喜ばれそう。がんばって売りまくってください。
【ディーゼルエンジンへの疑念】
今回乗ったX1は、35.7kgmという強大なトルクを誇る力強いエンジンのはず・・ですが、試乗期間中にそれを体感できたという実感はありません。
例のディーゼルゲート(排ガス試験不正事件)以後、主に欧州の各メーカーは追加対策を余儀なくされましたが、EURO6(現行排ガス基準)に真っ当に適合させようとすると排ガス浄化装置のさらなる重畳が必要で、普通に考えるとパワーもトルクも落ちるはず。
逆にスペックを維持しようとすればコスト上昇に直結し価格競争で厳しくなる。
しかし、カタログスペック自体は全く変わっていないし、大きな価格変動もない。
カタログ数値が実際と異なるのは燃費に限らずよくある話ですが、本当に35kgm以上もの太いトルクを路面に伝えるクルマを運転しているのかな、という疑念は最後まで消えませんでした。
【総評】
辛口のコメントになると思いますが、100km運転してみての率直な感想を。
正統派SUVのボディを身に纏ってはいますが、中身は乗り味も含めてFFベースの1シリーズそのものです。プラットフォームの出自を辿ればMINIなので、四駆のSUVだからといって悪路走破性など過度な期待はできない。
Xシリーズのエントリーモデルということもあり、操舵(ステアフィール)は穏やかで破綻もない。高速ではさすがBMWという片鱗も見せますが、500万円前後という価格帯には輸入車に限らず国産車にも多数の競合車種が存在しています。
その中で、X1だけが持つ、X1でなければ、という要素は、残念ながら今回僕は見つけることはできませんでした。
ただし大柄な体躯のおかげで、後席居住性と荷物積載量は1シリーズを大幅に上回ります。
今やX3でさえ全長4.7m超、全幅は1.9mに迫ろうかというX兄弟総肥満化計画が着実に進行中なので、日本で辛うじて持て余さないサイズのXシリーズ(BMWのSAV)としては極めて貴重かもしれない。
市街地近郊で家族や友人とキャンプに行く程度なら重い荷物を積んでも力強いトルクでぐいぐい走り不満はないでしょう。
でも、悪路や雪山は、シティSUVなので不向きだと思います。
普段使いで駐車に困らないスペースがあるなら、BMW(ミニシリーズを除く)最小のSUVとして一考の余地はあるかも。
しかし、現行型(2015年~)のモデルサイクルを考えると、そろそろ新型の声が聞こえてくる頃合いでもあります。
急速に進行する世界的なクルマ電動化の波の中で、BMWが次期X1のパワートレインに何を採用し、何を採用しないのか。
僕は、ディーゼルモデルは今後売れ行きも含めていずれ淘汰されてゆく流れにあると思っていますが、ディーゼルの、ガソリンエンジンには真似のできない低回転から太いトルクを出す特性は、悪路走破性や傾斜登坂能力・牽引などが現実に求められるような用途ではまだまだ根強い需要があると思います。
しかし、ドイツ中心の欧州メーカーが徒党を組んで一般乗用車にもディーゼルをより多く普及させようという企ては、排ガス不正事件の発覚によってあえなく潰えることとなりました。
環境問題に敏感な国々ではディーゼル乗用車が以前のように売れなくなり、販売をやめたボルボをはじめ各メーカーのディーゼルのラインナップは年々少なくなってきています。
その状況の中で、果たしてBMWは次期X1についてどのような選択をするのか、興味深く見守りたいと思います。
【写真・動画】
M4の初車検で入庫したバルコム福岡東の担当営業さん、担当サービスさんには、大変お世話になりました。これからもどうぞよろしくお願いします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。